ア・ニンジャ・サドン・ライズ・アンド・スクイーズ#7(前半)

ニンジャが出て搾る!
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@nezumi_a

ア・ニンジャ・サドン・ライズ・アンド・スクイーズ#7

2015-05-19 19:07:45
@nezumi_a

トコロザワピラーの中層階に位置する広大なセレモニールームは、大勢のニンジャ、そしてクローンヤクザが集まっていた。ナムサン、邪悪なるニンジャ組織、ソウカイ・シンジケートの新たな企みの幕開けであろうか。01

2015-05-19 19:10:18
@nezumi_a

上座の玉座にて寛ぐは黄金メンポにアルマーニのスーツ姿の男。彼の名はラオモト・カン。日本経済を影から操る暗黒メガコーポの重役も震え上がる、恐るべきニンジャ組織、ソウカイ・シンジケートの絶対君主だ。その背後には横断幕が張られ、「暑気払い」のショドーがしたためられていた。02

2015-05-19 19:13:17
@nezumi_a

本日はソウカイ・シンジケートが予定している二大作戦、サカイエサン・トーフ工場襲撃作戦とドラゴンドージョー放火作戦の士気鼓舞の為の宴会なのだ。ニンジャは各々の所属や序列に従って並んで座っており、各自の前には料理の並んだパーソナルチャブが置かれている。03

2015-05-19 19:16:28
@nezumi_a

オイランがサケを注ぎ、時には嬌声をあげニンジャにしなだれる。ニンジャたちはリラックスしたムードで談笑していた。ラオモトのタタミ玉座からほど近い位置に、苦虫を噛み潰した表情を浮かべるヘルカイトの姿があった。その片目はバイオ包帯で隠されている。04

2015-05-19 19:19:07
@nezumi_a

スクイーズのレモン打撃による負傷だ。失明の恐れは無かったが、完治までには日を要するという診断だ。「おおかた手柄を独り占めにしようとして、返り討ちにあったのだろう」その包帯を見て、ヒュージシュリケンがせせら笑う。05

2015-05-19 19:22:07
@nezumi_a

ヘルカイトは手柄を独占する為にノロシすら使わなかった。しかし肝心のスクイーズは下水道に落ち、追跡を諦めざるを得なかった。スクイーズの情報を持ち帰ったヘルカイトは、便宜上斥候の任を果たした形となったが、大事な作戦の前に負傷したことでマイナス査定となった。06

2015-05-19 19:25:10
@nezumi_a

「レモンを搾るニンジャだと?そんなふざけた奴を仕留められないどころか、手傷を負わされオメオメ帰ってくるとは」ヒュージシュリケンは愉快そうにサケを呷る。「斥候ニンジャは情報伝達が第一の任務。それを忘れ、手柄を焦ってカラテに溺れる。インガオホーも当然だ」バンディットも頷く。07

2015-05-19 19:28:19
@nezumi_a

他のシックスゲイツは無関心を決め込んでいるが、ヘルカイトは内心でハラワタが煮え繰り返っていた。もしもスクイーズに憑依しているニンジャソウルが名前持ちのアーチ級だった場合、スカウトにせよ討伐にせよ、評価ポイントは実際大きいだろう。08

2015-05-19 19:31:14
@nezumi_a

逃げた魚は大きく育つ。ミヤモト・マサシのコトワザを思い出し、後悔に歯を食いしばる。料理にも手をつける気にもならない。宴会は進み、マイコのラインダンスやカラテ自慢たちの一発芸が行われているが、ヘルカイトが退出しようと箸を置いた。その時、チャブの前に人影が現れた。09

2015-05-19 19:34:07
@nezumi_a

「ドーモ、ヘルカイト=サン!」ボーンダック、アルバトロス、ホーネットの三人だ。彼らは同じ斥候部門のアンダーニンジャであり、ヘルカイトにオシャクをしに現れたのだ。オシャクとは日本古来の風習で、格下の者が目上の者に己の覚えを良くしてもらう為に行う作法である。10

2015-05-19 19:37:16
@nezumi_a

「ドーゾ」「ドーモ」オチョコにオーガニックサケ「ダイギンジョ」が注がれる。「オットトト」サケを飲み干し、次のオシャクを受ける。こういう時、ヘルカイトは己の地位を自覚する。彼らは直接の部下というわけではないが、名を覚え、取るに足らない仕事を押し付けるくらいの関係ではある。11

