「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #7

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」#7
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(前回までのあらすじ:アンタイニンジャ・ウィルス「タケウチ」に冒された師匠ドラゴン・ゲンドーソーを救いたいニンジャスレイヤーは、ヨロシサン製薬のトップシークレットを盗みたいナンシー・リーと共同戦線を張り、ヨロシサンの第1ユタンポ・プラントに隠された秘密施設へと潜入した。)
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(施設を警備する数百人規模のクローンヤクザY-12軍団、油断ならぬトラップの数々、フォレスト・サワタリ率いるサヴァイヴァー・ドージョーのノトーリアス、そしてソウカイ・シックスゲイツの刺客ダイダロスを破った2人は、トップシークレットまで後一歩のところへと迫ったのだった……)
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ナンシーがパスワードを解除すると同時に、掛け軸の吊られていた壁が突然ぐるりと回転し、2人をアドミニストレータ室へといざなった。あらゆる無駄が削ぎ落とされた、8畳ほどの小さな真っ白い部屋だ。正面の壁には、黒いオブツダンを思わせる最新鋭のUNIXメインフレームが埋め込まれている。
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ニンジャスレイヤーは部屋の天井四隅に配備されたマニピュレータと、その先端に備わった最先端兵器ZAP銃の銃口を見て、スリケンを投擲すべきか迷った。ナンシーがそれを制する。「手を出さないで。多分、メインフレームと連動しているわ。破壊すれば、メインフレームがアクセスを受け付けなくなる」
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「つまり?」四挺のZAP銃に会話まで監視されている気分になり、ニンジャスレイヤーは小声でナンシーに問うた。 「きっと、このUNIXのログインに失敗した者を、容赦なくZAPするためだけに存在するのよ。もし殺す気ならば、この隠し扉が回転した時点で私たちは灰になっていた筈、でしょう?」
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「なるほど……」ニンジャスレイヤーはごくりと生唾を飲んだ。2人の動きに反応して、高級スシハンド・マシーンを思わせる精密マニピュレータが小刻みに動いている。もしZAP銃が発射されたら、自分はニンジャ反射神経で直撃を免れるかもしれない。だが、ナンシーまで助けることは、できるだろうか。
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「さあ、最後の大仕事よ…!」ナンシーは腰にガンベルト状に吊ったザゼンドリンクを5本ほど飲み干してから、UNIXメインフレームの前に立った。いまやニンジャスレイヤーもナンシーも、互いを戦士として尊重し、また相手の力量を信頼している。どちらか片方が欠けても、計画は失敗していただろう。
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ナンシーは迷い無く、自らの右耳の斜め上にインプラントされたバイオLAN端子と、真っ白い壁に埋め込まれたLAN端子を、スゴイテック社製のとても細いLANケーブルで直結した。IRCコトダマ空間に強制ログインが行われ、ナンシーの視界が飛ぶ。崩れる体をフジキドが支えて、床に横たえる。
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フジキドはモニタに流れる文字列を見た。ナンシーがアドミン権限でログインを果たそうとしているらしい。『1分以内にパスを入力してください。ヒントは【タタフータリタンタカタタザンタ】です』とシステムメッセージ。「ハッカーでない己には、皆目解らぬ。ハンズアップだ。頼んだぞナンシー=サン」
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さらに、衝撃的なシステムメッセージがフジキドの目に飛び込む…『パスワードを間違うとZAPされて死にます。1分以内にパスワードが入力されなかった場合、およびパスワードを間違えた場合、トップシークレットを守るためにこの施設は爆発します。ヨロシク・オネガイシマス』…と。ナムアミダブツ!
