呪い【ソウタレイ】

愛された男には「本当に望む願いだけ叶わない呪い」がかかり 愛した男には「愛した人が呪われて死んでしまう呪い」にかかった -この呪縛は、いつまで続くのか-
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@urabudou

「呪い」(ソウタレイ) 豪奢な柩の前で、誰かが泣いている。その後ろ姿を見て、俺はそっとその人に近付いた。 「……大丈夫ですか?」 その人は振り向く。目を真っ赤に泣きはらし、口を手で覆っていた。 ……綺麗な顔立ちをしている。だけど、男だ。

2015-04-13 21:42:30
@urabudou

「え、あの……」 「ああ、失礼。泣いているのを見かけて……つい、ね」 そう言い、ピンク色のチューリップを差し出す。 「えっと……?」 おろおろしながら、その人はチューリップを受け取ってくれた。 「俺の名前はソウタ。この国の王子だよ」 驚いた顔をする。 「お、王子様でしたか……!」

2015-04-13 21:45:16
@urabudou

「ああ、そんなかしこまらなくてもいい。そう堅っ苦しいのは苦手なんだ」 不思議そうな顔をし、涙を拭い下から見上げてくる。その手を取り、立ち上がらせた。 「君の名前は?」 「……レイ、です」 レイ。その名前には聞き覚えがあった。 「そっか……分かった、ありがとう」 「は、はあ」

2015-04-13 21:48:11
@urabudou

ーとある噂を聞いたことがある。「レイ」が愛した者は、呪われて死んでしまう……と。 だけど、この目の前の「レイ」が、噂の「レイ」とは限らない。 「……この柩には、誰が?」 その質問に、レイは少しだけ目を見開き、そして悲しそうに下唇を噛んだ。

2015-04-13 21:51:52
@urabudou

「……恋人、です……」 弱々しい声でそう答えたレイ。 「……そっか」 そして、その小さく華奢な身体を……包み込むように、抱きしめた。(男に小さいとか華奢って言っていいのか分からないけど) 「辛かったな」 ただ、そう言った。レイは抵抗する事も無く、俺に身体を委ねてくれた。

2015-04-13 21:54:28
@urabudou

「う、あ……」 俺の背中に手が回る。俺は強く、腕の中で震えている人を抱きしめた。 「うわあ……っ、あああ!」 声をあげ泣き始めたレイ。 レイは、それから長い間ずっと泣き続けていた。俺はその間、ずっと抱きしめていた。強く、強く……

2015-04-13 21:57:58
@urabudou

レイが泣きやんだところで、細心の注意をはらってそっと尋ねる。 「……その、こういう事って……よく?」 「……はい」 ……どうやら、噂の「レイ」で間違いないようだった。だけど、悪い事を聞いてしまったみたいで……レイは唇を噛み締め、必死に泣かないようにしている。

2015-04-14 22:31:50
@urabudou

「そうか……じゃあ、また会いに来ていいかな?」 「……は?」 レイは、呆気にとられたような……すこし、驚きが混じった顔でこちらを見てきた。 「また、来るよ。ここに」 え、あの、でも……そう言っているレイに背中を向け、俺は城へと帰っていった。 少しだけ、足取りが軽かった。

2015-04-14 22:34:37
@urabudou

名声、地位、富、容姿。俺は全てを手に入れていた。 だけど……本当に望む願いだけ、叶えられない呪いにかかってしまった。 そう、例えば……レイの心、とかね。

2015-04-22 21:24:58
@urabudou

今日も棺が増えていて、墓場ではレイの泣き声が響いている。 いつものようにチューリップを差し出し、レイを抱きしめる。慰める。 墓は、レイの元恋人の人達で埋め尽くされていた(という程ではないが、そこそこ多い)から……この辺りはレイ以外あまり訪れる事はない。俺にとって好都合だった。

2015-04-22 21:27:28
@urabudou

だけど……君は、どれだけ恋人が死んでも、また新たな恋をするな。 君が恋をする度に、愛した人は死んでいってるよな? その度に、俺が慰めているよな…… 何で、そいつらなんだ? 何で……俺じゃないんだ?

2015-04-22 21:29:25
@urabudou

「そろそろいい加減……もう諦めたら?」 そう言い俺は鎌を持つ。そして、レイの新たな恋人の元へ…… 「君が、ナナセかな?」 「ええ、そうよ……貴方は?」 その答えを聞き、ニコリと微笑み……その鎌をそいつ目掛けて思いっきり振りおろした。

2015-04-22 21:31:45
@urabudou

レイ。君が望むハッピーエンドは……どれだけ望んだって叶わないさ。 ねえ……もう気付いてるかな?この、作られた「不幸」に…… ああ、誰がそんな事を? 「……いやいや、呪いのせいだよね?あっはははははは!」

2015-04-22 21:33:42
@urabudou

そうして、俺の手は赤く染まる。狂った愛の鎖が俺の心を縛り、締め付け……そして壊していった。 「な、なせ……?」 「……レイ」 ああ、来たね……俺の心を壊す原因を作った、張本人が。 「……これ、貴方が……?」 「そうだと言ったら?」 笑顔のまま言い切る。

2015-04-22 21:37:14
@urabudou

「……い、今までの……全部……!」 「俺の仕業だよ」 絶望的な表情を見せるレイ。だけど、この呪いを解くのなら……1つだけ方法がある。 「それで、俺を殺しなよ」 レイの足元にある、血のついた鎌を指さす。 「呪いを解きたいのなら、君の手で……終わらせなよ」

2015-04-22 21:39:15
@urabudou

レイは、足元の鎌を見下ろす。 「さあ……早く」 そして、しゃがんで手に取る。 「さあ」 持ち上げた。 「さあ……!」 俺は両手を広げる。 レイは、片手を振り上げる。その手には、鎌が振り上げられていた。 「これで呪いが解けるな」

2015-04-22 21:42:34
@urabudou

【後日談?】 豪華な棺の前で僕は笑う。 「あーあ……やっぱりダメだったね」 呪いは、やっぱり消えなかった。 僕が「愛した」人は……「呪われ」て死んじゃうってね?

2015-04-22 21:46:42