千葉雅也 Masaya CHIBA @masayachiba さんの「ベルサーニの『直腸は墓場か？』に松原洋子さんが深く『いいね！』を表明していたことに、心動かされた。」

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

新たに僕のツイートを読んでくれている方々へ。過去のツイートを編集した本があります。僕の立場や方法、文脈が垣間見えると思います。：千葉雅也 別のしかたで amazon.co.jp/dp/4309246648/…

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ベルサーニの立論をマッチョだ、ゲイ・エリーティズムだ、などなど批判する向きがあるようだけど、彼はひじょうに繊細に書いていて、その手の批判は、ある戦略的な単純化をしてると思うんだよね。でも、その手の批判に余地を与える部分がどのくらいあるものか、改めて考えている。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ベルサーニは「直腸は墓場か？」で、ゲイのマッチョ趣味は、ファリックな男性性を撹乱するパロディというより、それへの「同一化」だと言う。これはマッチョへの開き直りではない。これはノンケの男らしさに萌えて同一化するけど、どうしても失敗する（これが重要）というよくある話のことだろう。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

まあ、ベルサーニの言う、セックスの本質は許容しがたい徹底的な自己解体を快に変えることなのだという定式には、同意。セックスが根本的に、思いやりとか尊重などのカテゴリで言えるものであったらいいのに、というのをベルサーニは幻想だとして棄却する。同意。

SHIMIZU Akiko（清水晶子）『フェミニズムってなんですか？』 @akishmz

一般論として、非常に繊細に強者の論理であることは、割と容易に可能ですよね。わたしも彼の文の運びの繊細さと華麗さには惚れ惚れしますが、「戦略的単純化」と同様に「戦略的な繊細さ」にも注視が必要だとも思うのです。 twitter.com/masayachiba/st…

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

@akishmz うーん、まあ清水さんの言うことも分からないではないですが、ベルサーニのあのセックスの定義は、基本的にウケの話が基調と思うので、そのあたりをどう読もうかなと思ってます。自己解体の話は、強者論理に見える部分すら解体するように僕は思いますが。

SHIMIZU Akiko（清水晶子）『フェミニズムってなんですか？』 @akishmz

@masayachiba ありがとうございます。そうですね、ボトムの話ですし、時代的にあのタイミングであれを書いたということの強烈な政治性は忘れてはならないと思います。反面、自己解体の話はやはり解体すべき「自己」を保証された立場でこそ可能な欲望のように思えて、そこは気になります。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

@akishmz ありがとうございます！自己解体と、（それでも）維持される自己ということについては、井芹さんの論文も読んで僕なりに解釈を考えましたので、また今度つぶやきますね。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

松原洋子さんとのベルサーニ解釈の授業を終えて、帰宅途中。学生もよく読み込んでいたし、教員もよくしゃべった。楽しかった。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

今日考えたことを書きたいけど、もうしばらく寝かせた方がいいかも。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

より近代的に近代的にとやっていくと、自己破壊性はどんどん嫌われ、自分を安全に退避させ、危険なことは遠い他者や人工物に代理させていくようになる（他者に危険なことを押しつけるのは人工物による代理への途中段階だろう）。セックスや妊娠出産もその過程にある。松原さんと僕の授業。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ベルサーニを読みながら松原さんは言う、女性にとって妊娠出産も自己破壊的である、と。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

勝手に松原さんのコメントを僕が要約してツイートしちゃうと迷惑をかけるかもしれないので控えますが、セックスと妊娠出産という二つのトピックが扱われ、また授業の終盤では、例の「望んでHIVに感染する」というティム・ディーンが分析している件にも言及しておいた。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

生殖＝再生産はコストもかかるし暴力的だし、というわけで、「人類を継続する」ということ自体が「何らかの人工的プロセスに置き換えられる」時代が来るのかもしれない。それを人類の総自殺と見なさないレトリックが整備され、受け入れられる時代が。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

そのときに問題になるのは生命の定義でしょうね。これから、19世紀から20世紀はじめくらいの生命哲学を、人類絶滅と「継続＝復活」の文脈で集中的に読みなおすことが必要になりそうだ。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

「従来の感覚ではもはや生物でないもの」として人類を「生き延び」させようとする大多数の勢力に対して、「従来の感覚での生物への執着」を擁護せんとする「保守派」が抵抗するという局面……

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

男らしさ、というと、C-G-Cみたいな単純なコードのエレキギターをかき鳴らし、日々を勇気づける歌詞を叫ぶように（音程を屈曲させることなくまっすぐでガラガラした発声で）歌って、「オイオイオイオイ！」みたいなかけ声が入るやつ（？）も、「他者」の音楽だなと思う。ラーメン屋でかかってた。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

男らしさへの同一化がうまくできないという立場からは、男らしさっぽいものに対してはカリカチュア的になる、というか、率直に言ってコケにしたような態度をとることになるのだが、しかしそうでありながらその男らしさっぽいものを愛してしまう、という構造。これはミソジニーに似ているのか。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

憎みながら愛してしまう、というのの対象を女性にすると、それは典型的なミソジニーの構造だと批判される。同じ構造を対-男性で言う場合は、どうなのか。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

それにしても、ベルサーニの「直腸は墓場か？」に松原洋子さんが深く「いいね！」を表明していたことに、心動かされた。あの日のセッションで、考えが次のステップに進んだ感じがする。合同授業って、こちらも勉強になるからとてもいい。立命館の先端総合学術研究科では合同授業が盛ん。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ベルサーニの「直腸は墓場か？」は、ウケ・ネコの精神分析。セックスの本性は受動の側であり、そして受動の側の快楽は、死にまで至る徹底的な自己解体であるとする。一部の倒錯者はそれを自覚的に快楽にするが、それでも不安である。マジョリティはそれゆえにセックスを嫌っている。危険だから。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ベルサーニは、セックスを、思いやりや慈しみのようなものとして理解しようとする解釈をはっきり斥けている。セックスはどうしようもなく本質的に自己破壊的なのであり、それを抑圧するために「優しい」セックス観が要請される。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ベルサーニの「マゾヒズム一元論」を超通俗的に要約すれば、セックスの理念な極とは、もはや何が何だかわからなくなり死の不安さえ蒸発してしまう「アヘ顔ダブルピース」状態であり、我々は皆それを恐れつつ、それに漸近しようとするということである。

千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

人類が全員、アヘ顔ダブルピースの超快楽のなかで絶滅する、これは、近代的主体にとって許せないことだろう。