小説【穏やかな闇の中で】

はんな□♡▽○妄想投下気味 @hanna_secret

【穏やかな闇の中で】 それは、こんな静かな月の夜―。 きっと、エラーだと思ってた。 こんな愛なんて、きっと世間は認めない。 目隠しの向こう側、 君の無言の声を、俺は―愛した。 ＊＊＊ 全186話、手越さんメインの長編です。 #穏闇

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001/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 side♡ ―音だけの世界。 目隠しの布越しに、 辛うじて分かる窓からの光。 「おはよう手越くん、起きてる？」 動かない。 動く気力も無い。 ベッドに縛られた四肢は、 暴れたせいで、酷く傷付いて痛んでいる。

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002/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「起きてんのかって聞いてんだけど。」 頬を掴む、長い爪。 「んだよ、つまんねー。 　口のタオル取ってあげたじゃん。」 爪が頬を傷付ける様に刺さる。 「てごにゃん、可愛い声聴かせてよぉ☆」 部屋の向こう側から、別の声。

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003/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「ねぇてごにゃんってばぁ。」 先程までの声より甘く甲高い声が、 ぎゅっと耳元まで近付く。 「てごにゃーん」 頬に当たる皮膚の感覚。

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004/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「ちょっと、それはアウトだから。」 「へへ、ごめん…折角だからね。 　何万人の王子様を、自由にできるとか。」 「それでも。誰のお陰で楽しめてると思ってんの。」 １週間前。 フットサルの試合の後、友達に車で送って貰った。

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005/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 それは、普段と同じ行動。 近所のコンビニに寄り道して、 お酒と摘みを買って、 いつもと同じ曲がり角を曲がる。 突然、目の前に現れた小さな影。 と同時に、顔に吹きつけられるスプレー。 そこで、俺の意識は途切れる。

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006/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 次に気が付いた時は、 既に四肢の自由は奪われていて、 視界は遮られ、口にはタオルが噛まされていた。 「…※△＄！」 声は、言葉にならない。 「あ、起きた。」 耳に触れたのは、女性の声。 「すごぉい、ホントにてごにゃんだねー♡」

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007/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「神席どころの騒ぎじゃないよ…何しても自由なんだから。」 ギャル風の話し方の、鼻に掛かった声と、 それよりもっと甘い、アニメ声。 ―と、あと１つ、“無音”の声。 一言も話さない子が、１人。 俺は、３人のファンに“拉致監禁”された。

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008/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 side□ 「ねぇ、連絡取れたの？」 「いいえ、まだ…」 ３人の楽屋。 一番賑やかな男がいないせいで、 酷く静かで、張詰めている。 「ったく、何やってんだよ。」 シゲが苛立った様に舌打ち。

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009/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「本当に、問題ばっかり…」 「ちげーよ！」 マネージャーの言葉を、シゲが荒い口調で遮った。 「何で誰も付いてなかったんだっつってんの俺は！」 「シゲ…！」 マネージャーに掴みかかりそうな勢いのシゲを、 慌てて制止する。

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010/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「確かに少し無鉄砲なとこあるけど、 　あいつは絶対、俺達やファンを裏切らねーし！ 　ってか、仕事に平気で穴開けるような、 　適当な奴じゃないから、手越祐也は…」 近くの椅子に、ぽてん、と力なく座る。

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011/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「…怖ぇもん。仕事に来ないのはあいつの意思じゃない。 　じゃあ…って考えると…事件か…事故か…」 沈黙―部屋に響く秒針の音。 「…なんない。」 「え？」

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012/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 部屋の隅で座り込んでいるまっすーが、 携帯から視線を動かさないまま、 虚ろな目で言った。 「既読に…なんない。」 そう呟くと、また小さく親指を動かす。 手越が消えて、明日で１週間になる。

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013/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 side♡ 《さて、大変なニュースが入って来ました！》 テレビから流れる、 芸能レポーターの興奮気味な声。 《体調不良で先日、生放送をお休みした、 　人気アイドルグループ“NEWS”の手越祐也さんですが…》 「ねぇ聞こえるぅ？」

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014/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「ニュースになってる！スキャンダルだよぉ♪」 《実は“失踪中”との情報が出て来ました！》 「凄いねぇ♡ニュースになっちゃったね、あたしたち♡」 甘ったるい声が耳元で囁く。 リーダーらしい子は不在。 多分キッチンに、無口な子が１人。

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015/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 《手越さんと言えば、以前から目撃情報が多く出たり、 　ファンの間ではその破天荒っぷりは知られてましたから、 　今回も何か、スキャンダルの匂いしますね！》 ふわりと漂ってくるカレーの匂い。 布越しに、暑い日差し。 多分、正午に近い。

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016/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 《NEWSはこれまでも脱退者が相次いだグループですからね。 　もしかしたらまた…って、ファンも心配ですねぇ》 長く音だけで過ごしたせいで、 耳だけが酷く研ぎ澄まされている。 …このコメンテーター、全然心配だと思ってない。

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017/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「大丈夫だよねぇ☆てごにゃん！ 　てごにゃんにはこれから、あたしがいるもんね♡」 頬に、ちゅ、と触れる感覚。 「…あいつ帰って来たら、殺されんぞ。」 「へ？！うわ！喋ってくれたのぉ？！」

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018/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「俺が今のキス、チクりでもしたら、 　お前らの関係なんて簡単に壊れんだろ？」 「ふふふっ♡じゃあ…」 服の中に滑り込む、彼女の手―。 「あの子に殺される前に、てごにゃん、 　一人占めしちゃおっかなぁ♡」

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019/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 シャツの中を泳いだ後、 その手はゆっくりスウェットのパンツに掛かる。 《さて、次はあの人気俳優、熱愛か？！》 世間はめまぐるしい。 NEWSが４人になって、 半分以下の人数になっても、 それでも頑張って来た。

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020/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 “やっぱりあいつらはダメだ” “ダメだから、脱退者が出た” そう思われたくなくて、NEWSは最高だって、 ちゃんと皆に見て欲しくて―。 それだけ想って、がむしゃらに来たのに。 世間は、すぐに忘れる。 俺のことも―NEWSのことも。

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021/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「ふふっ、てごにゃん♡」 世間は、話題を“消費”してゆく。 アイドルを“消費”してゆく。 《彼が結婚すると、世間の女性が悲しみますねぇ》 飽きたら、忘れる。 忘れられて、消えてゆく―。

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022/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 首筋に、先程のよりも粘っこい口付けが落ちて、 彼女の手が、腰の辺りを焦らす様に撫でた。 「っざけんな、止めろよ、っ！」 思わず動かした手に、手錠が食い込み痛む。 「ヤだ、止めない―」 彼女の息づかいは、徐々に熱く、激しさを増す。

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023/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「ごはん！！」 と、聞き覚えの無い声。 「ごはんできました！」 それは、キッチンの方から。 「バカじゃないのヒナコっ！」 今まで身体に絡み付いていた子が、 突然声を荒げて身体を起こす。

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024/186　#にゅーすで妄想　#穏闇 「あんたモテな過ぎて、 　エッチしたことも無いんでしょぉっ！ 　空気読みなさいよ、空気！！」 「でも…ごはん、できました…」 「…本っ当、バカ。」 ふっと身体から彼女の重みが消える。 ―助かった。