ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/18

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い物語です。
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@K_Ichida

#twnovel いたずらで目玉にバネをつけられた。肩を強く叩かれると目玉が、びよよーんと飛び出してしまう。ひどいので文句を言うと、いじめっ子たちは、飛び出さないようにすればいいんだろ、と言って釘で目玉を打ち付けた。おかげで飛び出さなくなったけど、釘が邪魔で目が見えない。

2010-12-18 00:12:39
日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber(HUB) @hyuugahikage

#twnovel 友人とたまたま会ったが変だ。昨日会ったはずなのに3ヶ月ぶりだといい、私の近況をやたら気にする。カズオなのにいや違うタカシだと言う。俺が左利きなのも覚えてないし、まるで別人だ。するとこう聞いてきた。「ところでお前の頭の縫った跡と刺さったネジはなんなんだ?」

2010-12-18 00:14:32
八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物はミニスカートのサンタクロース衣裳を着た美少女だった。「ひっかかったな人間豹!」少女が少年の声で言った。「彼は僕の助手だよ人間豹君」いつの間にか現れた探偵が言った。「うらやましいだろう?」思わず頷きそうになる人間豹だった。 #twnovel

2010-12-18 00:27:39
タイルネン @tairunen

「お」は密かに狙っていた。どうにか「あ」の位置を奪いたいと思っていたのだ。そしてついに「い、う、え」とともに「あ」を侵略した。50音は「お」から開始となり、同時に「こ」「そ」なども位をあげた。世に言う「おいうえあ」時代の幕開けである #twnovel

2010-12-18 01:01:34
layback @laybacks

口のきけない少女は泣きながら時計を指さした。母親が調べてみると時計は既に事切れていた。屋敷の裏庭で時計に火が点けられた。突然少女が言葉を発した。俺以外と話してはいけない。ずっと時計にそう囁かれていたと言うのだ。炎に文字盤が歪む。立ち昇る紫の煙から呻き声が漏れた。 #twnovel

2010-12-18 01:42:46
@NAYUTAUNAGINOVE

明日を迎えることが怖いぼくは飛行機で移動し続けている。夜が明ける数時間前に飛行機に乗って、夜になったばかりの国へ移動。到着したら休憩してまた移動。そんな生活をもう何年も続けている。日付は変わっても『明日』は来ない。ぼくはいつまで逃げ続けるのだろう。おっと時間だ。 #TwNOVEL

2010-12-18 01:44:14
ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 劇場の地下にこんな抜け道があったとは知らなかった。私は美しい歌声の見知らぬ男に手を引かれている。暗い通路を進む前の男が『噂の怪人』だと私は推測し始める。ようやく明るい場所に出ると私は手を振り払う。『噂の怪人』は仮面ではなく、なぜかパンツをかぶっていたからだ。

2010-12-18 01:53:11
タイルネン @tairunen

生まれつき耳の聞こえない少年がいました。彼には音が色で見えます。音を聞くのではなく見るのです。綺麗な音は明るい色、卑しい音は濁った色に見えるそうです。ただ、人間の声には色が付いていないのが多いからつまらないんだよと教えてくれました #twnovel

2010-12-18 01:58:14
ひょろ @hyoro4779

『ノックの音が』 #twnovel ノックの音がしない。7年前から続く核戦争。その状況を私の潜むシェルターまで毎日伝えに来た側近が今日はやってこない。我が国は負けたのか、それとも戦争を始めた国王などずっと閉じ込めておけと民衆が思ったのか。ドアノブに手をかける勇気が今の私にはない。

2010-12-18 03:13:59
タイルネン @tairunen

20歳の誕生日、僕は父に山へ連れて行かれた。そして神妙な顔つきで「うちの家系は将来的に空を飛べるようにしていきたい」と告げられた。父の計算によると2万年後の子孫あたりで飛べるようになるらしい。僕は何も答えずに腕をバタバタさせ山を駆け降りた。父は満足気に頷いていた #twnovel

2010-12-18 03:21:45
雨之森散策 @t_amamori

三十歳頃から抜け毛が増えた。父も薄い人なので不安になるが当然シャンプーはするしブラシも通さねば不精と思われる。仕方なく髪を梳くと案の定抜け毛。ブラシを見ると一本の髪だけ毛根に小さな札のようなものが付いている。『当たり』と。…何が当たったのか想像するだに恐ろしい。 #twnovel

2010-12-18 06:11:55
泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 船内に地獄がある。地球を出て五年を過ぎ、故郷との通信が途絶えた頃から乗組員達は次々と狂っていった。一時的な故障によるものだという説得は何の意味も持たなかった。今日は通信員が全裸で外に出て行った。凍り付いた彼の体に宇宙蛸の千本の足が絡みつく。船外にも地獄がある。

2010-12-18 07:14:13
矢菱虎犇 @torabishi

イブの深夜、パトロール中の警官が大きな袋を背負った赤い服の不審者を呼びとめて職務質問した。「その袋を見せなさい」「これは子どもたちのための」警官が袋の中を懐中電灯で照らす。見るもおぞましい肉片の山。「なんだこれは?」「だからうちのピラニアの子どもたちのための」 #twnovel

