なぜヘイトスピーチを許してはいけないのか(あるユダヤ研究会での出来事より)

*「ユダヤ文化探求続け20年」(『神戸新聞』(3月31日付:http://jjsk.jp/news/2015/04/01/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E6%96%B0%E8%81%9E%E3%81%AB%E6%8E%B2%E8%BC%89%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82/) (「付録」としてハンナ・アーレントの論考「反ユダヤ主義」(『ユダヤ論集Ⅰ』所収)からの引用も若干加えました)
国際 ナチズム ディアスポラ ハンナ・アーレント ヘイトスピーチ ユダヤ人 レイシズム 神戸ユダヤ文化研究会 反ユダヤ主義 ヴェニスの商人 ドイツ
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直立演人 @royterek
先日の神戸ユダヤ文化研究会では、一番前に陣取った恰幅のいい年輩の男性(70歳前後か)が、「合法性」や「倫理性」といった基準を繰り返し持ち出して、ユダヤ人がいずれの点でも「国民」の審判においてそれに悖る存在だったことを強調しようとした。twitter.com/royterek/statu…
直立演人 @royterek
この在特シンパでも不思議ではない男性は、ユダヤ人がドイツの法やドイツ人の倫理に反する存在だったという最初のテーゼをあたかも証明せんとして、「ドイツ人はみなユダヤ人を嫌っていたんですよ」という感情論を唐突にもちだした。まるで「だから罰せられて当然だったのです」とでも言わんばかりに。
北野雅弘 @MasahiroKitano
そういう人には、「君は世界の倫理に反する存在だ」「私たちはみんな君が嫌いだ」と言ってやりたくなります。 @royterek
直立演人 @royterek
ただし、非常に感情的に見えたこの人の言ってることはわかりにくいところもあり、ひょっとしたら、ユダヤ人は「合法的な存在」ではあったが、ドイツ人がみな嫌ったのだから「倫理的に悖る存在」だったという趣旨だったのかもしれない。いずれにしても、彼は持説の補強に「ヴェニスの商人」を言及した。
直立演人 @royterek
というか「ヴェニスの商人」に言及したのだから、こっちの解釈の方が正しいのだろう。要は、「たとえ合法的な存在でも倫理に悖る存在であれば、そうした存在自体がゆるされない」といった思想の持主なのだろう。そうとはっきりとは言ってないが、明らかにそのような「怨念」が感じられる話ぶりだった。
直立演人 @royterek
そこで私は、「じゃあ、合法だったら600万人殺していいんですか?」と声を荒げた。
直立演人 @royterek
ナチスはまさしく合法的にユダヤ人の大量殺戮をやってのけたのだから。
直立演人 @royterek
ユダヤ人が「反倫理的な存在」だったことを証明しようと躍起になっていたこの男性の尋常ならざる興奮ぶりを目の当たりにして、私は「鶴橋大虐殺起こしますよ!」と鶴橋の路上で叫んだ女子中学生を思い出した。二人とも、自分が社会の「害悪」とみなす存在への「義憤」と憎悪ではち切れんばかりだった。
直立演人 @royterek
レイシストのレイシズム否定について ― 大阪鶴橋のヘイト・デモで掲げられた二つの鉤十字(ハーケンクロイツ)旗から考える - Togetterまとめ togetter.com/li/637039
直立演人 @royterek
この男性と比べればはるかに穏やかだったが、研究会では、もう一人の若い男性から、問題と思われる発言が上がった。彼は、ユダヤ人はアイデンティティに「矛盾」を抱えていて、その矛盾の抱え方は特殊だという趣旨のことを述べた。それだけならまだしも、「ユダヤ人だけが」という表現に引っかかった。
直立演人 @royterek
そして、彼はそういうユダヤ人だけに特有の「矛盾」を抱えた(二重の)アイデンティティは、大多数の人間にとって「おかしい」と言った。たしかにそう言った。「風変わりに見られがち」とか「差別されやすい」といった社会的事実の確認ではなく、価値判断としての言明としかとらないニュアンスだった。
直立演人 @royterek
そこで私は、ディアスポラ的な二重のアイデンティティは「ユダヤ人だけ」に特有なものではなく、グローバル化した現在ではむしろ珍しいことではないと述べるとともに、そういった二重のアイデンティティを「おかしい」などと断じるのは問題だという趣旨の異議をいくぶん強い調子で申し立てた。
直立演人 @royterek
