不知火に落ち度はない　39（神通）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて、再び平々凡々なる日常劇の更新と、な。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「兵頭っちー、そろそろマニュアル作っていいかい？」 「お。だいぶ方針固まったか？」 「まーねー」 司令室。積み上がった書類をあれこれ片付ける中、北上が言う。 本日の深海棲艦指数は４４。 すでに哨戒2編成での出撃をオーダーした後である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ときに、早霜ってのが着任後も補佐はした方がいいかい？」 「んー。お前さ、貞子と仕事したい？」 「TVから出られる奴なら歓迎するねー」 北上さま強いな。全然平気ですか。 お前なら呪怨世界でも生き残れるに違いない。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「TVからは出られねえだろうが、意外と不幸な事故を呼ぶ体質とかあり得るぞ」 「どんなんよ。見せてご覧ー」 北上のPCの共有フォルダに画像データと略歴ぽん。 それを見て、北上は首をかしげていた。 「や。ふつーじゃん」 「は？ フツーに見えんのか？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「あたしゃーオカルトってさっぱりだかんねえ。これって要するに、司令官が心労で倒れたってことじゃないの？」 「いや、連続してるんだよ。訓練教官も参っちまったらしいぞ」 「この3ヶ月の出勤停止処分？」 「おうそれ」 何言ってんだか、と北上はため息を吐いた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「この訓練教官だけどさ、結構神経質な奴なんだよ」 「はえ？ お前こいつ知ってんの？」 「んー。知ってるというか、何というか」 何か言いあぐねる様にしたあと、気づかない？ って顔をする。 はて、さっぱりだけどさ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「前の、大井っちの担当教官」 「──あ」 やべ。思いっきり地雷踏んだ。 北上にしちゃそこタブーゾーンだったんだ。 「ほら、ンな顔しない」 「あー、悪かった。北上」 「しょがないでしょ。艤装はめっかったんだし」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして気にすることなく、北上は続ける。 思いっきりドライなところはドライな奴だ。 「それがトドメになったんじゃないかな。時期は重なるからさ」 「うわー。言われて見りゃそうか」 「大井っちの艤装結構特殊だったかんね」 それお前もだけどな、北上さま。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そう。北上の相方である大井はすでに、海の藻屑となってしまった。 それまでは別の基地で、エースコンビとして活躍していたんだがな。 運悪く、深海棲艦の『旅団』にブチ当たった結果、撤退もままならず大井は轟沈。 北上は大破状態で帰還したという。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、艤装は二年ほど前に発見された。 ボルネオ島に流れ着いてたらしい。 その後、ほぼ修復不可能な状態とされていたが、1年かけて技師が修復。 そして適合者が発見され、現在訓練中らしい。 栗色の髪をした、髪の長い少女だったっけか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

艤装記憶はバックアップされていたが、人格まではバックアップされない。 そのことを知っていた北上は、適合者の発見に対しても冷淡な姿勢だった。 「だって『相棒』の大井っちはもう居ないもの」 北上の部屋には今でも『相棒』である前の大井の写真がある。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

加えて言うなら、俺の基地に来た理由も、正味あんまよくねえ理由なんだけどな。 旅団規模の深海棲艦が通った場所がどうなるか、わかるだろ？ ろくな装備も艦娘もない、四年前の基地なのだから。 大井北上組の敗走であっさり放棄されたんだ、そこ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そこの基地司令がな、俺の知り合いだったんで北上の後を任されたんだ。 あいつは、責任を負って──ま、言うまいて。 当時は酷い状態だったが、ここの水が合ったし艤装を修復できたのもあり復帰。 そして今は魚雷をぼんぼんブチこみ、演歌を歌う北上さまである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「だからこの訓練教官の勤務停止は原因は早霜じゃなくて、どっちかってと大井っちだよ」 「女子だしなあ」 「女子だからねえ」 あ、いかんしんみりしてしまった。 訓練教官が何を思ってたかまで考えるのは良くない。 そしてその後配属、秘書艦になるまでは普通。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

しかし、勤務後色々あって、破綻。 司令官は精神病院送りになった。 「なにがあったと思う？」 「うーん。何があったって言われても調べるのは兵頭っちの仕事でしょ？」 「それもそうなんだが。推測は？」 「そういうのパース」 北上さまだなあ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「で、北上さまアイズではこいつどうよ？」 「もっと飯喰えば？って感じ。痩せすぎでしょ、この身長にこの体重」 うん。やっぱそう思うのね。 俺もそう思う。 「ちなみに早霜は不知火轟沈に関わった艤装つったらどうする」 「駆逐艦同士の話だしー」 ドライだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「で、なんでまたこんなのが来るって話？」 「龍田からの援軍」 「援軍？ 工作員じゃないの？」 ずけずけ言うなあ。ほれぼれするなあ。 「Noと言えないのは不知火の練度なんでしょ」 「うん、正解。そこ突かれた」 頭の回転早いんだよな、北上さま。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「で、今不知火は精神と時の部屋で修行中、と」 「それで界王拳使えりゃいいんだけどな」 残念、現実は神通教官の指導なだけです。 ただ、足回りは前よりうっすら増えてたんで、効果は出てる。 「かめはめ波とか神通使えないの？」 「無理だっつの」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「そしたら、この早霜ってのもお役ご免で兵頭っちが手込めにするんでしょ」 「しねえよ」 「スパイは体で聞き出してやるんでしょ」 「しねえよ！」 「へへへ、鍛えてないのがあだになったなぁ小娘がぁ」 「俺の真似かよそれ！！」 北上さまやめて。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「以上、基地内の兵頭っち噂話を総合したイメージ」 「マジで！？」 「噂って怖いよねえ。私も処女心配されたよー」 「ありえねえから」 「そだね。処女じゃないし」 ぶっ。さらりと言うなよ。 「お、びっくりした？」 「北上さまの交尾事情に興味ねっす」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ちなみに卵生だから」 「本気にするからやめて」 北上さまの産卵シーン始まります。グロっ。 「ま、そういうの避ける意味でもしばらくついておいたほが良くない？」 「うーん。ただなあ、本人見てみないと何ともだぜ？」 龍田はその状況も盤面に書いてるはず。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「んじゃ、兵頭っちに丸投げね」 「さらっとしてるなあ」 「兵頭っちがここにマユゲ寄せてる時は、すんごい迷ってるときだかんね」 指さすのは眉間付近。 「その状態で動かれると、めんどくさいから手伝わない」 すっぱりはっきりである。 #不知火に落ち度はない