- res_kurusu_scp
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来栖
@res_kurusu_scp
「実は……私は財団所属前の記憶が曖昧なんです」来栖研究員は記憶の専門家である諸知博士にそう打ち明けた。「私の記憶では、私は苦学生でいつもコンビニの唐揚げ弁当を食べてストレスを発散していたはずなんですが、書類記録ではある慈善財団からの寄付で大学まで進学したと書かれてます」「ほう」
2015-04-10 09:52:40
来栖
@res_kurusu_scp
「で、私はそれもなんとなく記憶しているんです。だけど、この2つは相互に矛盾しています。どちらかが嘘で、どちらかが本当のはずなんです」「それを知ることは、あなたにとってけして得にはならないと思いますが」「それでも――自分が本当は何者で何をしていたのか、はっきりさせたいんです」
2015-04-10 09:52:52
来栖
@res_kurusu_scp
「それを知ることは、財団の利益を裏切ることになる可能性がありますよ? それでもなお、ですか?」「……記憶の定かでない人間が財団にいるよりはマシかと思って」「私は自分の家族の記憶なんか消してしまいましたよ。財団勤務には不必要なものでしたから」「えっ」
2015-04-10 09:57:18
来栖
@res_kurusu_scp
「あなたのその二重記憶も、財団にとっては不必要なものであるとお考えにはなりませんか?」「えっえっ」「もしよろしければ、私が適切な記憶処置をして差し上げますが」「やめてください!」
2015-04-10 10:01:17
来栖
@res_kurusu_scp
「でしょうね。あなたはそういうジレンマをうちに抱えた存在です。それがあなたが研究員として、倫理委員会エージェントとして活動する意欲につながっています。ですから、それを除去するわけにはいけません。ただ、そのようなことを申し出てきた記憶を操作させていただきます」
2015-04-10 10:01:35
来栖
@res_kurusu_scp
「ここではなにもなかった。あなたは私に相談しなかったし、これからも相談しない。いいですね?」いらえはなく、目もうつろなままの来栖研究員を見て、諸知博士は自分の記憶操作技術の整合性を再確認していた。
2015-04-10 10:02:01