2015年5月1日

「本を書くこと」について

結城浩先生の連ツイをまとめました。
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結城浩 @hyuki

「本を書くこと」について(連ツイ)。

2015-05-01 16:48:11
結城浩 @hyuki

今日の午前中、ある方とツイートのやりとりをしていました。いまから書くことはそのツイートのやりとりをもとにしていますが、特にその相手についての話ではありません。ので、特にリンク張ったりはしません。結城のツイートをベースに連ツイしていきたいと思います。内容は「本を書くこと」について。

2015-05-01 16:50:07
結城浩 @hyuki

まず最初に意識合わせのために書いておきますが、「本を書く」というのは現代ではそれほど大きな意味を持つものではありません。つまり、本を書く人が偉いとか、本を書く人が賢いとか、本を書くのは専門家だとか、そういう意味は(ゼロではないけれど)薄いものだと思っています。その一方で、

2015-05-01 16:51:40
結城浩 @hyuki

その一方で、知識や知恵の象徴的存在として、あるいはコンパクトでまとまったメッセージの伝達手段として「本」が特別な意味を持つ(ように感じる)のも事実ではあります。知的生活を営む人にとってみれば「本」という単語はそれだけであれこれ語りたくなる要素なのは確かなことですね。

2015-05-01 16:53:20
結城浩 @hyuki

さて。ある方から「本を書くようになりたいのですが、どれだけの分量を書いてどの出版社に持って行けばいいでしょうか」という趣旨の質問をいただきました。※質問の内容は結城がすべて書き直しています。 それに対して、結城はこう答えました。

2015-05-01 16:55:58
結城浩 @hyuki

あなたが適切と思うだけの分量を書いて、適切と思う方法で公開なさるのがいいと思います。あなたの質問なさったことは、本の内容や対象読者によってまったく異なる答えとなる話です。出版社に持っていくかどうかも一つの判断です。無料でブログ記事にすることや、電子書籍で自己出版することも。

2015-05-01 16:58:05
結城浩 @hyuki

…このような答えは、正直であり、正論であるとは思いますが、あまり質問者の役に立つものでもないですね。結城のこの答えで「なるほど」と思えるような方ならば、あのような質問はしないでしょうから(質問者をおとしめているわけではありません)。実際、質問者を満足させることはできませんでした。

2015-05-01 16:59:44
結城浩 @hyuki

結城は次にこのような質問をします。あなたは、誰かに向けて本を書きたいのでしょうか。だとしたら、 1.その誰かとはどんな人のことですか? 2.書きたい本はどんな本ですか? この二つの質問に、あなたが答えるところからすべては始まります。

2015-05-01 17:01:43
結城浩 @hyuki

この質問にどう答えるか。どこにも正解はありません。また、何が正解だと確信持って判断できる人もいません。ただし、この質問自体は誠実なものであり、また「本を書く」上では極めて本質的なものである…結城はそのように思っています。 ※本日のリアルタイムなやりとりとは文章表現を変えています。

2015-05-01 17:03:17
結城浩 @hyuki

「誰が読む本を書くのか」「どういう内容の本を書くのか」に答えられない場合、結城は次の問いかけをします。本来は先に問いかけるべき問いだけど、相手に失礼な質問なので、後回しするのが普通になります。 0. あなたは「本を書くような人になりたい」のか「本を書きたい」のか、どちらですか。

2015-05-01 17:06:00
結城浩 @hyuki

結城は「本を書きたい」人に対してアドバイスをすることはできますが、「本を書くような人になりたい」人に対してはあまり有効なアドバイスをすることはできません。「本を書くような人になりたい」というのは「本を書くこと」とは直接関係がないからです。プライドやコンプレックスや人間関係の世界。

2015-05-01 17:08:09
結城浩 @hyuki

現代の日本で「本を書く」というのは特権的な行為ではありませんし、お金持ちしかできない行為でもありません。ある程度の分量の文章を書くことができ、少しネットやコンピュータのことがわかっていれば、すぐに本を出版することができます。具体的にはアマゾンのKDPというサービスを使えばいい。