2010-12-18 09:05:22
catroll @catroll

#twnovel 会社を首になった彼はどうしようかと考えていた。一年のうち僅かな時期だけ働いて暮らしていきたかった。そうサンタクロースのように。だが、あんな寒い中での肉体労働は真っ平御免だ。そこで彼は思いついた、彼らの上前を掠め取れば良いのだ。彼はサンタクロース評論家になった。

2010-12-18 13:16:34
catroll @catroll

#twnovel 数年前から兆候はあった。配達した品物にクレームが就き始めた。どうやって連絡してきたのか、欲しがっていた物と違う、この色は好きじゃない交換しろだの、そんな文句をつけてくる親が増えてきた。モンスターペアレントという奴だろうか。今年、サンタクロースは休業を考えている。

2010-12-18 13:51:48
140字物語 @shortshortshot

災害や事故の度に颯爽と現れ、人々を救うあの超有名な彼。あんな頻繁に人命救助してたら本職が疎かになっちゃうよね。まさか無職?思い切って彼に聞いてみた。「ああ実は」彼は胸を指差した。「やっと収入が安定したんですよ」そこにはいつものマークではなくて大手企業のロゴが。 #twnovel

2010-12-18 14:02:03
丸山政也 ©︎ @masaya_maruyama

#twnovel 給料が入ったので高級焼肉店に妻と出掛けた。メニューを見ると韓国のお酒マッコリがある。私は厨房の中の店員に「マッコリ頂戴」と大きな声で云った。すると暫くして店員がモゾモゾしながら出てきた。「こんな感じでいいですか?」ブリーフ姿である。きっと聞き間違えたのだろう。

2010-12-18 18:35:27
Tohru Ishizuka @operahaus

「素数」図書館に素数でできた部屋があると聞いてでかけてみると、柱や壁や窓や床や棚や椅子や机のあらゆる比率が素数で構成されていた。窓かと思ったところは椅子で、椅子かた思ったところは棚で、棚の奥から百年前に行方不明になった館長があらわれ、火をかしてくれとせがまれた。 #twnovel

2010-12-18 19:53:11
Mark @Marknovel

#twnovel 今年は忘れたい事が多い。妻とは別れ仕事は失い、そして大切な預金も詐欺にやられた。そんな愚痴を言う相手もいない。男は踏み切りを渡る途中で思い詰めていた。すると線路の暗がりから微かに声が聞こえてきた。「忘念会に参加しませんか」男は嬉しそうに声のする方へ歩いて行った。

2010-12-18 20:56:48
catroll @catroll

#twnovel 作家は行き詰っていた。今執筆している作品の登場人物の心理がどうしても表現できない。本当の悲哀の一線を越えることがどうしてもできないのだ。愛するものを失うということはどういうことなのか? その夜、作家は愛する妻と子供を殺した。

2010-12-18 21:41:36
altana @altana

カラーコンタクトで見ると世界は真っ青なんですかね。夕暮れの明るさも青く陰っているんでしょうねと話しかけたら黒目の所だけはちゃんと透明なんですよと呆れた声で教わった。貴方の寝不足の目玉が朝日を嫌うからそんな考えが湧くんですよ。レンズを洗う背中は涙でぼやけている。 #twnovel

2010-12-18 21:56:58
キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel 休日の書店散策。以前から気になっていた一冊のエッセイを見つけた。様々な本が立ち並ぶ書棚の端に君は居た。御免。随分待たせたね。でも今夜君の話を聞かせてほしいんだ。君は微笑み手を差し出す。僕はその手をしっかりと握って君を連れ出した。

2010-12-18 22:09:48
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

目覚めればうんざりする白銀景色。すぐさま今日着る服と出立時刻をどうするか、眠い頭で考えてみる。道路は凍ってるだろうし、交通機関は遅れるだろうし、コートも厚手のものにしたほうがいい。寒いのは苦手だ。本当に、毎朝同じ車両に貴方がいなかったら仕事なんて休んでやるのに。 #twnovel

2010-12-18 22:31:04
@keith_mild

#twnovel 勤勉に働く古時計。その短針に結ばれているのは弾けそうなほど熟れた林檎。長針が一周する毎に揺れる果肉を見据え、その下には一匹の猫がじっと待っている。残り、半周。猫は動かない。だから、気付かなかった。針が下を向き、林檎が宙に躍る前に異臭を放ち腐り落ちるということを。

2010-12-18 23:10:59
内藤みか(作家) @micanaitoh

世界を寒波が襲いました。普通の暖房だけでは足りず、人々は本能で恋愛をするようになりました。恋人のことを想うだけで体温は0.5度上がり、身体は火照り、寒さから少しだけですが逃れることができたのです。やがて寒波はおさまりましたが、人々は恋を終わりにはしませんでした。 #twnovel

2010-12-18 23:31:17