「何故かが分からないと先に進めない子供」と「役立つことが分からないと先に進めない子供」
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ShinShinohara
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子どもの「理解の仕方」は、大きく二つに分かれる。 「何故かが分からないと先に進めない子供」と「役に立つことが分からないと先に進めない子供」だ。理解(納得)の仕方が全然違うので、指導法を誤ると、学習が全然進まなくなる。
2015-06-04 18:50:15
たとえばy=2x+3という方程式があったとして、xに数字を代入したらyが求まるので便利だということは分かったとしても、前者の子の場合、「なぜxに数字を入れたらyの数字が自動的に出てくるのか」、不思議に思う。 この不思議を解き明かさないと、次に進めない気分になる。
2015-06-04 18:50:30
そういう子どもには、理屈というか、メカニズムというか、それを丁寧に説明してやると、納得する。 一度納得できたことは忘れないし、応用編にもどんどん進むことができる。
2015-06-04 18:50:56
後者の子の場合、理屈やメカニズムを説明しても頭に入らない。 「で、何の役に立つっていうの?」ということが気になって仕方ない。役に立つことが分からない間は、先に進む気にならない。 こういう子どもには、理屈よりもどんなに便利な道具かを説明してやった方がよい。
2015-06-04 18:51:10
一例を紹介しよう。 中学校ではともに数学が高くて30点というひどい成績の子どもが二人いた。一人は公立高校に、一人は工業高校に進学した。 公立に進学した子は「なんでサインコサインなんか覚えなあかんのじゃー」と文句ばかり言って、やはり数学の成績はメタメタだった。
2015-06-04 18:51:28
ところが工業高校に進んだ子はほぼ100点。数学が得意科目に。 なぜ数学が伸びたのか?「ドリルで穴をあけるのに右何センチ、奥何センチ動かすのは、座標と同じ。円運動が直線運動に変わるのを計算するには円周率が役立つ。モノづくりに役立つことが分かったら、数学が面白くなった」と答えた。
2015-06-04 18:53:43
この二人とも、「役に立つことが分からないと先に進めない子供」だった。公立高校では理屈ばかりで、何の役に立つのかは全然教えてくれない。工業高校は実践的で、数学が何の技術に直結し、役立つのかが分かりやすいので、納得が得られ、やる気も出たようだ。
2015-06-04 18:54:05
「何故かが分からないと先に進めない子供」には、理屈やメカニズムを順を追って丁寧に教える指導の方が、納得しやすく、内容を習得しやすい。 「役に立つことが分からないと先に進めない子供」には、理屈やメカニズムは後回しにして、何に使えて役立つのかを先に説明したほうが、内容を習得しやすい。
2015-06-04 18:54:22
「何故かが分からないと先に進めない子供」は、実用性を軽視しているわけではない。しかし、先に理屈やメカニズムで納得できていないと、役に立つような使い方を工夫する気が起きないという性質がある。 メカニズムさえきちんと理解すれば、工夫して使い道を創造することさえできる。
2015-06-04 18:55:18
「役に立つことが分からないと先に進めない子供」は、理屈やメカニズムを軽視しているわけではない。しかし、先に役に立つツール(道具)であることを納得しないと、理屈やメカニズムも見当がつかないという性質がある。 役に立つことさえ納得がいけば、メカニズムを忖度する能力に意外と優れている。
2015-06-04 18:55:38
「何故かが分からないと先に進めない子供」は、使い方や役立て方を他人から教えられるのが嫌い。「そんなのは自分で考えるから、理屈の方を教えてくれ」というタイプ。
2015-06-04 18:55:51
「役に立つことが分からないと先に進めない子供」は、理屈やメカニズムを他人から教えられるのが嫌い。「そんなのは自分で考えるから、まずは役立て方を教えてくれ」というタイプ。
2015-06-04 18:56:08
自分がどちらか一方のタイプだと、別のタイプの人間を理解しづらい。 「これだけ理屈を説明しているのに、なんで分からないんだ。理解力がないからに違いない」と思ったり、「こんなに役に立つツールなのに、なんで使いこなせないんだ。不器用な奴だ」と決めつけたり。 どちらも、誤解である。
2015-06-04 18:57:12
どちらのタイプであるかを見極め、適切な指導を施せば「こいつに理屈を説明しても無駄だ」と思われていた子供が、説明もないのにメカニズムを正しく忖度する能力が高いことに驚かされたり、「不器用な奴だ」と思っていたら、創意工夫して新しい道具を開発する能力があることに驚かされたりするだろう。
2015-06-04 18:58:42
指導者になる人は、まず、自分がどちらのタイプであるか自己診断したほうがよい。その上で、自分とは異なるタイプの人間をどう指導したらよいか、腕を磨くべき。そうでないと、自分と異なるタイプの子どもは、適切な指導を受けられずに能力を低迷させたままという不幸な目にあう。
2015-06-04 19:00:20