Cs137の環境半減期

再摂取がない条件で生物体内でのCs137の減衰を考えるには物理的半減期とあわせて生物学的半減期を使いますが、再摂取や流入がありうる自然環境中でのCs137の減衰を考えるには物理学的半減期とあわせて環境半減期を使います。 1/生物体内での実効半減期=(1/物理的半減期 + 1/生物学的半減期) 1/自然環境中での実効半減期=(1/物理的半減期 + 1/環境半減期) 続きを読む
科学 放射性セシウム 物理的半減期 環境半減期
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<言葉の意味の整理>
まとめ公開後に以下のご教示をいただきましたので、タイトルを「Cs137の生態的半減期」から「Cs137の環境半減期」に修正しました。まとめ本編に収録したツイート中の「生態的半減期」は「環境半減期」に読み替えてご覧ください。

ryoko @Ryoko_is
読み間違い・誤訳で騒ぎになるというのもけっこう繰り返し起きてるよね .@parasite2006 さんの「Cs137の生態的半減期」をお気に入りにしました。 togetter.com/li/835395
buvery @buvery
@Ryoko_is @parasite2006 (英語の問題ですが、ecological half life を 生態的半減期と訳すより、環境半減期とした方がわかりよいと思います。)
nao @parasite2006
@buvery @Ryoko_is 有難うございます。IAEAのこの資料bit.ly/1TvhL5Z のp.7の定義によれば生物学的半減期(biological half-life)とは追加摂取がない状態での生物における物質移動による半減期、生態的半減期(続く)

(↑引用の資料はIAEA Technical Report 472 "Handbook of Parameter Values for the Prediction of Radionuclide Transfer in Terrestrial and Freshwater Environments" (2010) といい、全文のPDFファイルが訂正とともにここhttp://bit.ly/1RbZ97e に公開されています)

nao @parasite2006
@buvery @Ryoko_is (続き)(ecological half-life)とは追加摂取がある状況での生物(自然環境における野生動植物)における物質移動による半減期とあるのですが、水や土壌のような無生物からの物質移動による半減期は環境半減期で大丈夫なのですね?
nao @parasite2006
@buvery @Ryoko_is (別の所で環境半減期というのは生態系や食物連鎖の中の半減期という説明を見たのですが、この場合関係する複数種の生物種の生態的半減期のうち一番長いものをとるのか、それとも個体数をかけて全体の量の半減期を実際に求めるのかと考え込んでいます)
buvery @buvery
@parasite2006 @Ryoko_is これですが、Ivanovらの元論文では、ecological half life を The time during which half of the activity of the radionuclide is
buvery @buvery
@parasite2006 @Ryoko_is removed from the soil layer, without taking into account its physical decay. と言っていますから、『物理的減衰』以外のものすべて、です。
buvery @buvery
@parasite2006 @Ryoko_is だから、IAEAの定義に関わらず、途中に動植物が関与しているかに関わらず、『物理的崩壊によるもの以外残り全部の減衰』のことだから、結局『環境半減期』でよいと思います。
nao @parasite2006
@buvery @Ryoko_is 重ねてお礼申し上げます。おかげさまで確信を持って「生態的半減期」を「環境半減期」に置き替えることができます。
nao @parasite2006
@buvery @Ryoko_is おとといこういう説明bit.ly/1fiUZ1B bit.ly/1fiV9pD を受けて、この原著者の言葉の使い方はよほど変わっているのだろうか、それともこの分野ではこういう言葉使いをするのかと悩んでいました。
buvery @buvery
@parasite2006 @Ryoko_is 書いているのがロシア人で、英語は外国語なので、ecological もenvironmental も似たようなつもりなんだと思います。
nao @parasite2006
@buvery ありがとうございます、これですっきりいたしました。
buvery @buvery
@parasite2006 @Ryoko_is 生態学的半減期の説明をした人は、『環境の中での動物の集団での半減期』というIAEAの使い方です。それは、それでよいのじゃないでしょうか。ま、ここの話は特定の動物の集団の話じゃないので、無関係です。

