川と「境界」、道と「境界」——『東京人』五月号の記事をめぐって

同号の記事に触発されたHonda, So氏、墨染桜氏、yookud氏の投稿が興味深かったので、備忘のためにまとめました。
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HONDA,So_新刊「東京暗渠学改訂版」11月8日刊行 @hondaso

ようやく「東京人5月号「東京35区」の境界線を歩く」を読んでいる。先日の地図ナイト暗渠編で共演した方や来場頂いた方が多く書かれていて不思議。そして読み応えあり。気になったのは竹内正浩さんの記事で芝区と麻布区の区境が古川とずれているのは川の蛇行が一因とあるのだがこれは違うはず(続)

2015-04-05 22:37:39
HONDA,So_新刊「東京暗渠学改訂版」11月8日刊行 @hondaso

(承前)この辺りの古川は麻布御殿を建てた時に改修されていて、蛇行はない。川沿いの用途のなかった湿地帯が麻布区に入ったことで、区界が古川の南側になっている。湿地帯は明治には広尾から人が移住し、川沿いに細長く新広尾町が成立。また旧麻布田島町エリアは江戸期にすでに古川を越えて存在した。

2015-04-05 22:41:07
墨染桜 @sumizome_sakura

hondasoさんの呟きを読んで、『東京人』5月号の特集にぼんやり感じていた違和感がやっとつかめた気がする。 まあ話は単純で、川といっても、その規模(および時代)によって全然意味がちがうだろう、ってことだが。

2015-04-06 02:53:47
墨染桜 @sumizome_sakura

a)隅田川のような大河川では、その大きさ自体によって、両岸の社会関係が離される。 ところが、b)古川の特に四之橋より下流のような、中河川では、川の利用によって両岸が同種の空間になり、社会関係の上でもむしろ結びつくことがある。

2015-04-06 02:54:32
墨染桜 @sumizome_sakura

一番わかりやすいのは舟運に使われて、両岸が河岸になるケースだろう。他にも、例えば染色業の用水・排水路に使われれば、やはり両岸が同じ産業をもち、同種の空間(地域社会)になる。

2015-04-06 02:55:15
墨染桜 @sumizome_sakura

また農業用水が豊富でない地域では、川の両岸の狭い一帯だけが貴重な水田になることもある。これもb)。 つまりb)とは、水の流れ自体が特に「お金になる」場合。その裏返しで、特に「お金にならない」場合も考えられる。例えば洪水常襲地帯が貧困地区になるケース。

2015-04-06 02:56:08
墨染桜 @sumizome_sakura

さらに、c)小河川、すなわち水流自体が特に「お金になる」こともない場合がある。c)では、a)のように両岸の地域社会が川で離されることもないが、b)のように両岸が川によって強く結びつくこともない。

2015-04-06 02:57:12
墨染桜 @sumizome_sakura

そして、その上で、今度は行政境界の意味や定義も、時代によって変わる。こちらは単純化すれば、x)地域社会の性格のちがい(例えば商業地か屋敷地かなど)に強く影響される場合と、y)自然地形や大きな人工構造物に強く影響される場合と、二つありそう。

2015-04-06 02:58:59
墨染桜 @sumizome_sakura

で、二つを組み合わせると、a)では必ずx)=y)になる。b)では必ずx)≠y)になる。c)ではそのどちらもありうる。要するに、抽象的な言い方で申し訳ないけれど、川のあり方のa)、b)、c)によって、行政境界の引き方との関係性が全く変わってくるわけだ。

2015-04-06 02:59:23
墨染桜 @sumizome_sakura

当然、それによって、実際の行政境界とその変遷と、川の流れがどう関わってくるかも変わってくる。ついでいえば、産業や技術の展開によってb)だったのがc)になることも、数十年の長さでは当たり前に生じるだろう。

2015-04-06 02:59:53
墨染桜 @sumizome_sakura

前にnamaさんと「川の名」で話したように、近代的な地理や地図感覚に慣れた私たちは、一つの水の流れに一つの河川名をつけたがるように、水の流れにはつねに一つの意味、一つの役割があるかのように思いやすい。それも、昔から今まで同じ意味や役割が。