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そこは数百畳はある広大な和室だった。ナンシーは鯉が刺繍された青いキモノを着て、タタミに正座している。目の前には紙と筆とスズリ。左手には椅子に座るようにディスプレイされた鎧と、その背中に「1分以内に暗号」「間違うと死ぬ」と書かれた二本のノボリ。パスワードをショドーせよという意味か。
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「このパスワードがタヌキという訳ね」 長かった。アラキ・ウェイ=サンのダイイング・メッセージから、ようやくここまで辿り着いたのだ。ナンシーは心の中で独りごちながら、スズリをする。間違うと死ぬ……彼女の手がじっとり汗ばむ。これまでのどんな修羅場と比べても、ずば抜けて高い緊張感だ。
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ナンシーは、右手の小さなタンスに置かれた黄金ブッダ時計を見やる。制限時間はあと50秒。これを超過すると、セキュリティシステムがハッキングを警戒し、自動的にプラントは大爆発を起こすのだ。ナンシーはタイプミスをしないよう、深呼吸を行った。ザゼンドリンクが回り、筋肉が弛緩し始めた。
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ナンシーは筆を墨に浸し、落ち着いてタヌキの「タ」をショドーする。…その時、遥か前方のカモイに掛けられた額が彼女の目に飛び込んだ。その額には毛筆で【タタフータリタンタカタタザンタ】と、謎めいたショドーが! これは何? ナンシーの心臓を、不安という鉤爪が鷲づかみにした! 残り45秒!
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ナンシーは筆を止め、半紙をDELETEし、精神をリラックスさせるためにスズリをすり直す。本当に、パスワードはタヌキなの? そうよ、間違いはない筈! でも、あの謎のショドーは何? ナンシーの自信が揺らぎ始める。「あと30秒ですよ」という、黄金ブッダ時計の無表情な電子音声が聞こえた。
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「ナンシー=サン、時間が無いぞ……!」リアルスペースでは、痙攣するナンシーの体をニンジャスレイヤーが抱き抱えていた。壁に埋め込まれた大型の赤色LEDが、サイバースペース内の黄金ブッダ時計と同期して、残り時間30秒を告げる。部屋の天井四隅に備わったZAP銃が、2人に狙いを定めた。
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ニンジャスレイヤーの腕の中でナンシーは白目を向き、防波堤に打ち上げられたマグロのように体をびくつかせる。頼まれていた通り、フジキドは彼女の腰に吊られたマルチタッパーの中からザゼンタブレットを取り出し、ピンク色の舌の上にそっと置いた。これ以外に、何の手助けもできない事が歯痒かった。
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ZAP銃を破壊したりログインに失敗したりすれば、プラントは大爆発する。ユタンポエキスに引火すれば、周囲数キロが吹き飛ぶだろう。何の罪もない労働者数万人が死ぬのだ。ヨロシサン製薬は確かに卑劣だが、予想できなかった訳ではない。自分とダークニンジャの間の相違点をフジキドは自問自答した。
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第1ユタンポ・プラント内全域に警報が鳴り響く。廊下という廊下、会議室という会議室で非常ボンボリが赤く回転する。プラント内でユタンポ作りに精を出す深夜労働者たちも一瞬手を止め、うつろな目でぼんやりと施設内を見渡した。そして自分達には関係のないことだろうと悟り、また作業に戻った。
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「アイエエエエ! アイエエエエ!」警報の意味を悟ったガガイケ専務は、血相を変えながら非常脱出ボタンを押す。重役室の床がパカリと開き、ピラミッドの秘密ナナメ通路めいた脱出ルートが露になる。ガガイケは猛スピードでナナメ通路を滑り、地下100m地点に築かれたシェルターへと間一髪で退避。
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「アイエエエエ! ソウカイヤめ、ぜんぜん役に立たないじゃないか! ああ、ちくしょう! 私の勤務時間中に何でこんなことになるんだ! 爆発したら委員会にケジメかセプクを迫られるじゃないか! 私は結局、オイラン出張サービスも受けてないんだ! 誰彼構わずファックしたい気持ちだ!」
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月23日
「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #1 http://togetter.com/li/78144
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