2015年3月26日

人魚姫【リョウソウタ】最終話

人魚のソウタと王子のリョウは……
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二次小説創作ぶどー。 @uminosati

【人魚姫後日談】 「……」 ソウタの墓の前に花を供える。そして、無言で手をあわせる。 「……リョウ様」 おずおずとした、とても小さな声が頭の上からふってくる。この声は……多分。 上を見る。そこには予想通りの顔が、俺のことを心配そうに見下ろしていた。

2015-03-13 22:38:16
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「エミか……どうした?」 「あ、えっと、その……」 何か言いたげだ。 「……私も、なんです」 風が吹けば消え入りそうな程のちいさな声。だが、聞こえてもその言葉の意味がわからなかった。何が「私も」なのだろうか。

2015-03-13 22:40:17
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「私も……人魚だったんです」 意味が、全く理解できない。人魚とはどういう事だろうか。いや、それ以前に……私「も」とは、どういう事だろうか。 頭に警笛が鳴り響く。「これ以上は聞くな」と警告しているかのように。 ……だが。

2015-03-13 22:41:58
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……全部、教えてくれ」 口からはその言葉が漏れた。やはり、気になる。聞きたい。 「……はい」 エミは、まず自分の事を語ってくれた。 自分は不倫相手の子で、そのせいで酷い目にあっていたこと。それで、人魚の国から逃げ出してきたと……

2015-03-13 22:43:49
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

聞いているだけでも気分が悪くなってきた。エミは、こんな大変な目にあっていたなんて……とても辛く、悲しくなった。 「でも、そんな私に優しくしてくれた方もいるんです」 懐かしむような、少し明るめの声でそう言ったエミ。

2015-03-13 22:45:19
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「義理の兄なんですが……たまに会いに来てくれて、怪我の手当なんかをしてくれたんです」 「へえ、そうなのか……」 「はい。その人にだけ人間になる前に最後に会ってきて、私は人間界へ行くと伝えたんです」 でも、会いたいなあ……そうポツリと寂しそうに呟いていた。

2015-03-13 22:47:35
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

【人魚姫後日談】 「そういえば、さっき私"も"と言ってたが……他には誰が?」 一番気になる、その部分。私「も」とは一体……他にも誰か人魚がいたのだろうか。 「……ソウタさん、です」 …… …………は? まてまて。 意味が分からない。 「ソウタさんも、人魚だったんです……」

2015-03-18 23:08:28
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……嘘だろ」 本当です、と俯きながらそう言ったエミ。その顔は、とても嘘をついているようには見えない。 「な……んで、分かった……?」 「……ユウさんから聞いたんです。弟がいるって……それで、その弟さんの写真、見せてもらった事があって……」

2015-03-18 23:11:41
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……つまり。エミは、ソウタの義理の……妹か(年齢的に) 「……すみません。もっと早くに言っていれば、こんな事には……」 本当にすみません。そう言い、頭を下げてきた。手は強く握られ、背中が少し震えている。 ……それを、ただぼうっと眺めていた。

2015-03-18 23:13:48
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『1人にしてくれ』 その後、出た言葉がそれだった。エミはそれを聞き、もう一度頭を下げて無言でその場を去っていった。 「……なあ、どういう事だよ……」 返事が帰ってこないと分かりつつも、俺はソウタの墓に話しかける。 「人魚って……どういう事だよ……」

2015-03-18 23:16:12
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

墓の横に座り、寄りかかるようにする。そして、そっと名前の部分を手で撫でた。 「……自分の身を犠牲にしてまで、俺に会いに来たってことかよ……」 声が出なかったのも、そのせい。 「俺と結ばれないと……泡になるって事も承知で……」 死んだのも、俺のせい。 全部全部、俺のせい。

2015-03-18 23:20:01
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……ごめんな」 実は、気付いていた。俺がソウタに向ける好意と、ソウタが俺に向ける好意が違うものだと。 気付いていた。エミと仲良くすると、いつもソウタが悲しそうな顔をするのを。 気付いていた……ソウタが、あの夜俺を殺そうとしていたのを。

