キュッチャニアにお狐様来る

Ｄ・Ｗ・Ｗ @dwwyakata

よーし、こうなったら最終手段だ。少し前に予告していたキュッチャニアにお狐様が来る短編でも書こう。

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ネタは練ってあるので大丈夫だ。 はじまりはじまりー。

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昔々。あるところに茜という妖弧の娘がいたそうな。 茜は御年二百歳。狐の妖怪としてはまだまだ若々しい小娘で、実力もそうたいしたことはない狐なのじゃった。 #キュッチャニアにお狐様来る

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ある小山にある霊場で狐としての格を上げるために真面目に修行をしていた茜であったのだが。 今朝、下山したのだという。 というのも、お山の支配者である大妖怪に、宣告されてしまったからなのじゃ。 お前には才能がない。 このまま修行しても、時間の無駄だと。 #キュッチャニアにお狐様来る

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そもそも妖弧には階級が四つある。最上級の天狐から、空狐、気狐、野狐に別れる。茜はこのうちの気狐に属するが、階級が同じでも上下では力が天地。 二百年修行してもさっぱり芽が出なかった茜は、気狐になるのが精一杯。同じ気狐の間でも馬鹿にされていたそうじゃ。 #キュッチャニアにお狐様来る

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仲間からも馬鹿にされ、誰も庇うものもなく。 小山を追い出された茜がとぼとぼと歩いていると、これからどうしたらいいのだろうと不安ばかりがよぎったそうじゃ。 狐の世界も楽では無いのである。 #キュッチャニアにお狐様来る

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大妖怪玉藻の前がごとくに国を傾ける様な妖力もない。かといって、善狐になろうとしても、大した実力もない茜など、受け入れてくれる稲荷神社などあるだろうか。 チンピラ同然の妖怪狐である野狐ほどではないにしても、茜はなんとも実力が中途半端なのだった。 #キュッチャニアにお狐様来る

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そうこうしているうちに、人の街に出る。 人間に化けた茜は、あまり背も高くなくて、美人にもなれない自分を鏡で見て、苦笑い。妖力がある者が見れば、尻尾も狐の耳も丸見えじゃ。 「二百年修行して、この程度しか出来ぬでは、山の主様の言う事ももっともじゃのう」 #キュッチャニアにお狐様来る

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ふと、チラシをひろう。 其処には、こう書かれていた。 「お狐様熱烈歓迎！　キュッチャニア」 「ほう……」 気になったので、手持ちの「がらけー」でネットにアクセスして調べて見る。 今は妖怪もはいてくの時代なのだ。 #キュッチャニアにお狐様来る

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調べて見ると、なんでもキュッチャニアとは何処かの大陸の山奥にある独裁軍事国家で、そこの主はとてもお狐様が好きなのだという。 ため息をつく。 #キュッチャニアにお狐様来る

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どうせいる場所もないし、故郷に戻っても笑いものにされるだけ。 悪さなんてしたら鬼の手を持つ教師やらちゃんちゃんこの子供やらに瞬殺されるのが目に見えている。 #キュッチャニアにお狐様来る

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手持ちの荷物しか財産もないけれど、術を使えば密航くらいはできるだろう。どうせ行く場所もないのだし、大事にしてくれるならそれでいい。 茜は気を決めると、チラシに書かれているキュッチャニアに向かう事にした。 そうして数日旅をして、辿り着いた先は。 #キュッチャニアにお狐様来る

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思わず無言で立ち尽くしてしまう。 其処にあったのはなにやら巨大な壁。そして周囲を警戒しているのは、モモンガの化生の群れ。 壁の上には、やたら古い兵器が山の様に置かれている。 やばい。 茜も端くれとはいえ妖弧。何か此処はヤバイと、一目で気付く。 #キュッチャニアにお狐様来る

