【GC2】二つ影の夜興行【POD】
@hako_ar 傾いた扉を大きく開け放ち、壇上に腰掛けて、共演者の訪いを待つ。 元、サーカス小屋の円形劇場。フリークショウの舞台。朽ち果てた天幕の合間に、一齧りされた月が覗く。月明かりよりも爛々、餓えた瞳が、巨躯の影を探して昏闇の中。時折、瞬き、明滅する。
2015-06-04 21:18:53@hako_ar 今宵は、“影の怪人”と“昏き昏冥”の、大舞台。 互いに命を燃やす、一夜語り。仲間を繋ぎ留める為の、夜興行。 やがて、きんいろの炉が、扉の向こうの“影”を捉えて。 うっとりと、細まる。
2015-06-04 21:19:20@schsch_schwein_ 「お待たせしてしまいました」 ずるり、と影から這い出るのはいつもと変わらぬ―――― 変わった姿だった。 ドレスともコートともつかぬ、ぞろりとした黒い服。 2mほどあった長身は、180ほどに収まり。 代わりに、膝裏まで伸びた黒い髪。 そして、
2015-06-04 21:27:04@schsch_schwein_ 10本に増えた影の腕と、手袋をはずした生白い2本の腕。 その腕に、 びっしりと生えた“眼”。 裸足の足が、じゃり、と朽ちた劇場の床を踏む。 . . . 「これが、影の怪人……カノウハコではなく、怪人、そのものですよ」
2015-06-04 21:30:13@schsch_schwein_ 「お待たせしました、昏き昏冥。 黒猫の姫、笑顔の私書箱、神の正義、七色の道化師、激流の嘴、金糸紅玉の君主、無邪気な天邪鬼。 私の為に、七夜を有難う御座います。 ……我々に、もう、言葉は不要でしょう。 これは、閉幕寸前の舞台です。」
2015-06-04 21:34:23@hako_ar 檄を飛ばし、背中を押してくれた黒猫の姫。千秋楽にて、戦の熱を芯まで届けてくれた笑顔の私書箱。希望を託してくれた神の正義。飄々と何処かで見物しているだろう演出家、七色の道化師。
2015-06-04 21:55:07@hako_ar 剣呑と激情を遠慮なくぶつけ合えた強者の災禍、激流の嘴。魂まで射抜かんと最後の活劇を見せてくれた、硝煙の天使。屈託なく共演を心より楽しんでくれた、無邪気な天邪鬼。手法は違えども、同じように、“カノウハコ”を捉えようとする金糸紅玉の君主。
2015-06-04 21:55:15(1人抜けてましたーーーーーーーーーーーああああああああーーーーーーーー困りますカタリビトーーーーーーーーーーーーーーー)
2015-06-04 21:56:33@hako_ar 「――七夜を、どうも、有難う」 怪人の言葉に添わせるよう、彼ら相手に伴ったナイフの峰を額に当てて、彼らへの感謝を。それから――おどろおどろしい正装に身を包んだ悪役、“影の怪人”へ、欲深く微笑みかける。ああ、悪役に相応しい、素敵な装いだ。
2015-06-04 21:56:57@hako_ar 「ああ、言葉は不要。後は、言葉も、身も凍る、影絵の夜興行だ」 そうして、対する己もまた、善とは呼べぬ。強欲が酷く疼く。歪に笑う。 座った姿勢から片腕一つ、くるり、すたり、壇上へ。 さあ、こちらの口上は、これで終わり。 「――最後の舞台を、始めよう」 .
2015-06-04 21:58:04@schsch_schwein_ 「こんな夢を見た。」 どすりと二本の影腕が床に突き刺さる。じわじわと根を張る。見据えるは、目の前の昏冥。 「腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。」
2015-06-04 22:17:39@schsch_schwein_ 「『百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから』」 飛ばし飛ばしで語る声。金属質な音の混ざる、スピーカーのノイズの混ざる、潮騒のような音が混ざる、右から左へ左から右へ立体音響のように移動するような、
2015-06-04 22:18:09@schsch_schwein_ ずば、と百合の花のような影が二本、昏冥の足元から勢いよく生える。口を開けた怪物にも似た其れは、昏冥の両腕に勢いよく喰らいつかんとす。 【夢十夜:第一夜】9 [3D6] 3,3,3
2015-06-04 22:19:14@hako_ar 床に根を張る黒い腕。何かの小説の一幕を語るような呪言。 (魅せてくれよ、悪役) 燃え盛る熱を宥めながら、笑って、待つ。足元に気配。(あ――ああ、来た。)ぞわぞわと背筋が震え、突如、猛然、ぐばりと口を開けて、影が両腕を喰おうと押し迫る。餓えた咢を開く、黒百合――
2015-06-04 22:40:11@hako_ar 「っ、――あは、は」 瞬時に飛び退く。口の端が、両の腕を掠めて、裂けて、鮮血がきらきらと舞う。 舞台の、強欲の齎す、昂揚感に、もはや痛みは無く。 飛び退きざま、追尾する百合の首を、両の刃で一振るいずつ刎ね飛ばす。
2015-06-04 22:45:32@hako_ar 同時に上方――破れた天幕の穴という穴から、影の粘水が、どす黒い幕のように音も無く降り注ぎ、真下の怪人を、影腕を縫い止めようと、幕の重みで押し潰さんと殺到―― 【HP】100→91 【七枚のヴェールの、代償に】11 [3D6] 4,2,5 (22:23:43)
2015-06-04 22:46:11@schsch_schwein_ 頭上不注意。注意一秒、怪我一生。 天幕を突き破った粘性の水が降ってくる。 「生徒にはよく言いつけたはずですが、成程、こうい」 ざば、と言葉の途中で怪人の姿は黒い洪水にのみ込まれた。 ばぎゃ。 ごき。 ずる、ずる。 【HP】100→89
2015-06-04 22:51:59@schsch_schwein_ 「『夢十夜』の手が」 影の粘液にからめとられた手をパージ。肩から取れた2本の腕、結合部分はじくじくと痛む。おまけに2手。10手引4手は6手。 「……うん」 満足げに、怪人は、頷いた。口の端を三日月形に歪めた、空虚な笑顔で。
2015-06-04 22:58:35@schsch_schwein_ 「会得すべし、 一を十とせよ。 二は去らしむべし。 ただちに三を作れ。 しからば汝、富むべし。 四は手放せ、 五と六とより、 七と八とを作れ、 これ魔女の進めなり。 それにて成就疑いなし。 九は一にして、 十は無、 これぞ魔女の九々。」
2015-06-04 23:01:04@schsch_schwein_ 残った6の腕を切り離し、投擲、彼の周囲に突き刺す。 突き刺さった影は檻のように形を変え、その内側に棘を生やす。 「これぞ魔女を喰らったアイアンメイデン。頂きますよ、戦場漁り、魔性の少年」 【鉄の処女】15 [3D6] 5,6,4
2015-06-04 23:04:03