「トゥデイ・イット・ビギンズ～偽史・キョート独立戦争記～」

碌星らせん（ろくせい・らせん） @dddrill

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◆これより、忍殺二次創作を少しだけ投げます。これは本編ならびに翻訳チームとは一切関係無く、一介のファンジンであることを重点します。なお、何かあればタグ　#タケノコスレイヤー　をお使いください。繰り返しますが、これは本編とは一切関係ありません。◆

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「オヤブン……スンマセン……スンマセン」小柄なヤクザが、車椅子を押す。「でも、もう安心ですぜ」車椅子の男は答えない。彼のオヤブンをこうまでしたヨロシサンは、潰さねばならぬ。それはケジメである。1

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「このガイオンから一度、高飛びしやしょう」それには準備が必要だ。狭い日本を離れ、ヨロシサンの手の届かぬ新天地へ逃れる。このガイオン空港、電子戦争下の日本で、唯一海外へ開かれた港から。「オヤブンとなら、何処ででも……」2

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ガイオン空港ターミナルの喧騒の中、小柄なヤクザは表示パネルを見上げる。オバンデス航空893便。彼等の搭乗する便はもう間もなく出発する。敵対ヤクザクランの包囲網を逃れ、ここまで辿り着いた。彼とオヤブンの逃亡劇は、もう間もなく終わる……筈であった。3

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次の瞬間、案内表示がパタパタと翻り、全て『欠航』へと変わり始めたのである。「これは一体……」空港の喧騒が、一斉に強まる。『日本　と　キョート　は　本日　戦争状態　へ　突入　ドスエ』電子マイコ音声が無慈悲に告げる。『それに伴い　全ての便が　無期限欠航となる　ドスエ』4

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瞬く間に出入国ゲートにシャッターが下り、示し合わせたかのように現れたケビーシ・ガードが出入口を封鎖する。「ネオサイタマに帰れないの!?」「会社に遅刻する！」「遅延証明を出せ！」怒号が飛び交い、ターミナル内は一瞬にして、アンコシチューめいた混沌に陥る。5

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ポータブルUNIXを広げ、代替交通手段を押さえようと試みるサラリマン達。戸惑う観光客。毛布を搬入する空港職員。「オヤブン……」そんな中で……小柄なヤクザは、車椅子の前で崩折れていた。「スンマセン……」彼は知らない。それが、彼のオヤブンの為した成果であることを。6

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「私が、不甲斐ないばかりに……」ヤクザはオヤブンの顔を見上げる。「クルシュ……ナイ」車椅子の男の手が、彼の頬を優しく撫でた。7

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カコーン。静謐なる庭園でシシオドシが鳴った。その奥の部屋では、この屋敷の主が電子会議へ参加している。「首相暗殺以来、日本の政権は混乱状態」「誰がやったのかは知らぬが……重畳重畳」キョート元老院。古き街を江戸時代以前より治めてきたと云われる、高貴な血筋の末裔達。9

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「エンペラー無き今。我らは新たな都を手に入れる」彼らの狙いは日本政府……いや、ネオサイタマ臨時政府からの分離独立。「ガイオンの窓は既に閉じた。今日この日、キョートは千年の平穏を取り戻すのだ」　既に戦局は動き始めている。ガイオン空港を一時封鎖。ネオサイタマ政府への最後通牒。10

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「あの……なんと言ったか。配備されたクローンヤクザとやらは」「ヨロシサン製薬の新兵器か。クローン兵など、何処まで使い物になるやら」勝算はある。ヨロシサン製薬、オムラ・インダストリ。主要メガコーポは、様々な優遇措置によって既に味方へと引き入れた。11

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いや……その時点で、勝敗は決している。Y2K以来の疲弊、首相の暗殺。既にこの国の政府に、嘗ての力は無い。 それでも、この会議の参加者達は、元老院の中でも急進派……これは一種の体制内クーデターだ。12

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「しかし、オムラ本社の懐柔には手間取った様子……これは、どなたかのケジメでは？」「……」「……」沈黙が流れる。ウカツな発言をすれば責任を被りかねないため、高位の者の出方を見ているのだ。貴族の社会ではチャメシ・インシデントである。13

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「よい。大事の前の小事である」暫しの沈黙の後、最も年嵩の元老の一人が口を開いた。政府よりも力を持つメガコーポ群が、国家を背後から操作するディストピア。それがこれから先の現実だ。「いずれにせよ、計画は変わらぬ。支配の使命を課せられたるは……我ら高貴なる家柄に生まれついた者のみ」14

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「まさしく」「ぞれでは、計画通りに」通信が遮断され、元老達の姿は消える。屋敷の主は、深くため息を吐いた。「いや……高貴なる家柄に生まれついた、『ニンジャソウル憑依者』のみ、だ」彼は今の元老院の在り方を良しとはしていなかったが故に、この企てにに参加した。15

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それでも……クーデター派にすら、彼は内心失望を感じていた。「見限り時やもしれぬ」或いは、元老院自体が時代遅れとなりつつあるのか。「あの双子は間に合わぬか……」貴重なニンジャ戦力。それもポータルという希少能力。投入できれば、これからの時代において大きな力となるだろう。16

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だが、その能力を持った双子は未だ幼すぎる。役に立つのは十年後……いや、十五年程はかかるやもしれぬ。 この戦いは、勝てる戦いだ。男の眼は、その先を見つめていた。17

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「トゥデイ・イット・ビギンズ～偽史・キョート独立戦争記～」

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◆つづく◆

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◆◆◆◆◆　◆仏◆

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日本の中心に聳え立つ、雲突く摩天楼。未だ建設途上のバベルの塔は、ネオサイタマ経済の象徴めいて、高さ1.5kmを越え尚も伸び続ける。 その名は、カスミガセキ皇居ビル（仮）。完成時には新たな名前を与えられるだろう前人未到の高楼には、既に政府機能の一部が移転されている。18

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「エー、産業構造の異なるキョートは日本国との間に摩擦が絶えず」その一室では……ネオサイタマ知事が、部下からのレクチャーを受けている。「とりわけ、観光に依存するキョートにとって鎖国は死活問題となることから、特区としての自治権獲得のみならず……」「そのようなことはどうでもいい」19