2015-05-19 19:40:10
@nezumi_a

(だが、こういうのも悪い気はしない)ヘルカイトが物思いに耽っていると、チャブの前に巨大な人影が現れた。「ドーモ」一升瓶を持ったアースクエイクがドッカリと腰を下ろした。彼はユノミをヘルカイトに押し付け、サケを注ぎながら言った。「オマエはシックスゲイツとしての自覚が足りない」12

2015-05-19 19:43:14
@nezumi_a

ヘルカイトは適当に相槌を打ちながらアースクエイクに返杯する。「斥候という仕事柄、単独行動が多いのは判る。だが、連携を考えぬ独断専行は単なる愚行にすぎん」アースクエイクは酒が入ると説教癖が出るらしい。外見にそぐわぬ知性派であることも意外だったが、この姿は更に意外だった。13

2015-05-19 19:46:15
@nezumi_a

「俺達はボスの為に働く一個の機械でなくてはならない。協力してミッションコンプリートする事を忘れるな」自分たちはラオモト=サンに忠誠を誓った身、アースクエイクの言うことは正論だ。(ニンジャソウル憑依者となっても、組織の歯車である事からは逃げられないっていうのか)14

2015-05-19 19:49:07
@nezumi_a

ヘルカイトは奥歯を噛み、決意を燃やす。(おのれスクイーズ=サン、次に会う機会があれば必ず殺してやる……!)と、その時だ。15

2015-05-19 19:52:06
@nezumi_a

スターン!鋼鉄フスマが開き、一人のニンジャが姿を現した。宴会場は水を打ったように静まり、全ての視線がそのニンジャに集まった。その濃紺のニンジャは静かにアイサツした。「ドーモ、ソウカイヤの皆さん。スクイーズです」そのアイサツに宴会場の空気が一変した。16

2015-05-19 19:55:08
@nezumi_a

「キサマ!どうやってここに!?」ヘルカイトが包帯を毟り取り、立ち上がって叫ぶ。「ワシが招待した」ラオモトが立ち上がる。「ムハハハハハ!ドーモ!スクイーズ=サン!待っておったぞ!」暴君は哄笑し、尊大にアイサツした。「殺せ!」ヒュージシュリケンが簡潔に命じた! 17

2015-05-19 19:58:09
@nezumi_a

「「「「「「ザッケンナコラー!」」」」」」末席に座っていたクローンヤクザが一斉にチャカガンを抜いた!100を越える銃口がスクイーズに狙いを定める!「アーレー!」オイランたちは恐慌に陥り、バラバラの方向に走り出した!「レモン・シボリマスネ」18

2015-05-19 20:01:19
@nezumi_a

「イヤーッ!」スクイーズは片足を高く振り上げ、タタミを踏みしめた!ZOOM!ホールが震動し、スクイーズを中心に同心円状にタタミが捲れ飛ぶ!そこにチャカガンの一斉砲火!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!19

2015-05-19 20:04:21
@nezumi_a

激しい銃撃によって強化タタミはショージ戸めいて容易く引き裂かれた!しかしその先にスクイーズの姿はない。どこに?上だ!ヤクザ防御陣の上を金の光を放ちながらスクイーズが舞う!「「「「「「「チェラッコラー!」」」」」」クローンヤクザが一斉にチャカガンを掲げる!20

2015-05-19 20:07:48
@nezumi_a

スクイーズは体操選手めいてその身を捻り、「……イヤーッ!」空中で回転しながら放射状に無数のスリケンを発射!こ、これはニンジャスレイヤーが用いる奥義ヘルタツマキ!?否!スリケンではない!スプリンクラーめいて投射されたのはレモン果汁!その狙いはクローンヤクザのチャブだ!21

2015-05-19 20:11:27
@nezumi_a

レモン果汁小鉢に命中!「「「「「「「アッコラー!?」」」」」」」クローンヤクザは己のチャブを見て怯んだ。スクイーズはその隙をついて着地!「イヤーッ!」決断的スプリント開始!一瞬にしてクローンヤクザ陣を抜いた!疾走に銃創から滴る鮮血が、空中に赤い筋を描く。22

2015-05-19 20:14:15
@nezumi_a

「あれがレモンカラテか」上座で様子を見ていたアースクエイクが呟いた。「ふざけた野郎だ」ヒュージシュリケンがダイスリケンを構える。優れたニンジャ動体視力の持ち主である彼らには、スクイーズが放った物の正体が見えているのだ。23

2015-05-19 20:17:08
@nezumi_a

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ホール中盤席にいたアンダーニンジャ達が、テキサスの荒野を走るバッファローの大群めいた勢いで次々に襲い掛かる!たちどころに十重二十重の包囲が築かれる。何たる絶望的な状況か!24

2015-05-19 20:20:39