その顔を見ると、サンタさんは疲れも寒さも吹き飛び、子供達のために頑張ろうという元気が出てくるのでした。 サンタさんは世界中の子供達を同じくらい大切に思っていました。それがサンタさんの決まりだったのです。
2010-12-25 01:49:21サンタさんが子供の顔を見ながら袋からプレゼントを出すと、その子が一番欲しいと思うものが出てくるのでした。その袋をかついで、サンタさんはイブの夜空を飛び回り、たくさんの幸せな子供達の顔を眺め、たくさんの幸せをもらいました
2010-12-25 01:50:21「さて、このおうちで最後かな。」 サンタさんは、最後の子供の家にやってきました。しかし、サンタさんは困ってしまいました。 その家には暖炉がないのか、煙突がありませんでした。「まいったな。煙突がなければ入れない。」
2010-12-25 01:51:36サンタさんはその家を一回りしてみました。だいぶ古くくたびれた家で、壁には穴が空いていたので、サンタさんはそこから家の中に入りました。 入ってサンタさんは驚きました。家の中は、外と変わらないくらい寒かったのです。
2010-12-25 01:52:58床は歩くとキシキシと音をたて、サンタさんは家の人にみつからないかと不安になりました。しかし家の中をみてまわっても、大人の姿はありませんでした。一番奥の部屋で小さな女の子が眠っているだけでした。 女の子は硬いベッドの上で薄い毛布にくるまって眠っていました。
2010-12-25 01:53:31サンタさんはその子の顔を見て、悲しくなりました。子供達の寝顔を見るのがサンタさんの喜びだったはずなのに。サンタさんはとまどいながらも、この子の一番欲しいものをあげようと袋に手をいれました。ですが、不思議なことに一番のプレゼントが出てきません。
2010-12-25 01:55:09おかしいなと思いながら、仕方なく二番目にほしいものと三番目に欲しいものを出すことにしました。二番のプレゼントは、厚く、柔らかい、とても暖かそうな毛布でした。それは、今まで見てきた子ども達がかけていたのと同じものでした。
2010-12-25 01:56:27サンタさんはそれを女の子にかけてあげました。三番目のプレゼントは、パンと温かいスープでした。こんがり焼いた七面鳥や大きなケーキではありませんでした。サンタさんはそのパンとスープを、部屋の角の机の上に置きました。袋から出した料理は、時間がたっても冷めたり悪くなったりしないのです。
2010-12-25 01:57:08サンタさんは、とても悲しい気持ちになりました。 プレゼントは渡しました。後は幸せそうな寝顔を見て、サンタさんの仕事は終わりのはずでした。 しかし、サンタさんはその場から離れられませんでした。この子にあげたプレゼントは、他の子ども達が願わなくても持っているものでした。
2010-12-25 01:58:33サンタさんは、どうしてもこの子の一番ほしいものをあげたいと思いましたが、何度袋を探してもそれは出てきません。 ふと枕元の靴下を手にとると、中に紙が入っていました。その紙には『かぞくがほしいです』と弱々しい字で書いてありました。
2010-12-25 01:58:58その女の子には両親がいないようでした。サンタさんは困りました。いくら不思議な袋でも、人間を出したり死んでしまった人を生き返らせたりはできないのです。サンタさんはもっと悲しくなりました。
2010-12-25 02:00:17サンタの決まりでは、全ての子ども達を同じように同じだけ大切に思い、同じだけ幸せをプレゼントしなければなりません。サンタさんは、今まで見てきた子ども達の顔を思い浮かべようとしましたが、頭に浮かぶのは、この女の子の青白い寝顔だけでした。
2010-12-25 02:01:55イブの夜、サンタさんは空飛ぶソリに乗って大忙し。煙突から家の中に入り、子供達の枕元の靴下の中にソッとプレゼントを入れて、またすぐに次の子の家にと飛び発ちます。ホッと一息つく暇もないほど忙しいのですが、暖かい家の中でぐっすりと幸せそうに眠る子供達の顔を見るのが何よりの楽しみでした。
2010-12-25 01:47:51