2015年3月26日

人魚姫【リョウソウタ】

人魚のソウタは恋をし、人間へと姿を変えた。
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二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……ぃ…………ぉぃ……おい!」 誰かが、誰かが大声で呼んでいる。誰を? 「おい!しっかりしろ、大丈夫か?生きているか?」 肩を揺すぶられる……俺なのか。 ゆっくりと目を開く…… 「……生きてたな。よかった」 いや、生きてるって ……そう言おうと口を開いたが、声が出ない。まさか。

2015-02-27 23:17:05
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

ゆっくりと下を見る。そこに見慣れたものはなく、あったのは2本の足だけだった。 「……喋れないのか?」 ゆっくり、頷く……そして、気付く。ああ、この人は。 「そうか……」 この顔。この眼帯。この声。 ……そう、まさにこの人は助けたあの人、会いたかったあの人だった。

2015-02-27 23:19:53
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「家はどこだ?」 首をふる。 「……ないのか?」 頷く。……そう、俺にはもう家はない。帰る家など、何も…… 「そうか。そうなのか……じゃあ、来るか?」 言葉の意味が分からない。少し首をかしげた。 「あー……だから、家に来るか?」 もっと意味が分からない。

2015-02-27 23:22:36
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……使用人になるか?」 更に意味が分からない。多分、今の俺は頭の上にたくさんのはてなマークが浮かんでいると思う。 「あ、自己紹介からか……俺はリョウ。この国の王子だ」 ……王子?あの日助けた人が、王子? 「混乱してるな。まあ無理もないか……」 いや、そりゃあ混乱するわ。

2015-02-27 23:27:16
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

だけど、それならもっと理解出来ない。 なんでそんな王子様が俺の事を助けるのか。そして、何故雇おうとしてくれるのか。 「俺、友達がいないんだ。身分のせいもあるかもしれないけど……それで、ずっと独りだったんだ。城でもずっと。母さんは俺が小さい時に死んで……父さんももうすぐ」

2015-02-27 23:31:01
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

言葉が、出ない。 「俺は友達を欲し、お前は家を欲している。……一石二鳥じゃないか?」 友達ってそんな風になるものだっけ。そんな疑問が頭に浮かんだ。 ……だけど。こんなにいい話は他にない。 「……どうだ?」 こちらに、手を差し伸べてきた。 俺は迷わずその手を取った。

2015-02-27 23:34:43
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

あれから数ヶ月程の月日が流れた。 リョウは俺の事を、いい友達として接してくれる。 だけど、俺は…… 「ソウター、行こうぜ!」 いつものように廊下をリョウと2人っきりで歩く。この時間が、毎日楽しみだった。他愛ない話が出来る、この瞬間が。 ゆっくり、ゆっくりと廊下を歩く。

2015-02-27 23:47:54
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「それでカイトが怖くて怖くて……」 今は新しい家庭教師の話をしている。どうやらとても厳しく、いつも逃げ出したくなるらしい。 「それでなー……」 そこまで言って、リョウの足が止まる。話も止まる。 不思議に思いリョウを見てみる。少し口を開き、じっと前を見つめていた。

2015-02-27 23:51:14
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

視線の先をたどる。……1人の姫が、驚いた顔でリョウを見ていた。 「エミ!」 嬉しそうな顔でリョウがその姫に駆け寄る。俺から離れていく。 「りょ、リョウ様……!?」 「久しぶりだな、エミ!この前は本当にありがとう」 「いえ……あの、お体は?」 「大丈夫だよ!」

2015-02-27 23:53:26
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

どんどん話が進んでいく。 ……誰だ、その女は。リョウとどんな関係なんだ。 「……ああ、ごめんソウタ。こいつはエミ。俺の命を助けてくれたんだ」 「そんな……私は何も」 命を助けた? 待ってくれよ。それは、それは……

2015-02-27 23:55:48
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「前、船に乗ってたら大嵐になって……船が転覆してしまったんだ。その時にエミが助けてくれて……」 「わ、私は岸に流れ着いてたリョウ様を助けただけですよ」 「いや、それでも助かったよ……ありがとう」 ……それは、俺だ。本当に助けたのは俺だ。 岸まで運んだ。それをその女が見つけただけ。

2015-02-27 23:58:17
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……あ、それでな。ソウタに報告があるんだ」 なんでそんな照れた顔をしているんだよ。 聞きたくない。 「実はな、俺達……」 やめろ。 「……結婚するんだ」

