わらう不知火(かげぬい)

かげぬいの、なんか、シリアスネタ。細々と適当に。順次追加。
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ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

さて一回目は唐突にかげぬい。不知火と陽炎のお話。着地点なんぞぶんなげろ。 「わらう不知火」

2015-04-06 20:01:09
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

「また会うときはお互いきっと大きくなってるよ、そしたらさーーー」 春風に桜が散る中で小さな約束をした。私はなんて約束をしようとしたんだっけ。桜色の髪をしたあの子はなんて返事をしたんだっけ。覚えて居るのはそのあとに指切りをしたときに感じたあの子の体温だけだった。

2015-04-06 20:04:24
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

陽炎が目を覚ましたのは自室。随分と懐かしい夢を見たな、と思いながら起床する。艦娘になる前のことなんて最近はとんと思い出していなかった。なぜ今になってあんな夢を見たのか。春だからおセンチにでもなっているのだろうか。自分に限ってそれはないと、陽炎は鼻で哂った。

2015-04-06 20:08:52
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

「本日付けで我が鎮守府に転属となったものがいる、紹介しよう」朝礼で提督の言葉に少々驚いた。通常の転属命令の時期をやや逸脱しているためだ。何か訳ありか…?と感が騒ぐ。だがそんな想いは提督に呼ばれて皆の前に表れた姿にかき消される。それは今朝方夢に見た、あの桜色の髪と酷似している。

2015-04-06 20:21:22
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

まさか、そんな。一瞬期待に膨らんだ胸は急速に混乱に取って代わる。誰だ。あの子の筈がない。だってあの子は。堂々巡りをする思考。 その桜の髪の持ち主は海軍式の礼をとった後、懐かしい声でこう言った。 「不知火です。ご指導ご鞭撻よろしくです」 人好きのする柔和な笑顔を浮かべて。

2015-04-06 20:28:28
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

「陽炎は不知火と知り合いなんやろ?」そう問われてぐっと答えがつまる。だってどうせそのあとに続く言葉は誰でも一緒なのだ。なんで。「なんで避けてるん?」そら。正解。「…避けてる訳じゃ無いわよ、偶々時間が合わないだけよ」「そらまた」どことはなく楽しそうに黒潮は笑う。

2015-04-07 19:05:51
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

「同んなじ任務、同んなじ部屋なのに、帰り着いたらどっか行って夜まで戻らない。朝は早う出てってしまうって不知火なげいとったよ?」「……そう」そんな話を黒潮としているというのか。あの不知火が。「なぁ、なんかあったん?理由も無しに陽炎はそんな事せぇへんやろ。あないの『ええ子』相手に」

2015-04-07 19:09:58
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

「『ええ子』か……」胸内にわだかまる思いがぽつりと零れる。耳敏く聞きつけた黒潮が不思議そうな顔をする。「ええ子やない?うちあないに何時もニコニコしてる子会うたことないで?」そう。それだ。私が不知火を避ける正体。誰にでも愛想がよく、何時も笑っている。私は不知火と再開した時を思い返す

2015-04-07 19:15:09
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

「陽炎、お久しぶりです」「……不知火」私の名を呼んで目の前に立った不知火。その表情は柔和に緩み、弧を描いた目が私を見つめる。はたから見れば感動の再開なのだろう。私が違和感を覚えて要ることを除けば。「同じ鎮守府になれるとは思いませんでした。提督にお聞きしたところ私は陽炎と同室のよう

2015-04-07 19:30:29
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

です。これからまた、よろしくお願いします。」そのまま差し出された右手。その手を見つめながら私は問う「貴方、不知火よね…」不知火が小首を傾げる。「あの、不知火よね?私と約束した…」「あぁ」一つ頷く。「お互い大きくなりましたね」そう言って笑う不知火は、やはりあの不知火なのだろう。

2015-04-07 19:37:16
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

やはり違和感は気のせいだ。久しぶりに会ったせいで雰囲気が変わっただけだ。そう思い堪忍したように再開の握手をする。ぐっと握りしめた手袋越しに体温を感じる。在りし日の友との再開をやっと実感する。だけど私は微笑む不知火の目を真っ直ぐに見ることはとうとう出来なかった。

2015-04-07 19:41:55
ゾンビ猫@ゾンビカフェ @zonbi_neko

ここまででかげぬい二回目。今日妄想しすぎやーん。

2015-04-07 19:42:32