鈴木智彦氏がハマるヤクザBL、ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』の世界

フリーライター、鈴木智彦氏が絶賛する、ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』ガイド。
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鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

【我が家を訪れる任侠団体関係者のみなさまにお願い】 ・服装はカジュアルで、しかし、長袖長ズボンでいらして下さい。 ・路上で話す際「組」「親分」「若頭」「若い衆」などは、それぞれ会社、社長、番頭、社員などに置き換えて下さい。 ・ミスタードーナツの手土産は4~5個で十分足ります。

2015-05-18 23:54:28
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

ヨネダコウさんの『囀る鳥は羽ばたかない』…もうすぐ3巻が発売か。楽しみだな。長かったですよね。待ちに待ったですよ。やっとですよ。文芸、ノンフィクション、マンガとたくさんの書籍がある中、一番楽しみにしてました。ということでなぜ俺がこの作品にはまったか、その理由を書いてみます。

2015-05-19 06:33:14
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

俺はもう20年以上、ヤクザの取材をしているライターです。正直、飽きてしまっている部分もあって、少しでも新鮮な切り口を探すため、ヤクザを題材にしている作品はどんなものでも観る・読むようにしています。きっかけはTwitterをはじめ「ヤクザ」であれこれ検索するようになったことでした。

2015-05-19 06:34:49
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

そこで俺はBL、男同士の恋愛とセックスをテーマにした作品群の中にヤクザやマフィアが手堅いジャンルとして存在していることを初めて知ります。想像の斜め上なんてもんじゃなかった。ゲイ・タウンとして有名な新宿歌舞伎町で、俺の作っていたヤクザ雑誌を売ってるのを発見したとき以上の衝撃でした。

2015-05-19 06:36:51
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

その驚きをTwitterに書いたところ、ありがたいことにファンの人たちがあれこれオススメを教えてくれました。30冊は越えてないと思うけど、まぁ、そのくらいはいっき読みした。もちろんヤクザBLばかりをです。その中の作品のひとつがヨネダコウさんの『囀る鳥は羽ばたかない』だったんです。

2015-05-19 06:38:43
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

とにかく『囀る鳥は羽ばたかない』はヤクザ劇として面白いんです。だから俺はBLを読めたんだろうし、目から鱗が数百枚なんてもんじゃない程、気づきを与えてくれた。あ、すいません。きっと20枚くらいです。でも突出して多い。俺はヤクザに飽きてるとの同様、ヤクザものにも飽きている!!!

2015-05-19 07:08:16
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

今日もヨネダコウさんの『囀る鳥は羽ばたかない』の単行本第三巻発売を勝手に祝し、少々書いてみます。ただ俺は批評家ではないし、BLを読み込んだわけでもないのでファンの戯れ言です。それでもヤクザを取材している身だから分かった、分かりやすかった部分はあるはず。まぁその程度ということで。

2015-05-20 07:04:17
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

俺だから分かること…少し前、大量にミスタードーナツを手土産に持ってきた組長のことをツイートしました。ミスドは暴走族世代のヤクザのアイコンなんです。当時、24時間営業の店はここだけで、溜まり場になったり事件が起きたりした。それだけで五十代の組長を暗喩する。ほぼ伝わらないと思うけど。

2015-05-20 07:05:12
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

そんな感じで、俺目線だと理解しやすいことがあるんじゃないかと。ヨネダさんは無意識なのかもしれない。でもたぶんヨネダさんが資料を読んで、ヤクザの本質を突いています。当人は否定するでしょうけど、感性があるとしか思えない。偶然でも才能と思います。話まとまらんな。俺の思い入れが深すぎて。

2015-05-20 07:07:45
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

なにから書こう…普段ヤクザものをあれこれ読んでる身には、『囀る~』という作品に触れて初めて分かったことと、改めて確認したことの2つがあります。前者は『囀る~』だけが特別というわけではないかもしれない。ヤクザBLという作品群全体に共通することかもしれません。そのへんは許して下さい。

2015-05-20 07:12:05
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

編集目線でいえばBLは男同士の恋愛とセックスがテーマです。現状、多くの作品はそこに特化してる。コミックを最初に読んで気付いたのが、ヤクザという設定と恋愛の相性の良さ・相乗効果でした。ヤクザという職業は抗争、銃撃戦、殺人といった非日常が、日本でありながら無理なく落とし込めます。

2015-05-20 07:14:17
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

拳銃を持っている人間なぞ日本では警察や麻取(ヨネダさんんも『NightS』で取り上げている)や自衛隊しかいない。それらはすべて公務員、権力側の人間で、ヤクザだけが民間人…おまけに明確に反社会的です。つまりヤクザ設定はそれだけで舞台が異常になり、立ち位置を非日常的に転換させます。

