一日目、逢魔時 - 今様に落つる怪奇譚

2015/04/05から2015/04/08までの、人間とあやかしの語らいの様子です。
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不老 蓮 @Lotus_frow

――夕刻。天や窓側からのみ光が差し込む、寺の中にて。 「……このあたりはあやかしはいないようですね」 完全に別の場所として隔離されているらしい。この寺の中は生物の侵入を許さない。僕たちを除いては――。

2015-04-05 22:47:06
白堀之水藤 @sirafji

「だな」 と適当に相槌を打ちつつ、煙管で壁を軽く叩く。 彼女の言った通り誰も居ない…ましてやこの寺の主さえいないのだから遠慮はいらない。 「調べるとはいったものの、どこから調べるかねぇ…」 ずるり、ずるぅり。ない足を這わせてぐるぐると。

2015-04-05 22:54:27
白堀之水藤 @sirafji

見た感じ特殊なものがあるわけでもない普通の寺。 生活痕があるわけでも、封印されてるだなんてのもない。 「…いっそのこと奥に入っちゃうかね」 誰も居ないんだし。そもそも初めに侵入しようとしていのだし。 「蛇の道は蛇に聞けってな―…と」 思い立ったが吉日。躊躇いもなく扉に手をかけた。

2015-04-05 22:58:28
不老 蓮 @Lotus_frow

作りは随分と古いものだが、長年積み重ねてきた良い意味での「古き良き」を感じさせてくれる。神聖さ、というよりも、犯しがたい領域とでも形容しようか。 「……奥に」 それに習うよう、扉に手をかける様を見上げながら、その奥を見据えた。

2015-04-05 23:01:40
不老 蓮 @Lotus_frow

――まず目に飛び込んできたのは、現代人には見慣れたコンクリート道路だった。 深く暗い夕刻の時分。そろっと扉の淵に手をかけながら顔を出す。目を丸くしながら周りを見渡す。『この寺』の近くにあった住宅街と似ているが、そもそも住宅街はどこも似通ったもの。見覚えは、ないけど。

2015-04-05 23:07:00
不老 蓮 @Lotus_frow

「……どうして……」 僕はワケが分からずかぶりを振る。扉を開けた先はまるで検討違いな場所だった。……不思議と人の気配はする、物音――というか、電車の音さえする。そろりと慎重に外へと出ると、建物は店の構えが多いことから、商店街でもあるらしい。

2015-04-05 23:09:52
白堀之水藤 @sirafji

どうみても寺の奥にあるはずのない景色。 間違って門でも開いたかと振り向けど、確かに開いたのは扉だ。 構造的には大問題。理由をつけるなら完全に怪異の世界。 巻き込むことはあれど、巻き込まれるのは初めてだ。 先に外へ出た彼女の後ろについて、ぽんと頭に手を乗せる。 「…離れるなよ」

2015-04-05 23:18:12
白堀之水藤 @sirafji

さて、どうしたものか。 今ここは、まさにこの時代の商店街。 「コンビニでもあれば、場所聞けるかもしれないな」 人がいるかは分からないが。そもそもあやかしから出る言葉ではない気もするが。

2015-04-05 23:18:14
不老 蓮 @Lotus_frow

――人。 「あ……」 ふと思い立ってスマホを取り出した。ごたごたのせいで忘れかけていた。 「……少なくとも、僕たちのいる世界のようですけど」 異世界のそれとは異なる。電波は通じるし、GPSも生きていた。 もしかしたらこれすら僕たちのいる世界を模倣しただけなのかもしれないけど。

2015-04-05 23:25:51
不老 蓮 @Lotus_frow

「……とりあえず、コンビニを探しましょうか」 黄泉比良坂のものを食せば、この世に帰ってこれないなんていうけれど。 少なくともここは違う、と思う。雰囲気やにおいは、慣れきった現代世界のそれだから。 「……何か、食べながら探りましょう」

2015-04-05 23:27:44
白堀之水藤 @sirafji

「ふぅん?」 彼女が取り出したスマホの画面を覗き込む。 浮遊霊だ何だはこういった電子画面を見ることが出来ないらしいが、己はそんなことはないようだ。 「そうだな。腹が減っては何とやら、と」 ずるり、ずるぅりとコンクリートの地を這う。

2015-04-05 23:38:08
白堀之水藤 @sirafji

にしてもこうやって己を認識してくれる人間と歩くなどなかったこと。 ちらりと、歩く彼女を見遣る。 話すことはおろか、触れることもできる。 「…ふふ」 嬉しくて少し笑みを零した。

