「本格ミステリ」は虚辞
私は「本格ミステリ」なるものを知りません。それは虚辞ではないか、と10年以上言い続けています。同意してくれる人はほとんどいませんし、自称「本格ミステリファン」から謗られたこともあります。でも滑稽なことに、彼らの間には、「何が『本格ミステリ』であるか」の合意などないのです。
2015-04-11 00:01:51なお、誤解のないように補足しておくと、私は「本格ミステリ」の定義がないことを理由にそれが虚辞だと主張しているわけではありません……と、断っても誤解されてしまうんですよね、困ったことに。自然言語では定義なんかたいした意味をもたないのにねぇ。
2015-04-11 00:05:311カー『火刑法廷』、2米澤穂信『満願』、3チェスタトン『ブラウン神父の童心』、4友桐夏『裏窓クロニクル』、5スラデック『黒い霊気』、6友井羊(タイトル不詳)“青春洋菓子ミステリ”シリーズ、7カミ『エッフェル塔の潜水夫』、8深緑野分『オーブランの少女』(つづく)
2015-04-11 17:57:02さっき早坂吝の小説のタイトルを間違えて呟いたことに気づいたのでやり直し。 (つづき)9ディケンズ『荒涼館』、10早坂吝『⚪⚪⚪⚪⚪⚪⚪⚪殺人事件』、以上!
2015-04-11 19:47:57「で、これは何だ?」と聞かれそうな感じのリストですが、これは国内・海外の長篇ミステリないしミステリ短篇集のオールタイムベストテンです。ただし、海外ものは作者が死人かつ前世紀に読んだものに限り、国内ものは逆に作者が存命かつここ数年の間に読んだものに限りました。
2015-04-11 19:52:34私が各種ランキング企画に参加しない理由はいくつかあります。1つは「お呼びじゃないから」で、これは参加条件のあるランキング企画の大部分に該当します。もう1つは「他人の選んだものと合算されるから」で、これがダメだとランキング企画には参加できないのは自明でしょう。
2015-04-12 11:34:07日本ミステリ史を振り返ると「本格」という語はしばしば「本格派」という形で用いられ、ある時期までは主に対立軸の一方(他方には「変格派」「文学派」「社会派」など)を指すものでした。やがて「2つの対立する潮流」というモデルでミステリを捉えにくくなり、「本格」の用法は混乱していきます。
2015-04-12 12:04:40大まかにいえば、「本格」とはミステリのサブジャンルの1つであるという考え方と、ミステリを分類する1つの尺度であるという考え方があります。前者であれば「本格かつ警察小説」というのは矛盾でしょうし、後者であれば容認できるでしょう。さらに、「派閥としての『本格』」も残存しています。
2015-04-12 12:09:25目下、「『本格』とは何か?」という問題への意見の不一致は、単に「本格観の違い」というより、「本格」という語の用語法の混乱によるものが大きいというのが私の見立てです。
2015-04-12 12:13:13私は例の「本格ミステリ」ベスト選びには参加していませんが、昨日、勝手に選んだオールタイムベストテンで早坂吝の『⚪⚪⚪⚪⚪⚪⚪⚪殺人事件』を入れてホームズは1つも入れませんでした。早坂吝がベストテンに入る作家かどうかは異論もあるでしょうが、作家としてのホームズは論外でしょう。
2015-04-12 16:36:03もっとも、私はホームズの長篇を『密室の魔術師』と別名義の『シャーロッキアン殺人事件』しか読んでいませんので、他の作品(たとえば『死体置場行ロケット』)がオールタイムベスト級なのだ、と主張されたら、「ああ、そうですか」としか言えません。
2015-04-12 16:41:26ぼそっと独り言。「シャーロック・ホームズ? いや、悪くはないんですよ。でも、あれはヒーローの冒険物語ですから。海外のミステリ短篇集だけのベストテンでもライヴァルたちに押し出されてランクインは難しいかと。長篇・国内ものも込みだと……」
2015-04-12 23:14:06早坂吝のデビュー作のタイトルを『××××××××殺人事件』と誤ってツイートし、後で気づいて削除して『⚪⚪⚪⚪⚪⚪⚪⚪殺人事件』と直したのですが、あれ、『○○○○○○○○殺人事件』なんですね。なんだか恥の上塗り。
2015-04-13 00:28:30短篇集のベスト選びって難しいですよね。たとえば『人造美人』と『ボッコちゃん』みたいに一部重複がある場合をどうするのか、とか、花葬シリーズみたいにばらばらになっているのをどうするのか、とか。鮎川哲也なんて三番館シリーズ以外はほとんど初刊本とその後の版で収録作が違うのでは?
2015-04-13 00:34:53例の「本格ミステリ」のベスト選び企画でタイトルが挙げられた作品を眺めてみると、やっぱり「本格」はいらなかったんじゃないかと思います。このカオスからそれぞれの人の「本格観」なるものが見えてくるのでしょうか?
2015-04-13 08:13:04「本格」は虚辞、という持論を抜きにしても、誰が何を読んでいて何を読んでいないかがわからない以上、選ばれた作品リストから何かを掴みとるのは困難かと。「『樽』や『赤毛のレドメイン家』は当然読んでいるはず」という「常識」が通用する空間ではありません。
2015-04-13 08:21:16その昔、まだインターネット上にミステリ系サイトというゆるやかな繋がりがあった頃、200冊だったか300冊だったかタイトルを掲げて読んでいるか否かだけを調査する企画がありました。あれ、誰がやったんでしたっけ? としをとると記憶力が減退して名前が思い出せません。ええと……。
2015-04-13 08:31:47あ、そうそう、確かMystery Laboratoryのmatsuoさんという方でした。で、その企画(確か「本格ミステリファン度調査」)の結果をみると、別に面白かった純に点数をつけているわけでもないのに、それぞれの人の好みや読書傾向がよくわかって面白かったのを覚えています。
2015-04-13 08:38:27同じ頃、ペインキラーさんという方もいて(「本格ミステリファン度調査」もこの人がウェブ日記(死語)で書いた思いつきをもとにmatsuoさんが企画したものだったはず)、ミステリ系サイトを運営している人へのアンケートを実施しました。これも大変面白いものでした。
2015-04-13 08:44:32余談ですが、私はペインキラーさんが「本格、本格」と言うのに対して、「本格」は虚辞という持論をぶつけたところ、「でも、クイーンが本格だというのは否定できないでしょ?」と切り返されて咄嗟に反論できなかった思い出があります。もう一度お会いして思う存分ミステリ談義がしたいのですが……。
2015-04-13 08:50:45……ペインキラーさんは遠い世界へ旅立っていったので、もう二度とお会いする機会はないんでしょうね。今もお元気でしょうか? と、思い出に耽って脱線したところで、この話はおしまい。
2015-04-13 08:56:34