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本能は告げている。帰るべきだと。 しかし居場所など無い事に変わりはないのだ。 茜は門に沿って歩いていって。やがてとてもでかい門らしきものを見つけた。 歩哨らしいモモンガの化生二体。 意を決して声を掛ける。 「すまぬが、狐を募集していると聞いたが……」 #キュッチャニアにお狐様来る

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次の瞬間。 茜は取り囲まれていた。 「お狐様だー！」 「お狐様が来たー！」 「え、あの、その」 「支配者様におささげするのだー！」 いきなり四方八方に現れるモモンガの化生！ 見る間に網を掛けられて捕獲されてしまう茜！ 「のぎゃー！　何をするだぁー！」 #キュッチャニアにお狐様来る

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あれよあれよといううちに輿に乗せられ、運ばれる。 目を白黒する茜。 一応此奴らも妖怪だから、妖弧だと言う事はわかるのか。 悪い予感がどんどんおおきくなる。 「わっしょいわっしょい！」 「おきつねさまおきつねさま！」 モモンガ共が輿を揺らしてはしゃぐ。 #キュッチャニアにお狐様来る

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やがて、広々とした場所に出た。 どうやら玉座の間らしい。 壁の中は全部建物になっているらしいので、空は運ばれる間一度も見なかった。 それにしてもこの玉座の間は。 周囲にある野は全て軍事兵器ばかり。 いや、これは噂に聞く「ぷらもでる」だろうか。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「支配者様のおなーりー」 じゃーんと銅鑼が叩かれると、一斉にぴょこぴょこモモンガどもがひれ伏す。 輿がいきなり低くなったので、ごつんと尻を打ち付けてしまった。 輿を担いでいたモモンガ共までひれ伏したのだ。 もうやだ。 帰りたい。 #キュッチャニアにお狐様来る

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ゴゴゴゴゴとせり上がってくるそれは。 何かよく分からない大砲だ。 「うーん、今日も1/30グスタフ列車砲の感触は最高だきゅー」 大砲の上に跨がって全身をすりすりしている何か得体の知れない存在。 あれがキュッチャンだと、茜は悟った。 #キュッチャニアにお狐様来る

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玉座代わりに大砲の模型とは、なかなかにエキセントリックである。 「キュッチャン陛下！」 「なんだきゅー。　僕はグスタフとキャッキャウフフで忙しいきゅー」 帰る。 茜がこっそり逃れようとするけれど。 モモンガ共が余計な事をいう 「お狐様捕まえました！」 #キュッチャニアにお狐様来る

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「本当だー！」 らんらんと目を輝かせるキュッチャンの視界に捕捉された。 茜は死を悟った。 #キュッチャニアにお狐様来る

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いきなりルパンジャンプしてきたキュッチャンに手を掴まれる茜。 「僕のお嫁さんになってくれるために来てくれたんだきゅー？」 「あの、もう帰りたいのじゃが」 「お前達、すぐに婚礼の準備だ！」 「アラホラサッサー！」 誰も茜の話は聞かない。 #キュッチャニアにお狐様来る

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「小さな稲荷でも作ってくれればそれでよい。　後はちょっとお供えでもしてくれれば、加護くらいするにのう」 茜の口からため息が漏れる。 無茶な要求をされるとは思っていたのだけれど、まさかいきなり結婚とはお思わなかった。 #キュッチャニアにお狐様来る

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あれよあれよという間に、出口のない部屋に押し込まれた茜。 困り果てて、見張りらしいモモンガに聞いてみる。 「すまん、疲れた。　厠はどこじゃ」 「ありません」 「え」 「厠じゃぞ」 「ありません」 #キュッチャニアにお狐様来る

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「厠がないと言う事は、どういうことじゃ」 「お狐様は神聖な存在なので、トイレなどいきません」 「」 絶句した茜。 「じゃあそなたらの厠と同じでかまわん」 「僕達のトイレは、お外の土です」 「な、なんじゃとぉ！？」 #キュッチャニアにお狐様来る