http://d.hatena.ne.jp/dlit/20101214/1292318568 を読んで最後の方に出てきた国語教育と学校文法の関係について思うところを簡単に述べてみる。一応、学校文法や国語教育を日本語学の立場から考えたいと思って、自分は今研究を行っているので…
2010-12-15 14:11:07いわゆる「学校文法」の問題点は、枚挙にいとまがないほど言及されていることなので、もはや「問題なし」と考えることの方が少ない。例えばマチケンさんのhttp://amzn.to/eWrkma は、平易な言葉で言語学的な観点から洗いざらい学校文法の変なところを指摘している。
2010-12-15 14:16:12もう少しきちんと踏み込んだ学校文法のぜひを論じるのであれば、月間国語教育や日本語学などの雑誌にも何年かに数回特集を組んでいるので探してみると良いでしょう。
2010-12-15 14:21:50話をhttp://d.hatena.ne.jp/dlit/20101214/1292318568の記事に戻しましょう。ここで話題にされていたのが、「なぜ間違った学校文法を教え続けるのか」という問い。基本的な回答はdlitの述べられていることの通りだと思う。
2010-12-15 14:26:02すなわち、①学校文法は研究はないこと、②日本語教育とは違い対象が母語話者であることの2点を踏まえた上で、③国語教育の目的照らし合わせて文法の取り扱いを決めなければならない、ということです。この点を踏まえて議論している論文は以下のとおり。
2010-12-15 14:28:56矢澤真1997「構文論をどう見直すか」『日本語学』16-4 この論文が掲載されている『日本語学』の1997年4月号自体が「21世紀の学校文法」という特集号。この矢澤の論文では、学校文法を根底から覆すのは不可能としつつ、きちんと望ましい方向性を議論している。
2010-12-15 14:32:57矢澤1998「日本語の表現と文法」『月刊国語教育』17-11 同じく矢澤の文法に関する論文。学校文法の問題だけでなく、文法教育の意義や問題点まで論じている。
2010-12-15 14:35:43さらに最新の議論を確認するのであれば、以下の科研をチェックするといいと思う。 http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/14510444 http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/17520291 (いずれも代表研究者は矢澤真)
2010-12-15 14:41:07論文の紹介ばかりしていても仕方ないので、もう少し内容を書いてみる。文法教育の問題点は、先にあげた矢澤の論文などを踏まえると次のように整理できる。
2010-12-15 14:44:532.学校文法の問題は、文法教育が知識偏重の暗記型学習であることにあり、そのため、文法教育で教えられた知識により、例えば読解の解釈に制限ができてしまうなどの問題が生じている。
2010-12-15 14:45:493.学校文法の問題点を解決するためには、むやみにレッテル張りを行ったり、暗記型の学習を偏重することなく、実際の言語生活の中から例を取り上げたり、硬直化した内容しないような工夫が必要である。
2010-12-15 14:46:061のように言ってしまっては身も蓋もないが、結局、教育においては、形が出来上がってしまっているものをご破算にしてデザインしなおすことは不可能と言っても差し支えない。ご破算にしたところで、教員に新しい体系を学ばせて教えさせるということは絵空事でしか無い。
2010-12-15 14:50:20ただ、問題の多い学校文法の体系ではあるものの、問題となってしまうのは、結局2であげた通り暗記重視ということが根底にある。暗記するからには、できるだけ「正しい」ものを教えるべきなので、間違いだらけの学校文法を教える価値はない、とみえてしまうわけだ。
2010-12-15 14:53:29しかし、学校文法が暗記で良いのかという議論は尽くされていない。学校文法が暗記でよいということであれば、「正しい」文法を教えるように努力するべきだが、おそらく「文法」を暗記させることには価値はないだろうし、言語学者も暗記の文法は馬鹿馬鹿しいと一蹴すると思われる。
2010-12-15 15:01:09したがって、学校文法そのものの体系は問題をはらむものではあるが、その問題を顕在化させてしまっているのが暗記偏重であると思う。もちろん、暗記偏重にさせてしまっているのが教師の文法に対する知識不足という点や古典文法との関連ということもある
2010-12-15 15:03:20.@s_locarno さんが国語教育・学校文法について触れてくださっているのが嬉しい。やはり専門の方の意見は貴重だと思うので。
2010-12-15 15:32:38@dlit ありがとうございます。ブログの記事に触発されて書きなぐっています。所詮、院生の思いつきの感想なので至らぬ点はご指摘下さい
2010-12-15 15:34:55さて、文法の話にでも戻ろうかね。帰ってきたらフォロアーが急増していて怖いんだが…。先に言い訳しておきますが、普段考えていることをなんとなく言語化するために垂れ流しているだけの内容なので、論理的にまとまる気はしません。ご批判もおありのこととは思いますが、お手柔らかに…
2010-12-15 22:47:51もう少しなんのための学校文法なのかという点について考えていきたいと思う。先に紹介したhttp://kaken.nii.ac.jp/ja/p/14510444の中間報告書である『日本の文法教育Ⅰ』の中の橋本修「文法教育の意義小考」と(続く
2010-12-15 22:56:45承前)それを発展させた同氏の2008「博物学としての言語事項」『筑波日本語研究』13を元に以前に議論したことがあるので、その時の内容を書いてみる。
2010-12-15 22:57:07橋本2003および橋本2008では、「文法教育」の意義に①「言語への感覚の深まり」と②「非母語の文法への親近感・学習のしやすさ」を中心に据え、さらに副次的な意義として③「思考訓練」、④「表現能力への寄与」、⑤「古典日本語の読解の準備」、⑥「人間の認知を知る」ということを挙げている
2010-12-15 22:59:33特に、橋本2008では、「博物学的性格」という観点から、理科の二分野と言語事項教育の共通点として「対象への感覚を深める」ということを指摘し、前述①の内容の重要性を更に強調している。
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