座礁艦隊その４８～迷信～

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

「このまま突入してしまっても？」 巻雲が梯子から見下ろして言う。吸気管の幹を囲む螺旋階段。周囲に見張り控え室と同じようなプレハブ扉がいくつかあり、吸気管の枝と一緒に岩壁に張り付いている。 「どうせ相手は小銃持った奴らでしょう。屋内じゃ戦車も対戦車ロケットも使えません」 #座礁艦隊

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『却下よ却下。まだ内部構造も全部分かってない。ドンパチやらかしてる間に証拠を隠滅される。可能な限り見つからずに、サルベージされた轟沈艦娘を加工してる現場だけでも映して。これリアルタイムでスペクターやオッサンも見てるからね。シックス終わり』 げえ、と巻雲は渋い顔をした。 #座礁艦隊

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二隻は螺旋階段を降りていく。途中の扉は寝泊まりする部屋ではなく、どれも簡単な倉庫のようだった。鍵はかかっておらず、備蓄の食料や小火器などが詰め込まれている。水回りの部屋は無かった。屋上に揚水タンクも無かったから、恐ろしいほど手間をかけていないのだ。 #座礁艦隊

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屋上の見張り役はトイレに行ったりするだけでも下まで降りる必要があるのだ、と五十鈴は想像した。小は屋上で済ませていたのかもしれない。だとすると、全員始末しておいたのはむしろ正解か。加えて、これらの倉庫は普段来るような場所では無さそうだった。 #座礁艦隊

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武器や弾は埃をかぶっていたし、食料も"備蓄の"と表した通り、缶詰を中心とした保存のきくものばかり。新鮮な温かい料理も下で取るのだろう。ここには用は無い。 引き続き下って行くと、縦穴が途切れ、大きく開けた空洞が待っていた。 #座礁艦隊

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「なるほど、港だわ……」 天井近くから見渡す。海に向かって開けた、数十メートルの高さと幅を持つ洞窟内の港湾設備が眼下に広がっていた。輸送船とサルベージ船が並んで停泊し、大量の、エジプトのミイラのように布でぐるぐる巻きにされた人型のものが次々と運び出されている。 #座礁艦隊

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中身は轟沈した艦娘に違いない。その簀巻きの数は、五十鈴が想定していたよりもずっと多かった。見えているだけで10体以上ある。一度のサルベージで取ってきたものではないのか？ 簀巻きは港の反対側へ運ばれていく。階段を移動してそちらを見下ろすと、 「うわっ……」 #座礁艦隊

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五十鈴は目を覆いたくなった。 「ひゃー、壮観ってやつですねえ」 巻雲は興味津々に身を乗り出す。 スペースいっぱいに整然と並ぶ鉄枠製のベッド達。その上に横たわる、海底生物と堆積物にまみれた人型の物体。簀巻きの中身、轟沈した艦娘の成れの果てが、手術灯に照らされていた。 #座礁艦隊

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サルベージ艦の生っ白い無機質な表皮は、無残な本体を隠すためのものである。それは聞いていた。リワで戦い回収したあれらの中身も、写真でなら見た。だがそれを今実際に、大量に目の当たりにした五十鈴は、喉を込み上げてくるものを押しとどめるためにその場で蹲るしかなかった。 #座礁艦隊

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艦種はおろか、元が何型であったかどうかすらもはや判然としない。「轟沈した艦娘は深海棲艦になる」という否定されて久しい迷信が、事実であって欲しかった。五十鈴は心からそう思った。海の藻屑にもなれないのだ。 #座礁艦隊

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轟沈艦娘を運んだ男たちは、簀巻きの布を剥がしただけである。すぐに躯体を覆う堆積物やフジツボのような深海生物がひとりでに引き剥がされてゆく。いや……、巻雲は目を凝らす。 「うわー、やっぱ妖精さん、やってますねえ」 #座礁艦隊

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鉄枠ベッドの陰から数体の妖精さんが現れ、轟沈艦娘の処置を行っていた。鎮守府ではない場所で。やはり轟沈した後は艦娘管理法の域外なのか。 「シックス見えてます？」 『もっとズームして』 「法律がサルベージすることを想定してない系ですかね」 『どうかしら。何か違うような…』 #座礁艦隊

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『こいつは単なるアフターケアだぞ』 通話の相手が変わる。貫禄のある低い声色。元戦艦武蔵、猪口敏江。驚いているらしい。 「アフターケア？」 『入渠するまでもない擦り傷や切り傷、潮風のベタつきはどうする』 #座礁艦隊

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「どうって、妖精さんが勝手に治してくれますけど。躯体改造で定着した部分も気にせずやってくれるから楽ですね。それなら改造中も手伝ってくれれば良いのに」 『お前の違法改造話はどうでもいい』 「ちぇー。あれはそのアフターケアってやつの延長線上であると？」 『見る限りはな』 #座礁艦隊

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「要するに……」 五十鈴が頭をもたげ、通信に割り込む。 「管理法違反だとか、法の埒外だとか、そういう話じゃそもそもないってこと？」 「回復早いですね」 「アレ見て平然としてられる貴方が異常なのよ」 『少なくとも艦娘本体に限ってはそうらしいな。問題は艤装の方だが……』 #座礁艦隊

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「くちゅくちゅ艦と言った奴は前に出なさい」 「性器空母もだめです」 「口搾艦は百万回言われて飽きたのでアウト」

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なるほど、下着としてつけているか艤装の延長上でつけているのかか…。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

下着としてつけてる場合は装甲素材ではないのかな…？

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後期の駆逐艦ほどブラ率高いのはやはり「艦娘だから垂れないけど着けなさい！」って啓蒙した結果なのかな？

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

雲龍型のブラとパンツはブラチェックの考察からしても確実に装甲素材だ。あれが装甲素材でないばあい最低限の装甲がさらに減ることになる。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

ブラもパンツも着けてない艦娘はそもそも下着というものの意味を理解していないか、理解していても必要性を感じていないかのどちらかだよなあ。でも吹雪ちゃんパンツ穿いてるんやで

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

艦娘は動産であり自然人でもないから権利主体とすることもできないというのが、人間社会の法律の限界なのかもしれないなあ。当たり前のことではあるのだが、人間以外の知性体が地球上で社会生活を行うことを想定していない。でも今ではなくてもいずれは何らかの形で隣の異種知性体問題が出てくるはず。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

隣の異種知性体問題に翻弄される社会を可能な限りライトかつカジュアルに描いたのがモンスター娘のいる日常では……？

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

Romaはイタリア女の雰囲気を醸し出してるのがたまらないし、何より生半可なナンパでは落ちそうにない、口説きの国のイタリアっぷりがまた良い。戦艦特有の高いプライドを持ちながら山を挟んだお隣の国の戦艦みたいにちょろくない。どうしてもRomaを落としたい提督は単身イタリアへと飛んだ。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

ビスマルクがちょろいのは戦艦という艦種特有の傾向もあるが、ドイツ人の気質的な側面も強いのではないかと思う。ドイツの技術力の結晶であるから、褒められたら嬉しいに決まってるのだ。