2015-05-01 17:10:13
結城浩 @hyuki

アマゾンが好きじゃない人は楽天koboのライティングライフというサービスもある。「本」という形式にこだわらなければ、PDFを作ってWebに乗せればいい。お金を取りたいなら note . mu でも使えばいい。だから、そういう「本を出す」ことに関して障害はあまりないのが現代である。

2015-05-01 17:12:33
結城浩 @hyuki

では、障害はどこにあるのか。多くの障害、本を書いたり、本を出したりするときの障害は、自分自身にあるのがふつうです。これは誰かをdisっているとか、煽っているとかではなく、結城が自分自身を振り返って思うこと。障害は自分の中にあるのです。

2015-05-01 17:14:06
結城浩 @hyuki

順を追って話しましょう。「本を書く」というのは、複雑に絡み合った大きな構造物を作る作業です。機械的にやればいいというものではないし、時間掛ければいいというものでもない。時間に対してリニアに進捗が出るわけでもない。そもそもどういう範囲で何を描くか、から決めなくてはいけない。

2015-05-01 17:15:29
結城浩 @hyuki

それは建築物と似ている。昨日の今日で家が建つわけではない。準備と時間が必要です。それは交響楽と似ている。昨日なかった音楽が今日突然生まれるわけではない。それは編み物にも、マラソンにも、チーム運営にも、交通整理にも、油絵描きにも、似ている。そういうものです。

2015-05-01 17:17:15
結城浩 @hyuki

こうすれば絶対に「いい本が書ける」という方法など誰も知らない。知ってる人はいるのかもしれないが、結城は知らない。

2015-05-01 17:18:36
結城浩 @hyuki

今回うまくいった方法が、次の本でもうまくいくとは限らない。魔法の呪文は毎回発見しなくてはならないのである。

2015-05-01 17:19:03
結城浩 @hyuki

連ツイの冒頭で「本を書くのは特別なことじゃない」と言ってるのに、なぜアツく語っているかというと、結城は「本を書く」ことを特別なことだと思っているからである。でも、

2015-05-01 17:20:11
結城浩 @hyuki

でもそれは、結城がえらいとか、だれそれがえらいとか、著者に対する属人的な賞賛の意味で「特別」だといっているのではない。それとはまったく逆である。本を読者に届けることは非常に重要なことであると思っているのだ。著者に注目するのではなく、読者に注目する。そこがキモである。

2015-05-01 17:21:30
結城浩 @hyuki

知的生活者の多くは「本」に対して思い入れがある。一冊や二冊、「自分の人生を変えた本」というものがあるはずだ。自分の部屋で本を読みながら震えたり、涙を流したり、「うわっ、うわっ」と言葉を失ったり。本に向かってそういう経験を持った人は多いはずだ。それが、本の力である。

2015-05-01 17:22:51
結城浩 @hyuki

だから結城は、本を書くという仕事が好きなのだ。結城も、震えたり涙を流したりした経験はたくさんある。本はすばらしい。それこそ、時を越えて私たちを魅了する。それが本である。だとしたら、「本を書く」ことに対して襟を正したくなるのは当然のことではないだろうか。

2015-05-01 17:24:20
結城浩 @hyuki

結城は自分のメールマガジンでも、著作でも、繰り返し繰り返し《読者のことを考える》という原則を語ってきました。結城のツイートを読んでいる人にはミミタコだと思う。でも結城は何度でも言う。《読者のことを考える》というのは本を書く最高の原則である。なぜなら、これは愛の原則だからだ。

2015-05-01 17:26:07
結城浩 @hyuki

本を書くなら、読者のことを考える。商売するのなら、顧客のことを考える。サービス提供するなら、ユーザのことを考える。恋愛するなら、相手のことを考える。愛の原則は万能である。そしてほんとうに有効だ。

2015-05-01 17:27:08
結城浩 @hyuki

「結城浩は著者である」は弾さんがツイートした警句である。何のもじりか分かりますよね。うまいなあ (^^) そしてうれしい。著者ならば、読者のことを考えて書く。これが原則である。愛の原則に従って行動している限り、オオハズレはない。オオハズレがあるとすれば純粋に能力不足の部分である。

2015-05-01 17:29:03
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