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くみかおるの冒険 @ElementaryGard
『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(津堅信之)を再読。過去に何度も批判的に取り上げてきた本。じっくり論じて直してみます。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
「第一章 アニメへの開眼」のなかで、敗戦間際に観た戦意高揚アニメ映画『海の神兵』に手塚少年が感激したのは実は嫉妬の念があったからではないか、と論じている。p27
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
>まさに自分がやろうとしていたことを先にやられてしまったものであり、流れてきた涙のかなりの部分が「悔しさ」だったのではないだろうか。(p29)
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
「それはあなたの勝手な読みでしょーが」と突っ込まれるのを予想してか、こう続く。 >もちろん、以上の仮定は、実証的な資料がない中での文字通りの仮定である。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
こういう論じ方はズル。自分も過去にやってるから気持ちはわかる。わかるけど、この後展開される説(大間違いだけど)をもっともらしくするための伏線なのが見えてしまう。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
この本における津堅の論述トリックは他にもあります。「第二章 虫プロ設立まで」のp71末尾から引用。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
>実は、手塚は「ディズニーへの思い入れ」についてしばしば公言しているが、「ディズニーのようなアニメーションを目指して虫プロを作った」という発言はほとんどみられない。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
>むしろ、虫プロ設立前から、ディズニーとは異なる方向性であることを強調することがあった。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
手塚はもともとディズニー的な自然主義的フルアニメーションを志してはいなかった→ゆえに「省略技法で粗悪品を乱造した」とする大塚康生や宮崎駿らの批判はあたらない、と巧妙に手塚免責の伏線を張っているのですこの章で。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
東映動画で長編『西遊記』の制作に参加した後、虫プロダクションを設立。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
津堅は、手塚がもともとディズニー的本格アニメ(東映動画はこの血筋)ではなく省略技法アニメに心が傾いていたとしていますが、これは正しくないとみます。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
1958~59年連載の『フィルムは生きている』。アニメーションに野心を燃やす青年の夢と挫折と達成の物語。ちょうどこれの連載中に東映動画から声がかかって『西遊記』に参加。 pic.twitter.com/0GAa6yParx
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くみかおるの冒険 @ElementaryGard
手塚は思い知る。何百人というスタッフと働くのがどんなに難しいか。自伝のなかでもこぼしていました。『フィルムは生きている』のなかで、アニメ会社の経営者となった主人公にこう言わせる。「人を使うってこんなにむずかしいものとは思わなかった」
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
アニメ作家とはすなわちアニメ経営者でなくてはならないという、冷酷な現実を東映動画で味わい、戸惑ったとみます。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
何百人という人員を動かし管理しなくてはいけないディズニー的本格アニメーションを志すと、嫌でも「経営者」にならざるをえなくなる。自分を「作家」と規程している手塚には我慢がならないことだった。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
それで手塚はリミテッドアニメーションに迂回路を求めた、とみたほうがいいのではないかなーと思うわけです。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
なにしろ少数精鋭で作れるから、「人を使うってこんなにむずかしいものとは思わなかった」とほおづえをついて嘆く事態を避けられる。みんな仲間だひとりひとりが作家なんだ、と。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
>東映動画の『西遊記』において、手塚がストーリーボードを多用するディズニー的なスタイルをとろうとしたのは、それが「東洋のディズニー」を標榜する東映動画の傘の下での仕事だからであって、手塚のアニメーションにおける本質的な志向によるものではなかったのではないだろうか。(p77)
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
零点。正しくは「ディズニー的な凝ったアニメを夢見て東映動画に参加したけれど、ひとを管理する『経営者』の姿勢が問われることにおののき、少数精鋭でいけるリミテッドアニメに傾斜していった」です。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
西遊記 予告篇: youtu.be/7c5LEgQQW8E 1960年公開。ウォルト・ディズニーが案内役で登場するスタイルを踏襲してますね大川社長。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
大勢の絵描きが部屋にぎっしり机を並べて作業している。この何百人という人員を管理するのが経営者。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
チャップリンの『モダンタイムス』めいた姿に手塚はおののいた。そして自らの出資と企画で少数精鋭主義で作り上げたのが『ある街角の物語』。1962年。tezukaosamu.net/jp/anime/64.ht… スタッフは十数人くらい。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
繰り返します。「手塚はもともとディズニーアニメを志してはいなかった」のではなく「志していたんんだけど心が折れてリミテッドに迂回路を探った」のです。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
