廣川洋一著『イソクラテスの修辞学校』を読んで。

古代ギリシアにプラトンのアカデメイアと対立して存在したもう一つの学校、イソクラテスの学校が実はヨーロッパ文化の基調を作ったことを明らかにした本。
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Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

causa inferior dicendo fieri superior posset(Cic.Brutus 30). make the weaker argument (hetton logos) stronger (kreitton) ヘットンロゴス、クレイットンロゴス。

2015-03-09 01:05:52
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

ネットは偉い。これを「弱論強弁」というらしい。

2015-03-09 01:15:08
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

ラテン語の comprehensio, circumscriptio, conclusio はどれも「掉尾文」という意味があるらしい。

2015-03-09 16:25:25
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

掉尾文の良い例はキケロ『アルキアス弁護』の最初の文章らしい。

2015-03-09 17:10:50
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

パレーロンのデメトリオスに対するキケロ『ブルータス』37の評価は直訳する(実戦向きよりむしろ学校向き)と『法律論』3.14(学究から一流の政治家になった)とは正反対になってしまう。実際デミトリオスは政治家として活躍した人。

2015-03-10 21:37:19
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

イソクラテス『プリシス』の引用がある。『イソクラテス弁論集2』(小池澄夫訳、2002、京都大学学術出版会)。近くの図書館にない場合、どんな訳か参考になる。h6.dion.ne.jp/~yukineko/pita…

2015-03-11 14:15:35
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

イソクラテスがキオス島ではじめて学校を開いたときの生徒は9人だったらしい(『イソクラテスの修辞学校』25ページ)。

2015-03-11 21:40:59
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「ヨーロッパ文化は..ギリシア・ローマ文化とキリスト教をその共通の祖先としてもっている」(『イソクラテスの修辞学校』巻頭)。すごい大上段に構えた書き出し。イエーガーの『初期キリスト教とパイデイア』(筑摩叢書)を読もうかと思ったら買ってなかった。

2015-03-11 22:30:19
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』第2章「イソクラテスの生涯」ではイソクラテスの伝記の中にイソクラテスの全作品(初期の6つの弁論以外は政治的な論説と手紙)の簡単な紹介が含まれているので便利。

2015-03-11 23:56:09
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

イソクラテスはソクラテスと名前が似ているが、青年たちを堕落させるような教育をしていると告発されたという点でも似ているらしい(『イソクラテスの修辞学校』33ページ以下)。

2015-03-11 23:59:53
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』第1章では教養を身に付ける事こそ人間らしさを身に付ける事だというパイデイア思想が述べられるが、何と言っても重要なのは役に立たない勉強だと。プラトンが示した政治家を育てる教育課程は30才になるまで幾何学算数天文学音楽など数学を徹底的に学ぶことだった。

2015-03-12 00:23:19
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』という本のすごいところは、イソクラテスの考え方や主張をすべて直接イソクラテス本人の作品の中の言葉によって説明していることだ。だから、読者はイソクラテスの作品を直接読まなくても、この本を読めばイソクラテスの作品の大事なところを読んだことになるのだ。

2015-03-12 00:36:09
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

プラトンの学校の門には「幾何学を知らぬ者、くぐるべからず」との額が掲げられていたというのは嘘らしいが、人間らしさ(ヒューマニティー)とは幾何学を知っていることだという考え方は古代ギリシアにあったらしい(『イソクラテスの修辞学校』3頁)。

2015-03-12 12:26:22
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

イソクラテスは教師になる前に「依頼人つまり金銭のために行なう法廷弁論を生業としたことを強く嫌悪し深く恥じていた」らしい(イソクラテスの修辞学校27頁)。

2015-03-12 12:52:39
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』の第三章「イソクラテスの学校」ではイソクラテスの生徒の名前に続いて授業料が一年1000ドラクマで、前4世紀アテネの中の下の階層の年収が540ドラクマとあり、かなりの高額。そして1ドラクマはだいたい今の日本の1万円から五千円の間と分かる。

2015-03-12 20:32:09
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』を読むとイソクラテスの本を読みたくなるが、当時と違って今や西洋古典叢書にイソクラテスの全作品の和訳があって、これが読みやすく格調高い名訳になっている。古本なら2冊で五千円ちょい。損はない。 kosho.or.jp/products/searc…イソクラテス弁論集

2015-03-13 12:30:14
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

廣川洋一著『イソクラテスの修辞学校』は各章が一つの論文になっている。論文とはこう書くという手本のような文章で、論文の議論とはこういう風に進め、作品の引用と専門書を論拠として使う時の注の付け方を学ぶことが出来る。『論文の書き方』としても使える本なのだ。

2015-03-14 23:57:33
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』第5章はフィロソフィーという言葉が古代ギリシャではプラトンとイソクラテス以外の人には殆んど使われていなかったのみならず、プランさえ後期の作品ではほとんど使われていないという面白い現象の考察にあてられている。

2015-03-15 12:57:38
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』にプラトンの『プロタゴラス』にプロタゴラスの演説があるというので、近くの図書館で『プラトン全集8』を借りてきたが、藤沢令夫氏の翻訳の何ときれいな文章か。翻訳とはこんな風にやるんだと勉強になる。特にひらがなを多用した日本語の美しさがよく分かる。

2015-03-16 20:07:27
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』第五章「イソクラテスの教養理念」ではフィロソフィーには2つあったことが分かる。一つがプラトンの理論的方法的探求としてのそれ、もう一つがイソクラテスの弁論術を含む人間の総合的教養としてのそれで、現代ではプラトンのフィロソフィーだけが主流となっていると。

2015-03-17 12:22:11
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

ここから、プラトンの対話編でソクラテスがプロタゴラスやゴルギアスなどに会って彼らを問答法を使ってやっつけるのは、その背景にはプラトンの「学問としてのフィロソフィー」とイソクラテスの「教養としてのフィロソフィー」の対立があったということが分かる。

2015-03-17 12:30:32
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

ソクラテスがプロタゴラスたちを問い詰める様子は、読者には人の言うことを相手の文脈で受け取らないという訓練になるが、それがしばしばいちゃもんをつけているように見えるのはソクラテスがまったく違う方法を使っているためなんだな。

2015-03-17 12:37:10
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

つまり、プラトンの対話編とは、当時二つあったフィロソフィー、プラトンのフィロソフィーとイソクラテスのフィロソフィーが対決する様子を描いたものと考えることができるんだな。

2015-03-17 12:51:18
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

とすると、カントの『純粋理性批判』と『実践理性批判』は、前者はプラトン的フィロソフィーによる分析で神を否定し、後者はイソクラテス的フィロソフィーによる分析で神を肯定したのではなかろうかと思ってみたくなる。

2015-03-17 13:24:59
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『イソクラテスの修辞学校』第6章でプラトンが後期にフィロソフィーなる言葉を使わなくなったのは、イソクラテスらによってこの言葉があまりにも世俗化してしまったためにあえて避けたからだという。ここにもプラトンのアカデミーとイソクラテスの学校との間に激しい争いがあったことが推測される。

2015-03-17 23:59:57