ニンジャ・サルベイション #4
(あらすじ:ドロップアウト・サラリマン、ユダカは幼馴染のカシイと思いがけず再会した。カシイはニンジャとなっており、己をキャリバーと名乗った。二人はミカリという女と意気投合し、夜を明かすが、正体不明のヤクザめいた者達の襲撃を受ける。逃避行の中で郊外のヨタモノ達を虐殺するキャリバー)
2015-04-03 22:09:23(ユダカはキャリバーのニンジャ性に衝撃を受ける一方、生き残っていたヨタモノを、隠し持っていた銃で自ら撃ち殺した。その直後、思いがけず彼らを取り囲んだのは……マッポであった)
2015-04-03 22:11:01「マッポ?」ユダカは目を細めた。思考が加速する。彼らを追ってきていた正体不明のスーツ連中ではなく、なぜ、マッポなのか?モーテルの連中が自分達を通報したのか?それはない、彼らは実際ヨタモノ達が排除されたことに感謝すらしていた。それに動きが早すぎる……「ホールドアップせよ、二名!」1
2015-04-03 22:14:30中年の非制服の者……デッカーが、ビークル内から拡声器を使用した。「そこの、アー、特にそこのカシイ・イワテを、ここ数日の、ドージョー連続襲撃殺害事件の重要参考人として」「カシイ?」ユダカはキャリバーを見た。「キャリバーだ」彼は訂正し、返答代わりにスリケンを投擲した。「イヤーッ!」2
2015-04-03 22:17:34KRASH!超硬質フロントガラスに蜘蛛の巣状の亀裂が入り、中年デッカーが身を竦ませた。「ウオッ!ビンゴか畜生」助手席の若いデッカーが拡声器をもぎ取り、他数台の逮捕ビークルに指示した。「ニンジャ確定!注意!」ケンドー・オメーンや鎧で武装した機動隊がジュラルミン盾を構え前に出る!3
2015-04-03 22:24:16「オイ!マッポはまずい」ユダカはキャリバーに言った。ニンジャが怒りに燃える目で見返した。「なら、俺は死刑になりゃいいか?ユダカ!」「俺に会うまでに、何やって来た」「試したのさ」キャリバーは拳を握り、開いた。「ニンジャがどこまでやれるかをよ!どこまで無理が通せるかをよ!」 4
2015-04-03 22:28:15「お前……」「ホールドアップ逮捕!」「ホールドアップ逮捕!」「黙秘権!」ケンドー機動隊が電気サスマタを闇に光らせ、にじり寄る。キャリバーは憎々しげにそれらを見渡した。「オモチャがよォ……」姿勢が沈み、ミシミシと肉体が緊張する音がユダカの耳に届いた。「ヤメローッ!」「イヤーッ!」5
2015-04-03 22:31:33「アバーッ!」キャリバーの姿が消えた。ユダカの網膜に、ケンドー機動隊の一人の首を跳び蹴りでへし折るニンジャの姿が焼きついた。「イヤーッ!」空中で身体をひねり、もう一人の鎖骨部に後ろ蹴り。「グワーッ!」「黙秘権!」電気サスマタが光る!「グワーッ!」着地際のキャリバーを攻撃!6
2015-04-03 22:37:02「黙秘権があります」「抵抗は無駄だ!」ケンドー機動隊が一人、二人!「グワーッ!」キャリバーが地面で身悶えした。BLAM!「グワーッ!」BLAMBLAMBLAM!「グワーッ!」「グワーッ!?」防具の隙間を撃ち抜かれ、機動隊が倒れ伏す。走りながらユダカはチャカ・ガンをリロードする。7
2015-04-03 22:41:09「立てよ雑魚!」ユダカはキャリバーに手を差し出す。ニンジャは力強く掴み返し、起き上がった。「ヘマしたぜ……すまねェ」「ニンジャなんだろうがよ、テメェ」「投網!」若いデッカーが拡声器で叫んだ。バウ、と音が鳴り、頭上にキラキラしたネットが広がる。「ああニンジャだ」キャリバーが呟く。8
2015-04-03 22:46:04グン……ユダカの視界が揺れ、気づけば彼はキャリバーに瞬時に担ぎ上げられ、共に高速で前に跳んでいた。「グワーッ!」「ハハーッ!」投網の範囲を瞬時に跳び逃れたキャリバーは、ビークルのボンネットに両足で着地した。左肩にユダカを担いだ彼は、右腕を力強く振り上げた。「イヤーッ!」9
2015-04-03 22:49:43そして振り下ろす!KRAAAASH!超硬質ガラスが飴めいてひしゃげる!「ウオオオッ!」それぞれのドアをはねのけ、二人のデッカーが転がり出た。若い方は既にデッカーガンをキャリバーに向けており、倒れ込みながら発砲した。BLAM!BLAM!「グワーッ!」 10
