ゴッドハンド・ザ・スモトリ #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ: 飲み屋街でくだをまく男、それはかつての最強ヨコヅナ、ゴッドハンドの変わり果てた姿だった。彼は強すぎるがゆえに支持を失い、卑劣な罠にかかって全てを失った……!折しもリキシ・リーグではマサカリファングを筆頭とするインディペンデント・スモトリ団体が理事長を襲撃)

2015-04-21 19:22:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(マサカリファングはドヒョー・リング上のキャデラックに理事長を縛り付け、全ネオサイタマ視聴者に向けて、最強スモトリ戦の開幕を宣言した。かつてのファンである少年ヤチタに叱責されたゴッドハンドは、己の中のオスモウに火をつけるか?だが彼の身柄を悪のヨロシサン製薬が狙っているのだった!)

2015-04-21 19:25:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スネークピット=サンがやられたと?」「は……ハイ」玉座じみて積み上げられたザブトンの上に座し、ドゲザするサラリマンを冷たく見据えるのは、金の渦巻き模様を刺繍した濃緑装束に身を包んだニンジャだ。サラリマンは額を畳に擦りつけた。「下請け業者にはケジメさせましたので……」 1

2015-04-21 19:37:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ケジメ・アンド・エクスキューズ。後半部が足らんぞ」ニンジャは無慈悲に言った。背後の高輝度モニタ群の逆光で、その顔は黒い影。だがその眼光はギラリとサラリマンを射抜いた。「アイエエエ!」サラリマンはにじり下がった。「そ、それが、ニンジャスレイヤーの関与がまず間違いなく……!」 2

2015-04-21 19:42:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤーだと!?」ニンジャはザブトンの上で身を乗り出し、呟いた。「チッ……奴はどこまで嗅ぎつけている……?嫌な空気です……」「社のサーバーを現在、セキュリティ部門に総ざらいさせております!」サラリマンはタタミに額を擦りつけた。彼とて上級社員!屈辱は極まる! 3

2015-04-21 19:46:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「後手後手ですか、貴方は!イヤーッ!」「アイエエエ!」サラリマンの頭の横にスリケンが突き刺さった。慈悲深い!「現にニンジャスレイヤーが出現したということは、アルティメット・オスモウ計画がどこまで把握されているか!それが肝要なのです!心血を注ぎなさい!」「アイエエエ!」 4

2015-04-21 19:56:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このニンジャは何者か?彼こそはサブジュゲイター……ヨロシサン製薬の重役にして、極めて恐るべきジツをバイオインストールされたニンジャである。「我々は様々な外的要因によって、やむなくオスモウ計画を中断せねばならなかった。しかし諸問題の交通整理が行われた今、計画は速やかに遂行される」5

2015-04-21 20:03:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

背後のモニタに「U究極相撲O」の極太文字が流れ、屈強な人体の三面図と、回転する二重螺旋が映し出された。二重螺旋は急拡大し、「横綱」「因子」の文字マーカーが踊った。マーカーで示された僅かな塩基は格子モデル上に並べなおされ、何かが構築されようとしている。一体これは? 6

2015-04-21 20:09:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

仮想データ上に組み立てられてゆく人型のシルエット……イケナイ!まるでモニタ自体が世界への冒涜を拒否するかのようにノイズを発し、計画図はブルースクリーンに秘された。サブジュゲイターは拳を握り込んだ。「「イヤーッ!」」タタミに二つの穴が空き、中から二人のニンジャが飛び出した。7

2015-04-21 20:21:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。サイアノシスです」「ドーモ。コラプサーです」二人の新ニンジャがサブジュゲイターにアイサツした。もちろん、ドゲザサラリマンに対する、虫を見るような数秒の蔑視は忘れない。「スネークピット=サンがやられたと?」「恐れながら彼奴は所詮、バイオ器官を部分移植した小物」 8

2015-04-21 20:24:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「言いましたね、コラプサー=サン。それは自信のあらわれと?」サブジュゲイターの目が光った。コラプサーは喉を鳴らした。「当然です」「我ら次世代バイオニンジャの確かな働きを見せましょう」サイアノシスが目を細めた。どちらのニンジャも、やはり逆光で顔は影だ。 9

