スガシカオは如何にして10年選手のミュージシャンとなったか

@tricken が、スガシカオの職業的に尊敬できる部分についてクローズアップし、「自分のコアとなる強みを一貫して売り続けつつ、数年単位で新しい課題の為の行動を始める」という多重的スタンスを再評価してみました。  ちなみにtrickenは、この観点をもってスガシカオを「第1期」から「第4期(現在)」に区分しています。第5期はFUNK三部作終了後かなあ。
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そんじゃ、ちょっとだけスガシカオについて語る。

2010-12-22 01:42:02
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スガシカオは30歳でデビューした男なのだが、今13年目に突入している。当時は「アルバム三枚で終わり」ともっぱらの下馬評だった。ただでさえデビューの遅い、兄ちゃんとおっさんの間。

2010-12-22 01:44:00
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それが、何度かの紆余曲折を経つつも、デビュー当時から「アルバムを出せば必ずトップ10に入るミュージシャン」になった。

2010-12-22 01:44:09
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実際、「アルバムトップ10に毎回必ず入る」という記録は、すでにギネスブックに登録申請が出されているらしい。世界でも珍しい記録であるとのこと。まあ音楽CD業界自体が斜陽な中どれだけ意味があるかはさておき、1997年当時からそうなのだから、実力派の証明といってもいいと思う。

2010-12-22 01:45:15
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スガシカオは1997年にデビューした。しかし、1990年ごろにはすでに「プロになる」ことを諦めていたという。浜崎貴司率いるFlying Kidsが、「日本でファンク音楽を演る」ことを、当時の菅止戈男(本名)にとって考え得る限り最高の形で実現させてしまったからだ。

2010-12-22 01:47:29
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つまり、菅止戈男(本名)には、80年代にアマチュアのワシントンゴーゴーファンクバンド「ホワイトマラカススペシャルバンド」に所属していた頃から97年デビューに至るまで、「音楽で食える判断が付くまで、音楽プロとしてやる意味はない」という判断基準を常に抱えていたと言える。

2010-12-22 01:49:29
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そして彼は企画会社のサラリーマンとなり、それなりにデキる男として仕事を続けた。ところが「係長になっても給料がほとんど増えない」という単純な理由で、100万の貯金を携えて仕事を辞めた。

2010-12-22 01:51:37
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そんな折りに作っていたデモ音源が、これである。>「Affair」http://www.nicovideo.jp/watch/sm1899069

2010-12-22 01:52:07
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結局のところ、菅止戈男(本名)は、当時山崎まさよしと杏子の二人を抱えた、現オフィス・オーガスタの社長である森川に「奇跡的に」拾われたことで、キティ・レコードからデビューすることができた。ただ、菅止戈男が売り込もうとする時の音楽の型は、そんな幸運とは別に、ある程度固まっていた。

2010-12-22 01:54:12
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スガシカオが狙っていたその音楽コンセプトとは、「アコースティックギター1本で、ファンクを組み立てる」ということである。

2010-12-22 01:55:10
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ファンク音楽とは、60年代にJames Brownが生み出し、Sly & The Family StoneGCSP-Funk軍団が育て、そしてR&Bの大きなうねりの中に消えていったジャンルである。80年代にその文脈を活かしていた実力はPrinceくらいだった。

2010-12-22 01:57:25
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日本では山下達郎米米クラブ大澤誉志幸岡村靖幸なども、ファンク的な要素を受け継いだ音楽を多く発表していた。しかし、「アコースティック・ギターで」「日本語として無理のないファンクをやる」、という方向性については、スガシカオが始めるまで、誰も本格的には取り組んでいなかった。

2010-12-22 01:59:08
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スガシカオの弾き語り本を買うとわかるのだが、音楽のストロークがかなり難しい。16ビートを前提としたストロークテンション・コードの多用変ロ長調……誰が聞いても「おやっ」と思うような仕掛けに満ちている。

