トリックスターなヘルメス

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アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

トリックスター元型イメージの特徴。①反秩序 ②狡猾なトリックを使って騙したりけむにまいたりする側面を持つ(相手と騙し合い・化かし合いの関係になる場合の例:孫悟空と哪吒の一騎打ち) ③「愚鈍」 ④露骨な欲望(性欲や食欲など) ⑥救世主的一転

2010-12-17 22:57:09
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

トリックスターを説明する上でもってこいの存在は私的にはギリシャ神話のヘルメス、ローマ神話のメルクリウス、エジプト神話のトート(みんな錬金術のヘルメス・トリスメギストス関連の神)、西遊記の孫悟空と哪吒(この二人はそっくりで後者は封神演義でも同じ)、などなど。

2010-12-17 23:04:15
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ローマ神話のメルクリウスの身なりは、ほぼギリシャ神話のヘルメスを踏襲したものとなっている。“ケーリューケイオン”の杖がラテン語式に“カードゥーケウス”の杖となっているが、その意味は前者のそれと同じである。読みの違いに関係なくこの杖にもその柄に二匹の蛇が巻きついている。

2010-12-17 23:11:02
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ユングはメルクリウスが単独でトリックスター元型のモチーフを多く揃えているという。「半ば面白半分、半ば悪意(毒!)のある狡猾な悪戯の性癖、変身の能力、獣神的な二面性をもち、あらゆる種類の拷問に晒され、そして最後に重要な特徴として、《救い主》の像に近づく」という性質を持っていると。

2010-12-17 23:16:14
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ユングにおいて強調されているのが、このトリックスターの「救世主的一転(逆転)」の性質の幾分かが、たとえば「悪魔をシミア・デイ(神の牝猿)として描く場合」などにあらわれるということである。

2010-12-17 23:18:40
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

シミア・デイは、一方では悪魔(下等極まりないものとか軽蔑すべきもの)であるが、他方では神的存在であり、最も高きものへの可能性を暗示しているものをさしていっている概念である。

2010-12-17 23:20:11
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ヘルメス(ヘルメイアース:役柄は神々の伝令使といったところであり、巧みな言葉・智慧を操り、技術・工夫に長けているという生得的な性格を有する神でもある)のトリックスター的な要素。まず、赤ん坊の時分にアポロンの50頭もの牝牛を盗むというあさましい泥棒行為をしている。

2010-12-17 23:28:01
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

その牝牛を盗んだことがばれないように細工を施し、またその牝牛の内の2頭を生贄の儀式のための供物にして食った(アルカイックな供犠である)。また自分の家の前にいた亀の中身を食って、その甲羅と牝牛の腸の筋を使って竪琴を作る(再度いいますけど、これ、赤ん坊の所業です)。

2010-12-17 23:31:43
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

牛を盗まれたアポロンの方は、当初癇癪をおこして牛を返せとヘルメスに迫ったが、ヘルメスは竪琴を掻き鳴らして聞かせる。アポロンはその初めての代物(実はこの竪琴は世界初の発明品。ヘルメスはそれをチラつかせたわけ)を欲しがり、牛は要らないからそれをくれろと要求することになる。

2010-12-17 23:35:58
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

このやりとりの前にアポロンが癇癪を起こしたとき、ヘルメスは当初母親ともどもしらばっくれようともしていた。アポロンは、全知のゼウスの前にひっ立てて事を明らかにしようとする。全知のゼウスの前ではヘルメスの細工ほか全ては露呈することが明らかなので、ヘルメスはこの意味で「愚鈍」。

2010-12-17 23:41:37
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

黄金づくりの杖“ケーリューケイオン”も、アポロンとのやり取りから手に入れた代物。もともと“ケーリューケイオン”はアポロンが牧人として携えていた牛追いの杖だが、それはすべての人を眠らせ、あるいは覚まさせる働きをもつという特別な代物である。

2010-12-17 23:44:07
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ヘルメスは、今度は自分の技術で葦笛をつくってこれを吹いて遊び、アポロンにチラつかせることによって、彼にそれを欲しがらせた。アポロンは “ケーリューケイオン”と交換しようという条件を出した。が、ヘルメスはその上に占いの術も教えてくれなければヤダと駄々をこねた。

2010-12-17 23:45:10
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

どうしてもその葦笛が欲しかったアポロンは、小石を用いる筮占術までも彼に教えてやったと(どんだけ狡い赤ん坊…w)。

2010-12-17 23:46:14
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

こんな狡いヘルメス、他のものが努力によって何とか手にしようとしても得られないような“ケーリューケイオン”や筮占術まで手にしたあと、ゼウスに任じられることによって神の伝令使という啓示的存在にまでなる。

2010-12-17 23:49:21
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

さらには、そのケーリューケイオンを用いて、怪物アルゴスを殺して囚われのイーオーの「救い主」にま でなっている。

2010-12-17 23:50:21
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

このようなヘルメスは、上記に挙げたトリックスターのモチーフをだいたい持っており、「動物的で太古的な幼児性から神秘的な《ホモ・マクシムス(最高の人間)》への変容」を遂げたという点で、ユングの言うシミア・デイとして描かれるトリックスターのモチーフを持っているといえる。

2010-12-17 23:50:58
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

加えて合成神ヘルメス=トートの場合、トートは姿かたちにおいてずばりヒヒ(Hundsaffe=ドイツ語で直訳は「犬の頭を持つ猿・犬猿」))として、エジプトの『死者の書』において変わることなく一貫して描かれている。トートはそのような姿でありながら至高な神的存在として神聖視されている。

2010-12-17 23:53:38
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ユングは猿や蛇、怪蛇バシリスク、鷲などをして悪魔の比喩(アレゴリー)であり、下等極まりないものであると説明している。彼はトートについて、まるでヘルメスのもつ《シミア・デイ》の内面的な特徴が、そのまま姿において外面的に露骨に表現されたかのような位置づけで語っていたりする。

2010-12-17 23:58:01
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

最後に『ヨブへの答え』のヤハウェについて。彼は『ヨブへの答え』では明示しはしないが、『元型論』を読めば、ユングは明らかにヤハウェについてもこのシミア・デイを暗示させているように思われる。「動物的で太古的な幼児性から神秘的なホモ・マクシムス(最高の人間)への変容」=「神の人間化」。

2010-12-18 00:02:16
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

明らかに暗示させているって変な表現だな。単に暗示させている、だな。終了。

2010-12-18 00:03:28
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

旧約聖書におけるヤハウェのデーモン的な特徴を少し丁寧に調べてみれば、そこにはトリックスターの予測しがたい行動や、無目的な破壊欲や自ら招いた苦しみが少なからず見出され、それらと並行して、救い主となっていくのが同時に人間化でもあるという発展が次第に判然としてくるのである。(ユング)

2010-12-18 00:23:18
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

こうした意味深いものへの逆転こそは、「聖なるもの」に対するトリックスターの補償的関係を示すものであり、この関係は西欧においては古代のサトゥルヌス祭の記憶の消えやらぬ中世初期に既に、独特の教会行事を生み出したのである。(ユング)

2010-12-18 00:26:13
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

この行事は大抵キリスト生誕に続く日々、つまり新年に、歌と踊りによって祝われた。これは教会の中で司祭、下級司祭、子ども、副助祭がさしあたり無邪気な〈乱痴気踊り〉をするものであった。(ユング)

2010-12-18 00:29:51