掌小説語り~自作つぃのべる集19~

自作つぃのべるのまとめです。 2014年1月分。
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リュカ @ryuka511

若草に木漏れ日を編み込んで、あなたにセーターを編みましょう。柔らかな若草に、暖かな木漏れ日を編み込めば、冬の寒い夜も、雪の日もしのげるでしょう。この温もりとあなたへの想いが、どうか届きますように。 #twnovel

2014-01-02 00:14:37
リュカ @ryuka511

怪我をした妖精を見つけ富豪は家に連れ帰り暖炉の傍の鳥籠に入れ手当てした。美しい妖精を愛玩用に所有しようとしたが、回復した妖精は森に帰りたいと泣く。妖精の姿が醜い魔物へ変わるのを見た富豪は泣いて謝り鳥籠を開けた。元の姿に戻った妖精は富豪に感謝を告げ森へ飛び去った。 #twnovel

2014-01-02 22:42:27
リュカ @ryuka511

戦争で妹君を亡くされたご主人様は片身の人形である私を異国の戦地に連れて来て下さいました。ご主人様は国の為でなく、妹君の復讐の為戦っていらっしゃるのです。銃を握るご主人様の手は私を抱いていた妹君と同じ温かな手。妹君を追うつもりのご主人様をどなたか止めて下さいまし。 #twnovel

2014-01-03 22:01:13
リュカ @ryuka511

愛は要らぬと道化が騙り、男は要らぬと寡婦が謂ふ。地獄の沙汰も金次第とは、一体誰の台詞だったか。欲と偽りに満ちる世界で、口に出来ぬ愛を渇望し、決して手に入らぬ幸福を願う。愛なき世界で生きる為、涙隠してただ嗤う。 #twnovel

2014-01-04 21:45:10
リュカ @ryuka511

割り切れない感情を持て余して、男は酒場でグラスを煽った。あれは革命だ正義だと言い聞かせる。王を彼らの刃から守ったのは、臣下ではなく幼い王子だった。何も知らない王子はただ父親を守ろうとして、王と共に彼に殺された。あれで良かったんだ、呟きは酒場の喧騒に飲まれ消える。 #twnovel

2014-01-05 23:39:21
リュカ @ryuka511

運命に選ばれし少年は地上で生きられない。男性ではなくなり永遠の少年となった彼らは、どこかにあると言う神の庭でのみ生きられる。死の恐怖も病の苦しみも無く、親の顔も初恋の人も忘れ去り、神に愛された汚れなき心のまま、悠久に閉ざされた世界を与えられ、幸せに生きるそうだ。 #twnovel

2014-01-06 23:22:31
リュカ @ryuka511

長く続く戦に兵も民も疲弊していた。じりじりと後退する最前線。気付かないのは、王宮から命令する王ただ一人。戦地からの報告も、野心と虚栄心に満ちた王には弱気なものとしか響かない。後退が敗走に変わる時、兵も民も王を身限るだろう。地図から王国が一つ消えるまで、あと僅か。 #twnovel

2014-01-07 23:39:49
リュカ @ryuka511

血に濡れた聖者、神を裏切る行為、誰もが私をそう断罪するだろう。私の信仰生活もここで終わり。だが、私が罪に染まる事で救われる者がいるならば、それが私の愛する者ならば、たとえ想いが報われなくとも私は躊躇いなくこの手を血に染める。貴女は何も知らぬままで、どうか幸せに。 #twnovel

2014-01-08 23:12:52
リュカ @ryuka511

誰もいない屋敷で、忘れ去られた鳥籠の扉が決して開く事は無いと知り、諦めと共に鳥籠で夢に堕ちる雛鳥。甘い夢は絶望に閉ざされた現実を忘れさせる。どうせここで朽ちるなら、夢見たままで終わらせる事を幼い雛鳥は願った。 #twnovel

2014-01-09 21:37:47
リュカ @ryuka511

扉の裏から三歩目の、白い小石が目印だよ。そう言って君は消えてしまった。目印の小石は、誰かに蹴飛ばされて無くなってた。扉は開かない。あれからずっと小石を、君を探してる。扉の向こうに何があるの? 何よりも、僕だけに目印を教えてくれた理由を、僕は知らなくちゃいけない。 #twnovel

2014-01-10 22:39:27
リュカ @ryuka511

決して開かれ無いお屋敷のカーテンを少年は見上げる。病弱なお嬢様が一人ぼっちで寝ていると聞き少年は彼女の事を知りたいと願った。きっと仲良くなれると思うんだ。だがある日彼は見てしまう。お屋敷から出てくる小さな棺。名前すら知る事の出来なかった少女を悼み、少年は泣いた。 #twnovel

2014-01-11 23:30:43
リュカ @ryuka511

魔王軍を鼓舞し戦う副将軍に将軍は命じる。「撤退だ。」「何故です!?」「魔王様が勇者に討たれた。」「バカな!」闇が晴れ明るくなる空が事実を突き付けた。「魔王様の力で生まれた私は消える。だがお前は違う。呪縛から解かれた者は自身の道を生きろ、魔王様から最期の命令だ。」 #twnovel