2010-12-22 02:00:45
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また、小節間の音の推移も、四小節のようには聴こえないような繋ぎをしているなど、音楽オタク的な技巧が多く取り込まれている。こうした「ギター×弾き語り」の下に、打込み音で作られたキックとベースがねじ込まれる。ここに、60-70'sのファンク&ソウル的な「黒さ」を挿入している。

2010-12-22 02:02:53
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こうしたことをしたからといって、「売れる」とは限らない。しかし、スガシカオは最初から「日本ではおそらく自分にしかできない音楽」の方向性を、デビュー数年前から模索した末に、実際3枚目のアルバムまでにその全てをうちはなつつもりで音楽を作り続けていた。それは間違いの無いことだと思う。

2010-12-22 02:04:28
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4枚目のアルバムから数年間、スガシカオは迷走を始めた。これは自分が「迷走」だと思っているというより、本人とその周辺がそういう判断を下しているということだが、「日本でアコギファンクを売る」という明確な方向性を達成した後、どんなステップへ進もうか、決断をしかねていた状況だっただろう。

2010-12-22 02:06:09
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実際、スガシカオはB面ベストアルバム『Sugarless』を発表してから暫く、「このままミュージシャンとして終わってしまうのではないか」というオーラを漂わせていた。本人が山梨県の知合いの別荘に山ごもりをして、『SMILE』というアルバムを作るまで、その不安感は消えていなかった。

2010-12-22 02:08:02
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『SMILE』は『4Flusher』に続く5枚目のオリジナルアルバムである。「アコギでファンクをやる」という方向性の後に打ち出された方向性は、おそらく「Protoolsで誰でもプロ並みの音楽を作れる現代音楽産業において、スガにしかできない音づくりを探求する」という方向性だった。

2010-12-22 02:09:54
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つまり、3枚目で達成された目標の次には、「現代の産業的要請を踏まえつつ、過去の商業的達成とできるだけ矛盾しない新たな課題設定を行う」ということに、スガシカオは一定の決断を下せた、そして迷わず先に進めた、ということだ。

2010-12-22 02:11:26
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6枚目のオリジナルアルバム『TIME』は、4枚目の『4Flusher』では巧く行かなかったことの雪辱戦だった。「一人打込みで何でもセルフプロデュースしてきたスガシカオの密室ファンクを、開かれたバンドサウンドへと再編曲してゆく」という第二期課題。そしてそれはTIMEで達成された。

2010-12-22 02:13:05
tricken(Tw以外の居場所は固定参照) @tricken

『4Flusher』が(個々の曲の完成度が素晴らしいにもかかわらず)アルバムとして失敗したのは、一言でいえば「船頭多くして船山に登る」だった。バンドメンバー、エンジニア、スガそれぞれの目標設定がうまく噛み合わなかった。『TIME』では、スガ自身が迷っていなかった為に、巧く行った。

2010-12-22 02:15:26
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しかし『TIME』は、「スガのデモ音源をバンドサウンドとしてウェルメイドに再編する」というコンセプトをあまりにもうまく達成してしまったがゆえに、別の問題も顕にした。一言で言えば、「スガの本気は、重たるく、聴衆へとメジャーに響かない」ということだった。

2010-12-22 02:17:02
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そこでスガシカオが次に定めた課題は、おそらくこうだ:「10周年へ向けて、自分はあらゆる手を使って、自分の音楽を聴いたことのない人、ファンクなんかに全然興味のない人にも届くような音のつくり方を模索する」。

2010-12-22 02:18:15
tricken(Tw以外の居場所は固定参照) @tricken

7枚目のオリジナルアルバム『PARADE』へ向けて、スガシカオはKAT-TUNへの歌詞提供で「スガとしてはありえない歌詞」を書き、TV出演もし、『プロフェッショナル 仕事の流儀』でヴォーカルの仕事を獲り、紅白に出た。それは、それまでの6枚とは明らかに違う「開かれた行動」だった。

2010-12-22 02:20:27