2015-04-21 20:33:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ターン!フスマが開き、新たなバイオニンジャが現れた。腕を四本生やし、4つのカタナを帯びた恐るべきバイオニンジャである。「ドーモ。アサイラム=サン」「ドーモ」アサイラムはアイサツを返す。「その自信満々の精神状態を維持し、一刻も早くヨコヅナ確保に走ったらどうだ?」彼は辛辣だ。 10

2015-04-21 20:39:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フ」サイアノシスが笑い、コラプサーがサブジュゲイターを振り返る。サブジュゲイターは頷いた。「「ハイヨロコンデーッ!」」二人のバイオニンジャは腕組みするアサイラムの両脇を回転ジャンプですり抜けた。アサイラムの二刀の鍔がカチンと鳴った。すれ違いざまの瞬時の攻撃を防いだのだ。11

2015-04-21 20:44:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー……」アサイラムの眼差しは剣呑であった。「ただ排除するだけでは意味がない」サブジュゲイターは言った。「様々なバイオニンジャが彼と戦闘するのが良い。バイオニンジャの一つ一つの戦闘が、次の世代のバイオニンジャへの、ひいてはヨロシサン世界への礎なのです!」 12

2015-04-21 20:54:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウーッ……ヌウウウーッ……」ナムサン!ドージョーの隅に置かれた巨大な鉄鍋を見よ!換気穴めがけ噴出する湯気によって中は見えぬが、グツグツと煮えたぎる音と、耐え忍ぶ野太い声が微かに聴こえてくる!鍋の側には子供が控え、可燃性スクラップを鍋の火にくべ続ける! 14

2015-04-21 21:12:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アンタたち……エッ!」様子を見に立ち寄ったと思しき屋台店主がこのジゴクめいた光景に目をむいた。「なんだこれは!」「釜茹でだよ!」ヤチタ少年が振り返らずに答え、バンブーの筒に息を吹き込んで火力を強めた。「ウオオーッ!」湯気の中から声!店主は叫ぶ!「バカな!何をやってる!」15

2015-04-21 21:14:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「酒を、フーッ!酒を抜くんだってさ!フーッ!」ヤチタが息を吹き込みながら説明する。「だって殺人だぞ!」店主が咎めるが、鍋の中から恐ろしい声が返った。「グワーッ!……やめさせるな!」「フーッ!フーッ!」「グワーッ!」「どうすりゃいいんだ」店主は震えた。 16

2015-04-21 21:18:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フーッ!フーッ!」「グワーッ!助けてくれ!グワーッ!」「ほら!やめないと……」「いや、やめさせるな!」同じ声がすぐに咎めた。「俺の弱い心よ、汗となって出ていけ!」「フーッ!フーッ!」「グワーッ!」ヤチタは一心不乱である。鍋のタタミ数枚距離には大きなタライがあり、氷が満載だ。17

2015-04-21 21:26:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フーッ!フーッ!」「グワーッ!」「フーッ!フーッ!」「アバーッ!」SPLAAASH!熱湯を弾き、巨大な影が釜から飛び出した。ゴッドハンドだ!彼はタライの中を獣じみて叫びながら転がり、氷を貪った。「グワーッ!グワーッ!」「なんてこった」「来たか!おやじ」ゴッドハンドが睨んだ。18

2015-04-21 21:32:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ!」「そこにあるメモの具材を買ってこい!」「ナンデ!」「チャンコだ、おやじ」ゴッドハンドは荒い息を吐きながら言うと、再び釜のハシゴを上りにゆく。「続けろヤチタ。湯がぬるいぞ」「フーッ!フーッ!」SPLASH!「グワーッ!」「……わかった」店主はドージョーを走り出た。19

2015-04-21 21:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨコヅナはその神がかった強さゆえに極めてありがたいものであり、まさにその神人に面と向かって頼まれれば、当然快諾してしまうものである。「ヨコヅナだなんて……ヨコヅナだなんて」店主は息を切らせてコケシマートに走りながら夢うつつの心境だ。買い出しを終えて戻ると、彼は再び目をむいた。20

2015-04-21 21:43:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな!何を!」「おっさん手伝ってくれ」「何を」「ヨコヅナが、やれって言うから」ヤチタは寝かせたドラム缶と格闘していた。ドラム缶の進行方向……しかり、進行方向だ……には、股割り姿勢でうつ伏せになったゴッドハンドがいた。「ヌウウウーッ……硬い」「何を」「押し転がせ、おやじ」21

2015-04-21 21:49:57