2014-01-13 08:12:39
リュカ @ryuka511

流罪になる自分を見送る酔狂な者はいないだろう。納得するしか無い。男が船に乗り込もうとした時、駆けてくる女の姿があった。女は悲しげに風呂敷包みを差し出す。中には翡翠色の反物。「お達者で。」「お前との別れがこれ程寂しいとはな。」船が岸を離れても男は岸を見つめ続けた。 #twnovel

2014-01-14 00:11:47
リュカ @ryuka511

太陽の力を宿した鏡は真実を映す。魔物が城に紛れ込んだという噂に、臣達が止めるのも聞かず神殿から太陽の鏡を持ち出した王は仰天する。鏡に映るのは王冠を被った醜い魔物。「他人を信じぬ愚かな王よ。民にとっては我もお前も同じだと思わぬか?」ニタリと笑い魔物は王の腕を掴む。 #twnovel

2014-01-14 22:51:33
リュカ @ryuka511

貴方と並んで消費期限間近のパンをかじる。青く澄んだ水の空は雨になるでもなく、ただそこに水を湛えていた。この星は水に閉ざされている。水の上に何があるのか知りたいと思った。でもそこへ行こうとは思わない。ここが私達の始まりと終り、環になって還る場所。 #僕還オムニバス #twnovel

2014-01-16 00:24:08
リュカ @ryuka511

真っ赤に熟れ切って今にも弾けそうな果実を手に、君はくすくすと笑う。世界を浄化する為に作られた楽園で、この小さな果実は世界の罪と神の幻想を偏に抱いてきたのだ。楽園を守る僕と君も。そしてその重さに耐えられなくなった僕達は−−。「これ、潰したらどうなるかしらね?」 #twnovel

2014-01-17 00:32:48
リュカ @ryuka511

若かりし頃、想いを寄せた人がいた。更地となったここに昔、娼館があった。愛しい人をそこから救いたくて懸命に働いた。だが身請け金は若造に払える額ではなく。僕より年上であろうあの人はどうしているだろう。追憶の彼方、僕の告白をさらりとかわし笑う寂しげな顔が忘れられない。 #twnovel

2014-01-18 00:11:46
リュカ @ryuka511

一人前の竜使いとして認められるには、契約するドラゴンに一太刀あびせなければならない。長老は少年に示す。「これが汝のドラゴンだ。」泉に現れた竜が咆哮を上げる。彼の最初の斬撃は空を切り水飛沫をあげた。絶対に自分の力を認めてさせてやる、村の掟に潰えた友の仇を取る為に。 #twnovel

2014-01-18 22:48:51
リュカ @ryuka511

両親にも祖父母にも似ていない、そう言われ続け青年はDNA鑑定を依頼した。結果は彼を絶望させる。スポーツ選手、学者、芸術家、役者、あらゆる優れた遺伝子を寄せ集めて作られたのが彼だった。いっそ不義の子と言われた方が良かった。 #twnovel 俺の存在意義は。俺でなくてもいいのなら−

2014-01-20 00:32:22
リュカ @ryuka511

家柄、長男の責任、当たり前と思っていたそれが彼の登場で揺らぎ始めた。誰かに用意されていた私の人生。思い上がった私を変えたのは、紛れもなくあの悪党だ。飄々と悪事を働く彼を追い裁く事が私に求められた役割。私には彼の考える事が解る。邪魔な刑事達を撒き私は屋上へ駆けた。 #twnovel

2014-01-20 23:40:48
リュカ @ryuka511

「それで逃げおおせたつもりか?」探偵の声に怪盗は優雅に振り返る。「いいえ。貴方をお待ちしていたんです。」「私を?」怪訝な顔の探偵に怪盗は盗んだ宝石を差し出した。「これはお返ししようと思いまして。」「どういうつもりだ?」「私の欲しい物はこれではなかったのです。」 #twnovel

2014-01-22 00:04:44
リュカ @ryuka511

天窓から射す光が真っ二つに折られた残念な剣の姿を照らす。由緒ある剣は、その歴史を嘲笑するかのように壊されていた。だが、調査を依頼された学者は嘆く神官達を見回す。「これは偽物です。」「どういう事です?」「この剣はすり替えられています。追うべき謎が増えましたな。」 #twnovel

2014-01-29 23:19:51
リュカ @ryuka511

この島で、2人はアダムとイブになりたかったのだろうか。荒廃した本土と比べ緑と澄んだ水に包まれた離島は、だが彼らを受け入れなかったようだ。島には彼ら以外に誰もいない。2人は幸せだったのか。寄り添うように横たわる少年と少女の骸骨は、何も語らない。 #twnovel

2014-01-30 21:26:27
リュカ @ryuka511

天使の偶像を愛でる悪魔は狂おしく笑う。禁を破り愛し合った2人。だがその行く末がどちらかの消滅であると知った時、天使は躊躇い無く自分が消える事を選んだ。「どうか泣かないで。」天使の最期の言葉を守り悪魔は笑う。天使の残酷な優しさと、2人の愛を禁じた世界を呪いながら。 #twnovel

2014-01-31 22:59:26