2015-04-05 23:38:12
不老 蓮 @Lotus_frow

明るい画面には地図が示されていた。人知れぬ、都会人ならへんぴなところだと揶揄されそうな地域。近くにはコンビニのマークも示されていた。 隣を蛇行する白蛇様を青紫の目が見遣る。しかと認識できて、会話も出来る。

2015-04-06 00:22:21
不老 蓮 @Lotus_frow

僕にとってこれが日常だった。霊体とか、都市伝説に語られるものや、七不思議。そういったものとはよく話をしていた。そのお陰で、変人だと周りからは言われたものだけど、僕はさして気にしていない。

2015-04-06 00:22:29
不老 蓮 @Lotus_frow

「白堀さん、は何か食べたいものはありますか?」 その姿だとコンビニには入れないだろうから、僕が買ってきておこうか、と。

2015-04-06 00:22:43
白堀之水藤 @sirafji

「食べたいもの?…うーん、そうだな…」 そう言って己の掌を開き見る。親指を一つ中へ折って一言。 「とりあえず期間限定のめんたいチーズ味…あ、ポテチのな」 あとどこぞのスティック菓子のシーザーサラダ味だの何だのスナック菓子の名を出していく。 そうして五つ、折りきったところで。

2015-04-06 01:26:36
白堀之水藤 @sirafji

「あ、そういえば昨日新しく発売されたヤツがあったな、それと…」 片手では足りなかった。次々指折りつつ続ける其れ。 煙管が邪魔になれば、それを咥えてまで指折り続ける始末。

2015-04-06 01:27:18
不老 蓮 @Lotus_frow

「はぁ……」 随分俗世的なあやかしだ。悪さを働くものばかりかと思えば随分と世俗に染まっている。神格的な雰囲気を感じたのはどこへやら。指折りして数えるのを眺めて、苦笑いを浮かべてしまった。 僕らしくない。

2015-04-06 01:35:26
不老 蓮 @Lotus_frow

「どれだけいるか分からないので……その、あまり買えませんよ。僕もお金持ちではありませんので」 自分が食べる分もある。出来るだけムダ使いしたくない。高校生に何をどれだけ集ると仰るかこのあやかしさまは。 「3つまでで……お願いします」 深々と頭を下げる。

2015-04-06 01:35:50
白堀之水藤 @sirafji

その言葉に「えー」だなんて、まるで子供の様に頬を膨らます。 仕方なく折った指を立てたり折ったり繰り返してやっと三つに絞った。 「じゃあポテチとスティック菓子と酒…はムリか。珈琲でも紅茶でも飲み物」 本当はまだまだあるが、仕方がないか。

2015-04-06 01:47:24
白堀之水藤 @sirafji

実のところ堀で拾った小銭を袖に隠しているのだが、頂けるものなら遠慮なく頂く。 「…ふっふ、まぁ白蛇様に貢ぐと思え。金運だのいつかご利益あるぞ」 今真反対の事をさせようとしておいてそんな事。

2015-04-06 01:47:29
不老 蓮 @Lotus_frow

存外聞き分けの良いひと、もといあやかしで助かった。自我ばかりが強いものと違って、自制が聞く分御しやすい。といっても集められたあやかしたちは、皆々それくらいはクリアしているのやもしれない。 僕は深いため息をついて、飲み物とポテチ、スティック菓子を所望するあやかしの言葉を復唱した。

2015-04-06 01:57:17
不老 蓮 @Lotus_frow

無論、あやかしが金銭を持っているとは思っていなかったので、知らず知らずのおごりとなってしまったのだが、その点は必要経費だということになる。曰く『貢ぐ』ことというなら。 「神様の参拝ではないんですから……」 あと一応、巫ではあるけど。見習いだけど。

2015-04-06 01:59:22
不老 蓮 @Lotus_frow

そんなこんなを話しているうちに3本のラインが入った特徴的な色合いのコンビニが見えた。暗くなってくる時間もあいまって、若者が外でたむろしている様子が見えた。 「それでは、いってきますね」 つい、と視線を流し、そのままコンビニへと入っていく。

2015-04-06 02:00:38
白堀之水藤 @sirafji

「…一応予定枠には入ってるんだぞ」 と。もう百年単位で待ってるが音沙汰もないけど。 コンビニに向かう彼女の背にひらひらと手を振って、己は外で大人しく…待つはずがない。 とりあえず、たむろする若者の中心に入ってやる。

2015-04-06 02:09:29
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