ストレイトロード:ルート140(12周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今後も1日1組つぶやきますのでお楽しみに。 今回は551~600を束ねています。 それ以前のまとめは作者おすすめ欄か下記URLからどうぞ。 続きを読む
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

雨上がりの朝に庭を歩いたら、湿った土の匂いが分からないほど冷たい風が吹いた。私は振り返ってホテルの窓を仰いだ。一つだけ半分開いたカーテンにしがみつく藍の姿が見える。声は降ってこなかったが、足を一歩進めただけで風が強くなったからそれが意思だろう。雨の夜に何をしていたかは探るな、と。

2015-03-25 19:11:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、551。雨。 こっそり何かしても、本当はこっそりになってないことは案外多い。

2015-03-25 19:11:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

平面の多い岩肌はかつてここに来た人々が重機と火薬で山を削っていった痕跡だという。急斜面というよりほとんど崖に等しい。「何のために岩を切ったの?」「麓の町に石造りの建物がありますよね」「そういえばあの岩肌と同じ色かも」本来の姿を忘れた山では今、彼らの子孫が崖登りの競争に興じている。

2015-03-26 19:08:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、552。岩肌。 藍とゼファールの旅は様々な光景との出会いでもある。

2015-03-26 19:09:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

真新しい建物の前に人だかりができていた。何かの施設が完成した記念に木を植えていると藍が教えてくれた。群集の向こう側に横たわる若木が彼女には何故か見えるらしい。「あれ、やったことある?」「はい。遠い昔に」ただ植えるだけの催しではない。そこに集った人々の抱く思いも共に埋められるのだ。

2015-03-27 20:13:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、553。植える。

2015-03-27 20:13:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が時折見せる魔法のような現象は未だ何の説明も解明もされていない。各地を脅かす怪物との関連を含め研究が続いているという。ある図書館で藍が何か探す間に私が文献を読んでいると、急に膝を叩かれた。「こんなの信じないで。変な影響受けられたらわたしが困るの」藍は涼しい顔で端末を取り上げた。

2015-03-28 21:48:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、554。影響。 良いか悪いか、そんなの主観だよ。

2015-03-28 21:48:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

街を荒らす怪物を捕獲したはいいが、軍隊が用意した檻には収まらないことが判明した。「もし入ってたって何日もつか」縄で縛られる様子を隣で見ていた藍が首を振る。「絶対に檻を破ろうとするし、仲間を呼んで壊してもらうこともあるのよ」彼らも囚われた仲間に手を貸すらしい。私達がそうするように。

2015-03-29 19:34:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、555。檻。 たとえばトラックの荷台に積んだとして、そこでエンドマークが出るわけじゃない。戦いの主役が代わるだけ。 世界はそういう物語の連鎖でできている。

2015-03-29 19:34:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私が公園の雑草をむしる間、藍は無断で仕事を放棄し、石碑に刻まれた文字の解読に挑んでいた。見たところ現代人の言語なので後は藍の語彙力次第、と見て放置していると、急に襟首を掴まれた。「これ作った人を探してきて」碑文から省かれた話はいずれ消える。その前に人が知る生の話を聴きたいという。

2015-03-30 19:02:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、556。解読。 アルバイトの後の予定が決まった。 普段からこんな勉強熱心ならきっとゼファールも苦労はしてない。

2015-03-30 19:03:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

橋の中央付近で車を停め、強い風を浴びながら谷底の景色を眺める。針葉樹の森に埋もれる尖塔が見えた。「あのお屋敷には吸血鬼が眠ってる、ってどこかで読んだ気がする」興味があるのだろうか。「あるから行かない」藍は断言した。「わたしだったらあなたみたいな人に起こされたいとは絶対思わないし」

2015-03-31 19:02:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、557。吸血鬼。 姿を見せないからこそ巡らせる思いもある。

2015-03-31 19:02:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「嘘と冗談の区別もつかないの?」藍が携帯端末を通して誰かに怒っている。相手が青空の向こうではなくこの場にいたら、車の屋根に堂々と座る彼女を見上げて平謝りしたのだろうか。クレームの内容はもちろん、それが本気の怒りなのかわざわざ演技をしているのか、発端を知らない私には区別がつかない。

2015-04-01 19:04:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、558。区別。 わけのわからないことを延々としゃべる声がたくさん積み重なって、この世界はできている。

2015-04-01 19:04:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

村の集会所で出会った老人は姿勢を見ただけで軍隊の出だと判った。子供が怪物の懐に飛び込む真似を快く思わないのもその立場故か。「何の権力もないお前に何ができる?」振り回す杖が藍に当たりそうで当たらない。「あら、いろいろできると思いますけど」無邪気に笑う魔女は権力を踏み台にする子供だ。

2015-04-02 19:39:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、559。権力。 大人の都合は山の斜面と同じだ。 風が駆け降りる道筋の部品でしかない。

2015-04-02 19:40:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

市場の一角で藍が足を止め、骨董品の店を眺めている。気になる逸品でも見つけたかと訊ねようとしたら、突然彼女に足を踏まれた。「何よ。こういうの見ちゃいけない?」私が口を開く前に睨まれた。「意外なところに手がかりがあるんだから」それは洒落た戸棚のことを示すのか。その上の首飾りだろうか。

2015-04-03 19:13:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、560。骨董品。 何かが人を惹き付ける世界。

2015-04-03 19:13:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が指差した建物は飴のように溶けかけた形の屋根をそのまま残していた。「熱線を浴びた跡だって」戦争を契機に人が定住し、交通の要所として栄えた街は、やがてただの通過点になった。しかし大陸を駆け抜ける鉄道を怪物が破壊したために活気を取り戻した。思いがけない再興の象徴がその屋根だという。

2015-04-04 20:54:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、561。栄える。 移り変わる世界は時に、終わりが終わりにならないこともある。

2015-04-04 20:56:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

湖面を進み始めた船を間もなく強い雨風が揺らした。柱にしがみつく藍へ甲板から避難するよう言うと、髪の房に頬を殴られた。「これでいいの」藍は黒雲と山々の境目を睨んだ。「今の天気なら、上からは襲われないから」まさか怪物対策として自ら時化を呼んだのか。「大丈夫、沈まない程度にしてるから」

2015-04-05 23:02:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、562。時化。 荒れる天気は得意技?

2015-04-05 23:02:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「また失敗」藍は引き裂かれた縄の切れ端を後ろに投げ捨てた。「罠に気づくの早すぎ。見た目は完璧だし匂いもごまかしたし、さっきの小さめのは計画通りにかかったのに」魔女が舌打ちして見上げた廃屋の屋根を、巨大な影が悠々と横切って行く。彼女はどんな筋書きを頭に描いていたのか教えてくれない。

2015-04-06 18:58:51
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