>当時から手塚の周囲にいたスタッフは、手塚が虫プロで本質的にやりたかったのは、「商業アニメーションではなく実験アニメーションだった」と口をそろえている。(p77) それは『西遊記』で挫折した「後」の話でしょうが!なぜ誰もそこに気づかない。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard
などなど「気づけよそれくらい」な読みができていない論が延々と続くのが、この『アニメ作家としての手塚治虫』という本なのです。
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コメント

未知神明(みちがみ・あきら) @ontheroadx 2015年4月5日
(余談)1960年代はじめにはもうディズニー的アニメには世界的に限界を感じていて、それのアンチ的なものの集大成として東映は「わんぱく王子の大蛇退治」(1963)を作った、と大塚康生は語っています。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard 2015年4月5日
「マッスルではなくフォルム」でしたっけ。宮崎駿は後にあれの空中戦を『ピーターパン』の飛行シーンと比べて「記号」と切って捨てていました。
ええな@豚バラ🐽ばらまくニャ @WATERMAN1996 2015年4月11日
訂正・非常に良いまとめ、良い分析と説明。さて、途中でも出てきているのだが、この手の話をすると必ず善悪論で考える人がいる。これは日本の文化人とされる人々が普段いかにビジネスと縁遠いかということでもあるのだが、彼らはこの問題が純粋に経営とその関連法の話であるという視点を持てない。
ええな@豚バラ🐽ばらまくニャ @WATERMAN1996 2015年4月11日
虫プロおよびアニメ産業の経営論という議論において、手塚治虫が経営の文脈上でどれだけ批判されても手塚治虫の作家性が傷つくわけではないのだが、彼らはそれを分けて考える事ができない。言い換えると、分けて考える事のできない人がこの問題を論じてしまうという事がある。その結果として善悪論になってしまうのだと思う。
ええな@豚バラ🐽ばらまくニャ @WATERMAN1996 2015年4月11日
既にまとめ内でも述べられているのだが、会社経営というのは会計が全てと言っても良い。いかなる事業の会社でも、幾ら入って幾ら使って幾ら残るかというのは大体同じ考え方であり、だからこそ、アトムの予算が50万だろうが150万だろうが、作るのに400万かかるという点からすれば本質ではないという事なんだ。
鐘の音@今週末は待望のライブ @kanenooto7248 2015年4月11日
大体、クリエイターの人がやらかす経営上失敗を、手塚先生が大規模でやらかしてるんだよね。それも業界を巻き込んで。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
WATERMAN1996 「それを分けて考える事ができない」のはアナタでしょう。自分は物事を分けて考えられるけど、自分の考えに反する異説はそうではないはず!!って発想。 手塚を批判する人に中にも分けて考えられないヒトはいるし、手塚の擁護者にも分けて考えられるヒトはいる。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
「版権収入は原作者のものであってアニメ化した制作会社のものではないのです本来。」は正しくない。たとえば新日鉄の鉄板を使ってトヨタが新型車を発明しても、新日鉄の特許にはならない。部品の提供者は発明者にはならない。もし「アニメは例外」とか言うなら、製造業など他業種への職業差別だ。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
手塚だけが悪いんじゃないだろーとかいうアタリマエのツッコミを(放置してきたアニメ業界の体質にも問題あるよねー)、手塚の神格化だーーとか言うヒトも多い。手塚批判の神格化をしているアホのくせに、手塚の神格化がケシカランというアホも多いよな。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
有名漫画家とはいえ、たかが一介のマンガ家ごときの作ったアニメ会社に振り回されるようなアニメ業界の脆弱な体質こそが、アニメ業界の低賃金の本質だと、何度も各所で批判されてる。なのに、「手塚の神格化!」とか言って聞く耳を持たず、手塚批判を神格化する連中の多いこと。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
製造業も一般の小売業も、給料は所詮、需要と供給で決まる。あとは最低限の労働基準法の最低賃金さえ守ればよい。なぜ、アニメーターだけ賃金を政策で保護すべきと考えるか、理由がワカラン。手塚批判を神格化するヤツは、結局、アニメーター職を神格化し、作家業を神格化しているだけだろ。作家業の神格化のぶん、一般の製造業とかを見下してるだけだろ。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
ツイッターで「ここに書いてある手塚擁護の論法は、だいたい歴史修正主義で多用される論法であるよね」と言ってるヒトがいるが、そもそも歴史研究に限らず科学って、どんどん修正して不確かさを減らしていくもんだぜ。 あ、この科学ってのは修正していくものってのは、ポパ-の科学哲学とかのパクリです。ここでは名前を挙げないが、プロのマンガ家でも、ポパーを知ってるヒトはいるのになあ。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
アニメ会社の経営者には低賃金のことでの甘えを許さなくせに、アニメ評論の甘さを許すご都合主義者の評論家も多い。一般のビジネス評論とかなら平気で突っ込まれる事でも、アニメ評論だと許されると思ってる評論家も連中も多い。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月11日
たぶん、批判相手から論争を言われるだろうし、論争しようが平行線だろうから、勝手ですがブロックします。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard 2015年4月12日
ほほう著作権法が及ぶわけですかトヨタの新型車には。初耳初耳。unkoman38 >たとえば新日鉄の鉄板を使ってトヨタが新型車を発明しても、新日鉄の特許にはならない。
ええな@豚バラ🐽ばらまくニャ @WATERMAN1996 2015年4月12日
.unkoman38 手塚が虫プロを作り鉄腕アトムを作った時代、アニメ産業と呼ぶべきもの自体が確立されていなかったという事を理解してないんですな。だからこそ「10年早すぎた」という話になるのだと思いますが。
上野 良樹@C96お疲れ様でした! 日曜日西し-23a @letssaga3 2015年4月12日
unkoman38 アニメ業界が労働基準法を守っていれば、こんなまとめは必要なかったです。
ウンコマン @unkoman38 2015年4月13日
議題の、津堅信之さんの主張自体には、まとめ主の触れてるように、ツッコミどころも、あるんだと思うよ。そのことと、まとめ主の主張が正しいか否かとは別問題。
くみかおるの冒険 @ElementaryGard 2015年4月15日
unkoman38 すごくいいのがれっぽく聞こえる。
hal9000 @eGOCAbSK9Bj8DdH 2015年4月28日
unkoman38 この文脈で使われてる「歴史修正主義」に対して「どんどん修正して不確かさを減らしていくもんだぜ」と反応するのは流石にアホすぎると思う