すると、男性は「おかしいなどと言ってない」「私は反ユダヤではない」といった趣旨の反論をし始めて、私は意表をつかれるばかりだったが、「議論」がかみ合わなかったことは言うまでもない。
直立演人 @royterek
ともあれ、ユダヤ人の奥さんとのあいだにできたお子さんをお持ちの会員の方が「じゃあ、うちの子どうなんの?」と後で言っていたし、他の知人も、「「それって、ヘイトスピーチとアンチゲイの理屈ですよ」と言いたくなりました」と書いてくれているので、私の聞き間違いでなかったことはたしかだろう。
直立演人 @royterek
人びとの間に何らかの文化的差異を認識してその差異について言及すること自体は、ヘイトスピーチでは当然ないが、そこに否定的な価値判断を持ち込んだ瞬間、それはヘイトスピーチそのものとなる。これは、多様な民族文化が混じり合ってできた社会では常識だが、日本ではそうでないことがよくわかった。
直立演人 @royterek
それはさておき、二重のアイデンティティは決しておかしくないし、グローバル化した今日ではある意味でありふれた現象とすら言えるといった私の発言に対して、さっきの年輩の男性が突然反応して、「それはおかしい! 国籍は一つに決めるべきだー!」みたいなこと言い出してさらにカオス状態になった。
直立演人 @royterek
「いや、国籍の話とアイデンティティの話は別の話で」云々と私は即答したが、彼にとって、そんなことはあってはならないことといった風情だった。で、さっきの「合法性」云々の話が蒸し返され、「カウンター文化」に馴染みのない同僚達はまともに相手しようとしていたが、いやはやなんとも…であった。
直立演人 @royterek
ていうか、実のところ、国籍とアイデンティティが相互に関連し合っていることはもちろんのことだが、それを何が何でも一致させて一重にしなければならないという強迫観念のようなものに縛られているのが、とくに日本社会であって、その度合いは世界的に見てもかなり強いのだろう。
直立演人 @royterek
ヘイトスピーチが社会的に許されてはいけないのは、それが究極的には殺人を「合法化」する論理だからではないだろうか。誰かが一切の客観的な指標を抜きに、ただ主観的に誰かを倫理的に悖る存在だと決めつければ、自分たちの「倫理」の不可侵性を守るためには何をしてもよいということになりかねない。
直立演人 @royterek
ただし、ここでいう「客観的な指標」とは、もちろん、人びとの属性や立場といった人びとが社会的に置かれた状況のことではなく、人びとの行為という意味で言っている。レイシストは、彼らが攻撃する対象が犯したとみなす「犯罪」を専ら問題にするが、それは往々にして空想上のでっち上げでしかない。
直立演人 @royterek
近代西欧の反ユダヤ主義は、そうした「空想上のでっちあげ」に関する夥しい「科学」を築き上げることで、その「客観性」を証明しようとしてきた。そしてナチズムは、そのように客観性を装いながらもその実完全に主観的な価値判断に基づいて、「戸籍」上の客観的指標に沿って人びとを合法的に殺害した。
直立演人 @royterek
ヘイトスピーチが法的に禁止されるか、少なくとも社会的に御法度だという認識が広く共有されなければ、レイシズムはレイシストが物理的なヘイトクライムを起こして裁かれるか、あるいは社会的な制裁を受けた時点で初めて悪であると認識されることになる。それはレイシズムを培養する社会に他ならない。
Don Quixote 3001 @DonQuixote3001
この問題、ボクも間近で見ていたけれど、反ユダヤ主義とエスニックレイシズムと陰謀論がごちゃまぜになったものが、現在の日本のいたるところに吹き出していることの象徴のように感じて恐怖だった。
Don Quixote 3001 @DonQuixote3001
なぜなら、まったく別個の2名から出た各々の意見のどちらにも、簡単にレイシズムに通じてしまう要素があったから。
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コメント

直立演人 @royterek 2015年4月1日
『神戸新聞』 (3月31日付)で紹介されました。http://jjsk.jp/news/2015/04/01/%e7%a5%9e%e6%88%b8%e6%96%b0%e8%81%9e%e3%81%ab%e6%8e%b2%e8%bc%89%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f%e3%80%82/ 上述の質疑応答には触れられていませんが、ヘイト問題と絡めた私の発言が取り上げられました。
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