ゴッドハンド・ザ・スモトリ #4

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リョウゴク・コロシアム、リョウゴク・ストリート。その夜は一種異様なアトモスフィアであった。当然である。その夜開かれるのは生半可なバショ(注:オスモウにおけるトーナメントの事)ではない。街全体が荒天について口々に囁き合う。最強とは?それは真実か否か?オスモウとは? 1

2015-04-24 22:21:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リョウゴク駅構内では、殺気だった十代の若者達が一触即発の状況にあった。ひいきのスモトリのマワシのレプリカをバギーパンツの上から腰に帯びたスモトリギャング達が、実践知識派のスモトリ・スカラーズや犬儒的スモトリストらと睨み合い、手に持ったバールやバットを見せつける。 2

2015-04-24 22:26:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それらを多人数で警戒するのは地域のマッポ達だ。わずかでも物理的衝突が起これば、すぐさま少年たちは暴動を引き起こすだろう。火種が生じるが先か、マッポが囲んで棒で叩くが先か。予断を許さぬ状況である。彼らに怯えた一瞥を向け、そでん店主はヤチタ少年の手を引き、しめやかに改札に向かう。 3

2015-04-24 22:31:32
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「財布スられンなよ」ヤチタは店主に言った。「早くチケットくれよ!」「いいから!」店主は歩きながら振り返った。「まとめて持っておくのがいいんだ。なくすだろう」「こっちのセリフだよ、おっさん!」「いいか?感謝しなさいよ。俺がどれだけ町内のコネクションを使ってだねえ、今日の券を!」 4

2015-04-24 22:33:40
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「ドッソイ!スミマセン」「アイエッ!」店主は列になって歩く着流し姿のスモトリに目を丸くした。彼はヤチタに囁いた。「スゴイ!本物のスモトリだぞ。街じゅうを歩いてやがる。出場しない奴らだよなあ、さすがに」「急ごうよ、おっさん」ヤチタは店主の袖を引っ張った。「早くコロシアムに!」 5

2015-04-24 22:37:31
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彼らはオスモウ・チョコ屋台や熊手店、イカ焼きが列をなす目抜き通りを突き進んだ。上空では複数のマグロツェッペリンがホロビジョンによって「最強横綱戦争」のオスモウ・フォント漢字を夜空に焼き付け、時折思い出したようにオスモウ・バルーンの束が音たてて空中に放たれるのだった。 6

2015-04-24 22:42:15
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正面口付近は無数の巨大な大漁旗で彩られている。マクゴザン、カンバヤシ、スピードバッファローといったリキシ・リーグの花形スモトリの大漁旗は勿論、とげとげしく不穏なアトモスフィアを放つ邪悪な大漁旗も数多い。マサカリファングを筆頭とする反乱軍の旗印だ。コワイ!「実際戦争だ」と店主。 7

2015-04-24 22:47:51
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「リキシ・リーグを倒して、自らのリーグを中心とする新たなスモトリ世界を創り上げようとするだなんて!野望もいいところだ。そう思わんか、ヤチタ?」店主はかなり興奮しており、口数が多い。「マサカリファングは一体何者なんだ?インディーズ団体の頭目とは聞いていたが、非常に強そうだ」 8

2015-04-24 22:53:40
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「おんなじさ!」ヤチタが言った。「どいつも見てくれだけだよ。本当のスモトリってのは、」「シーッ!」店主がヤチタを黙らせる。胸にマサカリファングのエンブレムを刺青したスモトリが彼らをじっと睨んでいた。危険だ。二人はそそくさと正面口に入り、チケットを切って、弁当と半券を受け取った。9

2015-04-24 22:59:26
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「一体どうなっちまうんだ」席に座ると、店主は興奮を通り越し、緊張に青ざめた。この夜、リーグが日本一の覇を競う。正規のリキシ・リーグ。そして反乱首謀団体ブルタル・ヨコヅナ・アーミー。ストロング・オックス・ボックス。ドサンコのレジェンド・オブ・スモトリ。だが二人だけは知っている!10

2015-04-24 23:06:56
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天井からは「満員御礼」の巨大掛け軸。理事長はドヒョー隅の磔台に縛り付けられているが、興行的に大成功の戦争となった。彼の顔は土気色であり、今回のトーナメントが実際彼の仕組んだ出来レースではない事を物語っていた。「こんな中で、そのう……」店主が囁くと、今度はヤチタが黙らせた。11