本編ここから

発端

Wadanhyll Aethelwine @WadeAthel
アメリカエネルギー省のデータベースに有名な論文が出てる。 一般的に言われてる放射性物質の半減期は単なる計算値で、実測値とは別。 Cs-137の実際の半減期は180年から320年と言ってるね osti.gov/scitech/biblio… pic.twitter.com/jFz9lrFLbY
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これはウクライナと米国の共同研究結果で、2009年に米国化学会発行の雑誌Environmental Sciences and Technologyに投稿された論文の原稿です(この雑誌のホームページで著者名で検索してもヒットしないのは、これが実際には学会のポスター発表の要旨として提出されたものだったためとわかりました。おそらく要旨集として特別号を発行して載せたものと思われます)。
チェルノブイリ事故後の1986年中に原発から4-60 kmの範囲に全部で11カ所の測定点を設けて(残念ながら測定点の位置を表示した地図はありません)土壌中の放射性物質濃度を事故の21.3年後まで繰り返し測定して垂直方向の分布の時間変化を調べ、地表から5 cmまでの土壌層中のCs137とSr90の濃度の環境半減期を求めています。320年というのは測定点ごとに算出されたCs137の環境半減期のうち最大の値です。

解説その1

kikumaco(8/6,9大阪) @kikumaco
@hyd3nekosuki ecological half time が物理的半減期より数倍長いと言ってるだけですよね

論文原稿の3ページ目の脚注に環境半減期=ecological half-timeの説明があります。
"The time during which half of the activity of the radionuclide is removed from the soil layer, without taking into account its physical decay."
「物理的崩壊を考慮しない場合、放射性核種の活性の半分が土壌層から除かれるのにかかる時間」

kikumaco(8/6,9大阪) @kikumaco
@hyd3nekosuki 生物学的半減期と同様の概念だし、今さらCs137の物理的半減期が大きく変わることなどありえないと分かりそうなものですが

再摂取がない条件で生物体内でのCs137の減衰を考えるには物理的半減期とあわせて生物学的半減期を使いますが、再摂取や流入がありうる自然環境中でのCs137の減衰を考えるには物理学的半減期とあわせて環境半減期を使います。

1/生物体内での実効半減期=(1/物理的半減期 + 1/生物学的半減期)
1/自然環境中での実効半減期=(1/物理的半減期 + 1/環境半減期)

物理的半減期が原子核の崩壊がどのくらい頻繁に起こるかを表すのに対し、生物学的半減期や環境半減期は物質の移動の速さを表し、同じ元素なら異なる同位体でも(放射性の有無を問わず)共通です。

