【twnovel】社長さんとメカ秘書

しーな@GO2完走 @xsheeenax

「社長サン、ハジメマシテ、秘書デス」俺は無意識に眉根を寄せた。確かに、仕事が忙しくなってきたので秘書の斡旋を頼んだ。だが。「4%、イエ7%眉間ノ皺ガ寄ッタコトヲ確認シマシタ。ろぼっとデハ、ゴ不満デスカ」平坦な声が問う。「旧型デハアリマスガ、条件ハ満タシテイマス」 #twnovel

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秘書ロボットは無表情で手にした紙をひらひらさせる。ちらっと見えた限りでは、俺が入力した申込書のプリントアウトだろう。ロボットの癖にアナログか。「特ニ人間トノゴ指定ハゴザイマセンデシタガ、きゃんせるサレマスカ」確かに、少し高望みかと自覚する程度には条件はつけたが。 #twnovel

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しかしなあ。背中の中程までの黒髪ストレートに銀縁眼鏡の奥の透徹な瞳。タイトスカートからすらりと伸びた、おそらくガーターベルトを纏った脚に、不本意ながら目が行ってしまう。「見タ目ノゴ要望ニモ、オ応エシマシタ」「そんな入力欄なかったぞ」「大体ノ傾向デ判リマス」くっ。 #twnovel

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「判った判った、仕事さえちゃんとしてくれるなら何でもいい！ 採用！」またイチから秘書探しをする暇もない。思考を放棄して椅子にどさりと身体を預けると、ぺこりと頭を下げるのが見えた。おそらくは、きっちり45度。「アリガトウゴザイマス。デハ、早速、オ茶ヲオ淹レシマス」 #twnovel

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茶ぁひとつ飲むのに、コーヒー豆や茶葉、砂糖とミルクの種類と量の指定を逐一求められたときは発狂するかと思ったが、とりあえず「標準」設定することで何とかなった。濃いコーヒーなんかが欲しくなったら、またそのとき考えよう。悔しいことに缶コーヒーや下手な店よりは、美味い。 #twnovel

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ロボットな秘書にスケジューリングを任せてからというもの、格段に仕事の効率が上がった。「助かるよ。ありがとな」「仕事デスカラ」ま、労ったところでこんな感じだけれども。「次の出張、たまには一緒に行こうか」「秘書ノ同行ガ必要ナれせぷしょんナドハ確認出来マセン」「あー」 #twnovel

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「観光地だし、息抜きも必要だろ？」「ろぼっとニ、息抜キハ不要デス」「社長命令っつったら？」「……従イマス」相変わらず融通は利かない。「デハ、別途荷物ノ持チ込ミ料ヲ予算計上シマス」「荷物？」「ワタシヲ最小化シテモ手荷物さいずニハ収マリマセン」何言ってんだ、こいつ。 #twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

「いやいやいや、普通に俺の隣の指定席取れよ」「余分ナ経費ガカカリマス」「いいから！」思わず声を荒げた俺を見る瞳は、不思議そうに人工物の昏い光を放っている。「社長サンハ珍シイ。高クナルノニ、ワタシヲ荷物ニシナイナンテ」お前、今までどんな扱いを。喉元で言葉を呑んだ。 #twnovel

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秘書を一瞥……ひと睨みして総務嬢が出て行ったのを確認してから口を開いた。平坦な声に疲れが滲んでそうなのは俺の気のせいか？ 「旧型デスノデ、喜怒哀楽ノ表現ニハ乏シイノデス」「知ってる」「他ノ社員ヲ不快ニサセルツモリハアリマセン」「知ってる」「アノ方ハ」「ほっとけ」 #twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

多分、俺に気があるんだよな、玉の輿的な意味で。ちくしょうめんどくせえ。そんな俺を知ってか知らずか秘書は続ける。「ワタシニ表情ハアリマセンガ、後継機ハ表情豊カニナリマシタ。おぷしょんデ、オベッカ、ごますりナドモ可能ニナリマス」「金払ってまでご機嫌取られたくねぇわ」 #twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

「意外ニ売レテイルソウデス。チナミニワタシニソノおぷしょんを搭載スル場合ハ、外付ケはーどでぃすくガ必要デス。旧型デスノデ、容量ガ足リマセン」 ちらりと目を遣ると、両手で正面に四角を作った。「大キサトシテハ、オヨソらんどせるクライデショウカ」「でかいわ。要らんわ」 #twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

「お前は秘書の仕事をきっちりやってくれりゃあそれでいいんだよ。ゴマスリとか要らん」「社長サンラシイオ言葉デス」「それもあれか、データの蓄積による傾向とやらか」椅子をきしませちょっと嫌味を言ってやったが、秘書はいつも通りに俺を見て、「ハイ、ソウデス」通じてねえし。 #twnovel