2015-04-03 22:55:10BLAM!「グワーッ!」ユダカはキャリバーの肩の上から撃ち返した。「イヤーッ!」キャリバーは一瞬で状況判断し、更に跳んだ。包囲網を飛び越え、着地すると、ユダカをほとんど投げ飛ばすようにして前へ下ろし、己は両手を広げて仁王立ちした。ユダカは乗り手の無い白バイを奪いに行く!11
2015-04-03 22:59:59BLAMBLAM!後方からの銃撃!「グワーッ!」キャリバーは呻いた。うち数発が彼の背中に当たった可能性がある。ユダカはキックを繰り返し、白バイのエンジンをスタートさせた。「来い、クソ野郎!」「イヤーッ!」ニンジャは回転ジャンプし、バイク後部に着地した。二人乗りバイクが発進!12
2015-04-03 23:02:19バイクは加速し、蛇行しながら後方にマッポを置き去りにする。「ハハーッ!」キャリバーはユダカの後ろで歯を剥き出し、笑った。「やっぱりクールだった!ユダカ!テメェ最高にクールだぜ!」「さっきは見損なってくれたくせによォ」ユダカは険しい顔で笑った。「どうしようもねェよ、俺らは!」 13
2015-04-03 23:06:21「いつ以来かなァ……マッポにこうやって一発カマしてやってよォ……」「確かにマッポはマズいッて言った筈だぜ、昔の時も」ユダカは唸った。「くだらねえ……成長のかけらもねえよ」「ハナからサラリマンなんかに収まるタマじゃねえんだ、ユダカ」キャリバーは嬉しそうに言った。「俺わかってた」14
2015-04-03 23:10:36「撃たれたケガはどうなんだ、お前」ユダカは訊いた。キャリバーは鼻で笑った。「たいした事ねェよ。俺はニンジャだからな。既に俺は、試してあるんだ、そういうのは」「そうかよ」「デッカー野郎は殺ったか?」「バカが……殺すかよ」ユダカは答えた。「お前のように刑期を無駄に伸ばしはしねえ」15
2015-04-03 23:15:12「今更刑期もクソもねェだろ」とキャリバー。「やるかやられるかの世界だぜ!」「俺はてめェほどシンプルじゃねえ」「じゃあ泣きながら自首しにいくッてのか?」「……そりゃ二倍ゴメンだよな」ユダカは真顔で言った。「まァいいさ。腹を決めたよ」キャリバーが背中をどやし、バイクは転びかけた。16
2015-04-03 23:21:25「このままミカリ=サンを迎えに行くぜ、ユダカ」キャリバーが言った。「……」ユダカは黙った。キャリバーは続けた。「腹を決めたら尚更よォ。あいつは、おまえにふさわしいマブな女だろ。その、なんだ、お前がフッてきた女とは大違いの。クールなお前に必要な女だろうが」モーテルが見えて来た。17
2015-04-03 23:26:03ユダカの脳裏に、出会った時の……フロアでひとり踊るミカリの姿がよぎった。彼女は一人で美しく完結していた。自分はそんな彼女をイビツにする余分な要素だ。こんなくだらない逃避行に連れ出し、巻き込んだ。「あのまま放っておけばマッポがあの子を保護する」ユダカは言った。「それがいい」18
2015-04-03 23:31:55「何言ってやがる!」キャリバーが叫んだ。「それじゃクールじゃねえ」「マッポに保護されりゃ!」ユダカは遮った。「俺らに拉致か何かされて、連れまわされたッて言うさ!そうすりゃあの子は無事に帰れる!」「まるで俺らに先がねえような言いぐさだな、ユダカ」「知らねえよ……」 19
2015-04-03 23:34:11「いや……待て、クソ野郎」キャリバーの声音が変わった。「チリチリする。ニンジャの、なんだ?感覚ってのか?俺の首の後ろがチリチリする。ユダカ、テメェのクールな計画はナシだ」キャリバーはユダカの肩越し、前方、駐車場に並ぶヤクザ家紋リムジン群を見ていた。「結構ヤバイ、多分。行くぞ」20
2015-04-03 23:39:41ユダカはバイクをドリフトさせ停止した。「行くぞッつってんだ!バカか!」キャリバーが抗議するが、ユダカは点滅するIRC端末の確認を優先した。ミカリ。リアルタイム通信要請!『モシモシ、どこ?』「モシモシ、悪い、今近くに来……」『来て!早く来て!』悲鳴に近い。『ドアが破られそう!』21
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