2015-03-18 23:22:40
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

だけど全部。全部見ないふりをした。 この関係が壊れるのが嫌だった。今の関係が心地よかった。初めての「友達」を……失いたくなかった。 「だけど、俺は俺の手で……ソウタを、友達を殺してしまったんだな……」 後悔しても、もう遅い。

2015-03-18 23:25:52
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

言い訳など出来ない。これは、俺の責任。俺がずっと見て見ぬ振りをしてきたから。俺が、ソウタの気持ちに目を背けてきたから…… 「許してくれ、なんて言わない。だけど……せめて、来世では……」 来世では幸せになれよ。それぐらい、俺にも望ませてくれ。 ……またな、ソウタ。

2015-03-18 23:30:19
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

【最終話】 -おぎゃあ!おぎゃあ! 「生まれました!立派な男の子です!しかも、双子ですよ!」 「よ、よかったぁ……お疲れ様、アズサ」 「ええ……」 アズサは起き上がり、生まれたばかりの我が子達を愛おしそうに眺める。 「抱かせてくれませんか?」 「もちろん」

2015-03-18 23:34:27
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そっと腕の中に抱かされる。初めて感じる我が子の温もり。 「あら……この子達、手を繋いでいるわ」 「ほんとだなぁ!仲いいんだなぁ」 「そうね……髪色は真反対なのね」 「黒髪と白髪。黒髪は俺に似て、白髪はアズサに似たんだな」 「ええ。本当に綺麗……」

2015-03-18 23:37:18
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……そうだ、名前を決めないと」 「名前かぁ……何がいいかなぁ」 考え込みながら、綺麗な黒髪をそっと撫でる……白髪の男の子は、マコトさんに抱かれている。どちらも顔立ちがとってもよく似ていて、髪色も同じだったらどっちがどっちが分からなくなるほど……

2015-03-18 23:42:07
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「リョウと、ソウタ……」 ぱっと頭に思い浮かんだ、その名前。 「リョウとソウタ?」 「ええ。この黒髪の子がソウタ……白髪の子がリョウ」 「なるほどなぁ……うん、いい名前だと思うぜ」 よろしくなぁ、リョウ。そう言い嬉しそうに笑うマコトさん。

2015-03-18 23:47:23
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「よろしくね、ソウタ」 私もソウタに向かい、そっと微笑んだ。 私には、この手では持ちきれないほどの大切な人が出来た。マコトさん……そして、今日生まれてくれたリョウ、ソウタ。 「……生まれてきてくれて、ありがとう」 そう言い、また頭をそっと撫でた。

2015-03-18 23:50:27
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

数年後。 「ソウター、行こうぜー!」 「リョウ、待ってよ!」 慌てて支度をするソウタ。全く……いっつも鈍いんだから。 「おいおい……ボタン1つズレてるぞ?」 「え……うわっ、ほんとだ」 そう言い、慌ててボタンをかけ直すソウタ。あーあー慌てるから……またボタンがズレた。

2015-03-18 23:54:59
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「ったく……」 ソウタの手をどけ、ぱっぱとかけ直してやる。 「あ、ありがとう……」 照れくさそうにお礼を言うソウタ。 「いいよ、いつもの事だ……ほら、いくぞ!」 「う、うん!」 時計を見る。あ……学校に遅刻する……! ソウタの手を取り、急いで走る。うわわっ……という声が聞こえた。

2015-03-18 23:57:59
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……ありがとう、幸せだよ」 ポツリ、と呟くようにそう言ったソウタ。 「なっ、なんか……言った、か?」 走りながら聞く。ソウタは少し間を空け、ううん……と答えた。 「そうか」 特に気にするわけでもなく、また全力で走る。

2015-03-19 00:00:22
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「ありがとう、リョウ……また、会えたね」 その言葉は、風の音でかき消されリョウの耳には届かなかった。 人間と人魚。兄と弟。前世では結ばれなく、今世でも……だけど、ソウタは幸せだった。 【ソウタリョウ人魚姫】 【END】

2015-03-19 00:02:22

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