2015-05-20 07:16:00
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

これじゃあヤクザ物語の考察みたいだな。ちょいと脱線多めになるかもですが、俺は本来ヤクザクラスタ所属なのでご寛恕を。頭煮えてるかもです。すまん。

2015-05-20 07:18:23
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

書き手だと『凶健』や『広島ヤクザ伝』を執筆した本堂淳一郎(柳橋)さんが公募小説の下読みをしてた。話しを聞くと多くの作品にヤクザが、安直に登場するらしい。非日常狙いです。ちなみに柳橋さんは双葉の出身で麻雀放浪記の阿佐田哲也の担当です。同窓の猪野健二さんとは犬猿の仲でした。余談です。

2015-05-20 07:19:17
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

話を戻そう…一般人には伺い知れない非日常世界で、ヤクザは生存を懸けて殺し合う。ヤクザは殺してなんぼです。現実社会でも殺さない・殺されないヤクザに存在価値はない。断言していい。言い換えると舞台が異常で、登場人物もキチガイなので「クサいセリフがばっちりはまる」ということを意味します。

2015-05-20 07:22:46
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

俺が取材したある九州ヤクザの組長は、抗争で自分が銃殺した対立組織の親分の息子を引き取り、養子にして育てます。二十歳の誕生日、組長は息子を実の父親の墓前に連れ出し、その時使った拳銃を渡した後、「お前の親父を殺したのは俺だ。これで撃った。お前には俺を殺す権利がある」と告白します。

2015-05-20 07:23:49
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

突飛すぎますよね。狂ってる。でも殺った・殺られたという世界に生きているヤクザだから、この言い分は当人の中で正当なんです。舞台が異常という前提を受け入れれば、この自己陶酔は他人の胆にも落ちる。凄みも感じる。一般の社会で生きる我々がキチガイになり得る瞬間はなにか。それは恋愛でしょう。

2015-05-20 07:25:43
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

人間がキチガイになる瞬間は、クサいセリフがびしっときまります。ヤクザと色恋をこんな形でミックスした物語は、既存の、つまりノーマルな恋愛・セックス感ではあり得なかった。ヤクザ劇は量産されすぎ、マンネリの極地です。今年だけでも沢山のヤクザ(を題材にした)映画が公開されています。

2015-05-20 07:27:30
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

新しいヤクザ映画は違いを出そうと力んでいます。俺の感性が錆び付いてる自覚あるけど『龍三と7人の子分たち』が限度でした。そのいずれより『囀る~』は新しかった。いずれ一般作品も『囀る』の要素を取り込んでくると思います。そんなにうまくは出来ないでしょうが、未踏の地はここしかない。

2015-05-20 07:32:12
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

俺は既存のヤクザ劇に挿入された恋バナが嫌いです。女はスパイス程度でいい。姐さんと、恋人と、ホステスと恋に落ちたヤクザの描写は、取って付けたようなぎこちなさが拭えない。極悪人のストーリーで、そこだけ人間らしく愛を唱えてどうすんだとも思う。むりくり入れ込むから本編のテンポも狂う。

2015-05-20 07:36:22
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

ヤクザはいびつに歪んだ男社会です。本来、女の出る幕はない。主軸は親と子、兄貴と舎弟(または五分)の盃…疑似血縁関係です。そして親分は絶対的な存在、神に等しい。でも親分の女房は姐さんと呼びおふくろではない。盃もありません。正妻と2号は同じ姐さんで、子分や舎弟からみると同列です。

2015-05-20 07:38:02
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

ヤクザの日常に女の役割はゼロです。組事務所には男しかいないし、抗争でも女を狙うことはないし、彼らが別荘や大学と呼ぶ刑務所にも女はいない。現実に姐さんの出来不出来は、ヤクザの出世に関わる一大事なんですが、映画・極妻のように「あほんだら、撃てるもんなら、撃ってみぃ」はあり得えません。

2015-05-20 07:39:23
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

だからヤクザ劇には、基本的に色恋の話がうまくはまらないんです。どうしてもとってつけたサイドストーリーになる。ヤクザに話が寄りすぎかも。いったりきたりで申し訳ない。まぁいい。早く三巻届かないかな。仕事に影響しますねぇ。ほんと。連投すると原稿が140字の段落続きになっちゃうし。

2015-05-20 07:41:39
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

もちろん『囀る鳥は羽ばたかない』はBLで、恋とセックスがメイン・ディッシュです。ヤクザ要素はあくまでパセリでしかない。ヤクザ劇の「後付け感満載な恋バナ」が嫌いな俺は、『囀る~』をスルリと読みました。あれ?なんだ?理由がよく分からなくて、俺はもしかしてホモなのかと疑ったほどです。

2015-05-20 07:44:25
鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO @yonakiishi

度重なる脱線を反省し、俺のホモ体験は後述するとして、『囀る~』のヤクザ濃度が薄いからではなさそうでした。読み返してもそれがおまけにしか過ぎないBLの中で、見事な現代ヤクザ物語になっている。おかしな部分はあります。でもそれは一般のマンガも同じだし、フィクションではナンセンスです。

2015-05-20 07:45:54
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