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コメント

nao @parasite2006 2015年6月16日
タイトルを変更しました。
myasu1959 @myasu1959 2015年6月16日
生態的半減期を考慮すると環境中の半減期は27年ぐらいになるのか
nao @parasite2006 2015年6月16日
改訂のため一旦非公開に切り替えます。お気に入りにして下さった皆様申し訳ございません。しばらくお待ち下さい。
nao @parasite2006 2015年6月16日
まとめを公開しました。
nao @parasite2006 2015年6月16日
@h_okumura 先生、@sitesirius さん、@kikumaco 先生、どうも有難うございました。
nao @parasite2006 2015年6月16日
@shanghai_ii さんのツイートを4件追加させていただきました。有難うございました。この論文が騒がれるのは今に始まったことではなかったようです。
mnianzinno @mnianzinno 2015年6月16日
非放射性のCsをばらまいた時の半減期が180年から320年ってことになるんですかね。
ゆ〜たん @Iutach 2015年6月16日
「祈ります」って、少しでも悲惨であれ、と祈ってるみたいだね。素直に「呪います」と名乗ればいいのに。
ゆ〜たん @Iutach 2015年6月16日
ところで、もし半減期が10倍になるならBqやSvは1/10になるんだけど。「悲惨であれ」と祈る人にとっては却って都合悪いんじゃないのかしら?
neologcutter @neologcuter 2015年6月17日
昔のチェルノと今の日本じゃ色んな意味で状況が違いすぎるって―のにね。特に「言論の自由」と「ソ連共産党の無責任ぶり」。
Naoki_O @nananao2236 2015年6月17日
きくまこ先生は「今さらCs137の物理的半減期が大きく変わることなどありえないと分かりそうなもの」と言われるけれど、彼らはとにかく事態が悪い方向に進んで欲しいと熱望しているので、誤解でも曲解でも嘘でもなんでも、願望を肯定してくれる話に飛びつくのですよ
園芸家 @engeikana 2015年6月17日
いーわさんに伝えたい。
Naoki_O @nananao2236 2015年6月17日
mnianzinno だいたいそんな考え方で良いと思います。論文を超斜め読みした感じだと、Cs137の量を実測した結果として(こなみ先生の計算の逆をやって)180〜320年と言う数字が出ているようですが、そのくらいの大雑把な精度ではセシウムのどの同位体でもその範囲に入るんじゃないでしょうか
菌象(牛歩堂) @giwhodaw 2015年6月17日
「まったく何もしなくても崩壊して自然に減っていく」速さを示すが物理的半減期だから、「物理学的半減期が約30年のところ、実測ではそんなに減っていなかった」という事態は「新規に供給」されなければ起こるはずがないですよね。
細川啓%求職中断 @hosokattawa 2015年6月17日
結局、半減期というものを理解していない人がいるという話か。
天むす名古屋 Temmus 𓃠 @temmusu_n 2015年6月17日
半減期はいくつか種類があって、それらを一定の仕方で合成して初めて実際の減少の勢いが分かる、ということです。誤読しないで。
opa2604-discon @opa2604 2015年6月17日
何にしても「教養」はだいじだということですね。少なくとも自分が単なる無知ではないかと疑う程度の教養は持ちたいものです。
w_trlvr @w_trvlr 2015年6月18日
このデマばら撒いた人のタイムラインみてると、英語読めるだけで自分は人より情強とか思っていそうな雰囲気。おまけに、専門家を頭の悪い人と呼んだりしていて、かなりイタイ。僕は元の論文なんぞまるで読めないけど、(多分)身の程を知ってるつもりなので、これからも素直に専門家の意見に耳を傾けようと思う。
BugbearR @BugbearR 2015年6月18日
「外から供給されるから減り方が遅いのだ」はあるとして「供給元は破損した原発からの漏洩だ」ということはまずなくて、一度拡散した放射性物質が別の所に移動する(例えば山から雨の影響を受けて平地に流れてくる)というのが実態かと。ただ、セシウムは土に強く結合するのと、生活する上で流れてくる土に接する機会は少ないので問題は少ないかと。
nao @parasite2006 2015年6月19日
セクション「よく読みましょう」を全面削除しました。
nao @parasite2006 2015年6月19日
タイトルを「Cs137の環境半減期」に変更しました。@buvery さん、ご教示感謝いたします。あわせてまとめの説明文も改訂しました。
nao @parasite2006 2015年6月19日
原論文(2009年)http://1.usa.gov/1J0NZTw とその続報(2011年)http://bit.ly/1JYIiUZ の内容紹介を追加しました。
nao @parasite2006 2015年6月19日
Cs137の環境半減期(チェルノブイリ事故後21.9年間について測定)が物理的半減期と比べて大幅に延長されているのが観察されたのは、チェルノブイリ原発から4-12 kmの「立ち入り禁止区域」内の6地点。前報(1996年)で報告した同じ場所の事故後9年間の環境半減期の測定値と比較しても長くなっていました。
nao @parasite2006 2015年6月19日
著者らは続報(2011年)http://bit.ly/1JYIiUZ で、チェルノブイリ原発の西5 kmの測定点で1999-2009年の土壌中のAm241/Cs137比の変化幅が物理的半減期からの予測より大きいことを報告し、(Am241/137Cs比の値が土壌中より大きい)溶け落ちた核燃料由来の微粒子が原発から飛んできたことによると説明しました。
nao @parasite2006 2015年6月19日
1999-2009年はチェルノブイリ原発のシェルターの新設工事の開始(2012年)http://bit.ly/1IROb4R 前であり、事故後急造されたコンクリートシェルター「石棺」の劣化が進んでいった時期にあたります。
nao @parasite2006 2017年11月21日
「まとめ作成から2年半後に再び誤解が蒸し返されました」の項を追加しました。あわせて2011年続報のAm241/Cs137比の変化から、1999-2009年の10年間にチェルノブイリ原発から5 km圏の土壌(地表5 cm)に新しく飛来した核燃料由来の放射性微粒子の割合を試算した結果を収録しました。なおこれはチェルノブイリ原発の新シェルターの工事が2012年に始まる前の話で、シェルター工事は2016年11月に一応石棺を完全に覆うところまで完了しています。
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