2015-02-28 00:00:21
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……聞きたく、なかった。 だけど、予想はできていた。2人の表情を見れば。 ……ああ、この手はどれだけのばしてもリョウには届かない。どれだけ近くにいても、この声はリョウには届かない。 声を張り上げても、泣いても、喚いても……どんな事をしても、声は出ない。届かない。

2015-02-28 00:15:03
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……胸が、くるしい。締め付けられるような痛みがある。 ズキズキする。頭がクラクラする。 気付いてしまった。気付いてはいけないこの想いに、気付いてしまった。 ……いや、本当は前から気付いていたのかもしれない。

2015-02-28 00:17:43
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

気付いていても、この関係が心地よくて……見て見ぬ振りをしていたのかもしれない。気付いたら何かが壊れてしまう気がしていたのかもしれない。 でも、もう限界だった。自分の気持ちが大きくなりすぎて、見ないふりが出来なくなってしまっていた。 ……俺は、リョウが好きなんだ。

2015-02-28 00:20:16
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……ただ、遅すぎた。 その気持ちを自分で認め、受け止めるのには遅すぎたんだ。 それに、何よりリョウが俺に向けている気持ちは違う。ただ純粋に、俺の事を"友達"として慕ってくれている。 ああ、辛い。辛すぎてたまらない。 静かに、誰にも見られないように、独りで涙を流した。

2015-02-28 00:25:29
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

あれから、数ヶ月の時が過ぎた。 リョウと俺は距離をとるようになり、2人っきりでいると気まずい空気が流れていた。……距離をとっているのは俺の一方的な思いだけど。 「俺、何かしたか……?」 エミと初めて出会った廊下を、2人で歩いている。そんな時、隣からそんな弱々しい声が聞こえた。

2015-02-28 10:02:25
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「どうして、そう距離をとりたがるんだよ……友達じゃなかったのか?」 後にいくほどどんどん声が震え、目には涙が溜まっている。 なんで。俺は泣かせたいわけじゃないのに。 「ソウタ……お願いだよ。悪い事をしたなら謝るから……なあ」 そう言い、とうとう泣き出してしまったリョウ。

2015-02-28 10:04:51
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「あら、ソウタさんと……リョウ様!?」 そんな時、女の声が聞こえた。ああ、今は聞きたくない声だ。 「エミ……」 「どうかされましたか?」 心配そうにリョウに駆け寄る。……見たくない。 「あ!おい、ソウタ!」

2015-02-28 10:08:21
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

気付けば、俺はその場から逃げるように走り去っていた。後ろからは俺を呼び止めようとする声が聞こえる。 ……でも、追いかけようとはしてこない。 それが答えなんだな。それが、リョウの本心なんだよな。俺よりエミの方が大事なんだよな。 俺はまた独りで泣いた。

2015-02-28 10:10:33
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

【リョウソウタ人魚姫】 ……あれから、数ヶ月の時が過ぎた。今日はリョウとエミの結婚式だ。 ……あれから、俺は2人と距離を取るようにした。目も合わせない、喋りもしない…… リョウは、悲しそうな顔はするけど話しかけてはこなかった。エミも同じだ。

2015-03-08 18:26:37
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「おめでとうございます!」 「はは……ありがとう」 「あ、ありがとうございます……」 祝福され、2人とも照れている……ああ、見たくない。何もかも見たくない。そもそもここにいたくない。 そっと音を立てずにその場を立ち去った。

2015-03-08 18:28:54
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

はあ……こんな事なら、ここに来なければよかった。ずっと人魚の世界にいればよかった…… そんな後悔を今更しても、もう遅い。ふう、と息を吐きバルコニーに出た。 「ソウター!おーい!」 ……どこからか、とても懐かしい声が聞こえた

2015-03-08 18:31:15
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「下だよ、下!」 その言葉の通り下を見てみる。下は、確か海があるだけのはず…… 「ソウタ!久しぶり!」 ……ユウ兄!? そう叫ぼうと口を開く。けれども、出たのは息だけ。 あ、そっか。声がなくなってたんだった。

2015-03-08 18:34:31
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「予想した通りだね……でも、大丈夫だよ!」 何が大丈夫なのだろうか。 ユウ兄は何かを取り出して、俺に見せた。それは太陽の光を反射し、キラリと光っていた……ナイフだ。 「もう、時間がないんだ!」 何のことだろう。さっぱりわけが分からない。

2015-03-08 18:36:30
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