2015-04-06 03:00:36
墨染桜 @sumizome_sakura

でも、たぶんそうではないのだろうな。永井荷風が川の流速のちがい自体に、意味のちがいを見出しているように。 で、境界の時代的な変遷をとりあげる場合には、そのことが直接影響してくる。

2015-04-06 03:01:07
墨染桜 @sumizome_sakura

別の言い方をすれば、おそらく、区境と川がどう重なりどう重ならないが、その土地や川の個性や歴史を直接物語っている。だとすれば、むしろそれらの集積が東京という都市なんだろう、ってことだ。

2015-04-06 03:01:43
墨染桜 @sumizome_sakura

ちなみに、a)、b)、c)は道についてもいえる。わかりやすくいえば、a)は広小路、b)は主要交通路(典型的には両側町ね)、c)はただの道。例えば、中山道はb)だから、x)型の行政境界であれば、道が境界になる方が異例なのではないだろうか。

2015-04-06 03:02:19
墨染桜 @sumizome_sakura

(あ、街道と屋敷地とが強く結びつけられていればいるほど、街道+屋敷地で一つの空間的なまとまりとして感じられるだろう、ということです。まあ、中山道はかなり旧い道で、かつ尾根道だから、どうしてもそうなっちゃうんですが。)

2015-04-06 03:27:26
よお @yookud

@sumizome_sakura 読み進めながらかんがえていたことを先回りして言われてしまった。えーと、中山道のうち佐久盆地から諏訪盆地に至る区間なんかは明治以降に経済的価値をプラスにもマイナスにも帯びなくなってc)化したといえそうです

2015-04-06 09:50:15
よお @yookud

@sumizome_sakura お金になるケースでもお金にならないケースでも川は御し難い存在であって、それが神格化されるのは当然の流れなのでしょう。川のその性格を技術によって荒ぶる神から豊穣の神に変え、さらに神は死んだに至らせるのはいかにも近代といったストーリー

2015-04-06 09:51:10
よお @yookud

@sumizome_sakura 川とくらべて道が境界になりにくいのは横断しやすさに原因がある気がします。これが鉄道だと線路は横断しにくくてまちを分断する要素だし、駅も表口と裏口に分離されがち。境界を連続立体交差で消そうとしているのがいまの時代と認識しています

2015-04-06 09:52:08
墨染桜 @sumizome_sakura

@yookud というか、たぶん多くの人が似たようなことを考えていたのでは(^^。そう思って読み返すと、特集の執筆者でも、今尾さんや吉村さんや岡本さんは、ほぼ同じことを明示的に述べておられますし、たぶん他の方も考えておられたと思います。

2015-04-07 03:06:56
HONDA,So_新刊「東京暗渠学改訂版」11月8日刊行 @hondaso

@sumizome_sakura 御意。道が境界というより、道を横断して境界があるほうが普通かもしれませんね。あとは境界の意味合い。意味が薄くなるほど道が境界になりやすくなったり(cf.国境→県境)

2015-04-06 07:57:11
墨染桜 @sumizome_sakura

@hondaso @yookud はい、20世紀後半の先進国までは、道にはふつうに人が住んでいたし。また重要な交通路ほど、路面が占拠されて店や住居になりやすく。道自体が生活の空間になるので、切断する性格は川よりずっと弱く、それが境界としての使われ方にも影響してると思います。

2015-04-07 03:12:17
墨染桜 @sumizome_sakura

@hondaso @yookud 鉄道はどんなに線路敷を占拠しても、問答無用に車両が走ってくるのでww。その分断力は前代未聞で、「鉄道が町を壊す!」感覚はリアルにあったと思います。「鉄道忌避伝説」もその辺が源泉かも。 逆に言えば、地下鉄は鉄道を都市に再埋め込みする技術ですね。

2015-04-07 03:16:32