2015-04-24 23:11:26
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ファオー……荘厳な笙リード音。そしてオコト。そしてパイロ!KABOOOOM!「アイエエエエ!」ヤチタたちの席はドヒョーにかなり近く、熱気にあてられた理事長の悲鳴がはっきりと聞こえた。アワレ!照明が落ちる!「「「ワオオオーッ!」」」爆発じみた歓声が悲鳴をかき消す! 12

2015-04-24 23:14:49
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「ドーモ、紳士淑女諸君!」マイク音声がコロシアムに響き渡った。ゴゴゴゴ……ものものしい軋み音と共に、舟型ゴンドラがゆっくりと天井からドヒョーに降りて来た。ナムサン……そこに乗る巨大な存在こそ、首謀者マサカリファングである!「マサカリファングです!」KABOOOOOM! 13

2015-04-24 23:19:43
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「「「ワオオオーッ!」」」「最強それは何か!」マサカリファングはマイクに向かって吠えた。巨大液晶モニタに、人類進化樹形図が仰々しく映り、そののち米俵をピラミッド状に積み上げる古代スモトリのアニメーションに切り替わった。「最強とは力!オスモウとは力である。儀礼?ファックオフ!」14

2015-04-24 23:21:17
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「「「BOOOO!」」」観客が一丸となってブーイングを飛ばす!「ひどすぎる」隣の席の老人が震えながら泣いていた。「なんて悪魔だ」「かわいそうに」店主が呟いた。「俺も勿論そうだが、もっと昔からオスモウを楽しみにしてるやつはいっぱいいるんだ。ご老人にもな。リスペクトが大事なのに」15

2015-04-24 23:22:47
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「許さんぞ!マサカリファング=サン!」土俵に飛び上がったのは、リキシ・リーグの超新星、カンバヤシだ。マサカリファングにつめより、人差し指を突きつける。「貴様のような奴がドヒョーに上がること自体が冒涜……」「ドッソイ!」「アバーッ!」マサカリファングの張り手!カンバヤシが沈む!16

2015-04-24 23:27:26
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「カ、カンバヤシ=サン!」続いてドヒョーに上がったのはマクゴザンだ!普段はいがみ合う彼らであったが、敵の敵は味方ともいう。彼は動かなくなったカンバヤシに屈み込み、鎮痛げに首を振った。ゴヨキキ数人が慌ててドヒョーに上がり、カンバヤシを引きずってゆく。17

2015-04-24 23:32:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハーッハハハハ!弱体者!」マサカリファングが笑った。「これがヌルいリキシ・リーグの象徴的崩壊のさまよ。目に焼き付けるがいい、惰弱なオスモウ・ファンども!」「「「BOOOOO!BOOOOO!」」」「なんて張り手だ」店主が呻いた。「張り手一つで、カンバヤシを。奴は相当強い……」18

2015-04-24 23:33:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

今やドヒョー上にはマサカリファングの盟友であるグレートホーンとストロングホールドが出現していた。セコンドには手下のスモトリ戦士たちが!店主が呻いた。「カンバヤシは若武者と言われていて、今後のリキシ・リーグをしょって立つ存在だったんだ。それを……」「同じさ」ヤチタは鼻息荒い。19

2015-04-24 23:36:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「リキシ・リーグはゴッドハンドを追い出したんだ……!」「ヤチタ……」店主は言葉を失う。少年の目には涙が光っていた。だが少年は自ら涙を拭った。「わかってる。それはヨコヅナの問題なんだ。ヨコヅナが敗けて、ヨコヅナが逃げたんだ。だけどヨコヅナは」「シーッ!」店主が黙らせた。 20

2015-04-24 23:40:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さあて、この場を掌握しているのは我々だという事を忘れるな」マサカリファングはマクゴザンに言い放った。「これは表向き、トーナメント形式ではあるが、対戦相手は……これで決める!」KABOOOOM!「地獄の砂時計でな!」KABOOOOM!天井から鎖で吊られた鉄の砂時計が降下! 21

2015-04-24 23:43:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だあれは!とんでもないデカさだ」店主がオペラグラスで確認する。「砂の落ち方で順番を決めるのか?まるでウラナイだが」「俺は誰の挑戦でも受ける」マクゴザンは処刑台に上る戦士めいて言った。反乱軍のスモトリ達は下卑た笑いで応えた。マサカリファングは言った。「よかろう!では、何?」22

2015-04-24 23:48:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤチタは、息を呑んだ。ザリザリザリ……BGMがノイズに変わり、消えた。無音だ。人々のざわつき。ひっきりなしに噴きあがっていたパイロが停止する。「何だ?」「ハッキングでは?」「何だと」囁き合うスモトリ達。「……」マサカリファングは花道のひとつを冷たく睨んだ。観客が息を呑んだ。23

2015-04-24 23:52:35
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