f_zebraさんの解説:ドイツの電力事情-復習編-

ふつうに、まとめてみました
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Flying Zebra @f_zebra

メルケルさんも来てることだし、ドイツの電力事情についても少し復習しておこう。ドイツは福島第一の原子力事故を受けて、その直前に決めていた原子力活用方針を転換して脱原子力に舵を切った。ま、チェルノブイリ事故を受けて決めていた方針に回帰したことになる。

2015-03-10 00:50:41
Flying Zebra @f_zebra

国内全ての原子炉をすぐに停止するような愚を犯さなかったのは日本と違って現実的だが、当事国でもなく、遠く離れた極東の事故だからこそまだ冷静に対処できただけかも知れない。国内で算出する石炭による火力に加え、原子力というベースロード電源あればこその再生可能エネルギー開発なのだ。

2015-03-10 00:51:15
Flying Zebra @f_zebra

現在でも発電量の15%あまりを原子力で賄っているが、一方で再生可能エネルギー(水力を含む)の割合は増え続け、今や24%程度を占めている。日照の厳しい高緯度であることと、北海、バルト海の風境に恵まれていることから風力の割合が多いのが特徴だ。

2015-03-10 00:52:04
Flying Zebra @f_zebra

風力は太陽光と違って夜間や積雪時に発電量が完全にゼロになるということはないが、出力が不安定で予測が難しいのは同じだ。電力の同時同量という特徴(つまり、溜めてはおけない)のため、調整用の電源がなければ再生可能エネルギーを活用することはできない。

2015-03-10 00:52:45
Flying Zebra @f_zebra

ヨーロッパは国境をまたいで電力グリッドが接続されているので、需給の調整は無理に国内だけで帳尻を合わせる必要はない。足りなければ余所から買うこともできるし、余ってしまったら他国に買ってもらうこともできる。島国のわが国とは決定的に異なるところだ。

2015-03-10 00:55:38
Flying Zebra @f_zebra

政治判断によってまだ十分使える原子炉を半分ほど恒久停止して、一時的に電力輸入量が増えたものの、2011年でも収支としては輸出超過であり、現在は再生エネルギーの拡大に伴って輸出が増えて輸入は減り、その差は開きつつある。金額ベースでも輸出超過だ。

2015-03-10 00:58:24
Flying Zebra @f_zebra

一般的な貿易の収支であればここまでの話で事足りるし、メディアの報道もここまでの理解に留まっているものが目立つが、電力という財には他の商品とは決定的に異なる特色がある。先ほども触れた同時同量、必要な瞬間にきっかり必要な量を供給する必要があるというものだ。

2015-03-10 01:00:39
Flying Zebra @f_zebra

再生可能エネルギーは優先的に使うことになっているし、そもそも調整も難しいのでその時々の需要とは関係なく発電してしまう。国内で調整できない分は他国と融通することになるが、作りすぎて余った電力を買い取ってもらう単価は当然ながら低くなる。

2015-03-10 01:02:11
Flying Zebra @f_zebra

ドイツ国内の風力発電の発電量とオーストリア、スイスへの電力輸出量には強い相関があり、豊富な揚水発電設備を持つ両国に風力発電の不安定な供給量の調節を依存している実態が窺える。取引価格は市場で決まるが、過去にはゼロを割り込んでマイナスになったこともある。

2015-03-10 01:04:55
Flying Zebra @f_zebra

1年間を通して見れば、ドイツから国外への電力輸出単価は5.2ユーロセント/kWh程度になって、これは輸入の平均単価の4.9ユーロセント/kWhよりも高い。ただし、国内の発電単価(送配電、販売管理等を含む)は産業用でも7.8、家庭用だと14.1ユーロセント/kWhと、遙かに高い。

2015-03-10 01:05:49
Flying Zebra @f_zebra

なお、電気利用者が払う電気料金は発電原価に再エネ賦課金、さらに税金が乗るため、産業用で15.1セント/kWh、家庭用では28.5セント/kWhにもなる。利用者が賦課金を負担して発電した電力の一部は、賦課金なんて払わない隣国に安く叩き売られているのだ。

2015-03-10 01:07:19
Flying Zebra @f_zebra

ドイツの再エネ電力がだぶついた時、それを引き受ける国は自国の発電設備の出力を絞って対応する。その方が安くなるという市場の仕組みに基づいた行動だ。ここで絞られる電源が火力であれば、ヨーロッパ全域としても少なくともCO2削減効果や化石燃料節約の効果はあることになる。

2015-03-10 01:08:22
Flying Zebra @f_zebra

ところが調整のために出力を絞られるのは火力だけでなく、水力も含まれる。貯水式ならともかく、流れ込み式であれば本来利用可能なエネルギー(位置エネルギー)を、経済的な辻褄合わせのために利用せず捨てていることになる。環境負荷という観点からは何の意味もないことをしていることになる。

2015-03-10 01:10:12
Flying Zebra @f_zebra

このように、現在のドイツの再生エネルギー促進政策には様々な矛盾、問題点がある。もちろん評価すべきところも多いが、こうした現状を理解することなく盲目的に礼賛するというのは、愚かに過ぎよう。況してや他国とグリッド連携のないわが国がそれを「見習う」べきなどとは、あまりに非現実的だ。

2015-03-10 01:13:06