山本七平botまとめ/【変換期にみる日本人の柔軟性/ベンチャーの精神②】「これより先に行くな(non plus ultra)」というタブーを破った元祖ベンチャービジネスマン、コロンブス

山本七平『1990年代の日本』/変換期にみる日本人の柔軟性/ベンチャーの精神/元祖ベンチャービジネスマン/106頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【元祖ベンチャービジネスマン】今日のような相互依存的な世界が形成されたのは、コロンブス以後の事である。 世界的な規模で通商や植民…海外投資が行われるようになった「地理革命」の時代の代表選手クリストファー・コロンブス…はあらゆる角度からみて、元祖ベンチャービジネスマンであった。

2015-06-09 08:38:55
山本七平bot @yamamoto7hei

②ベンチャービジネスの特色は、未来志向的(フューチャー・オリエンテッド)な事である。そして未来と大胆に取り組む事である。 今日、ロボットとかバイオテクノロジー、或いはマイクロ・エレクトロニクス…等々の分野で行われている事は、この二つの条件からみて、ベンチャービジネス的である。

2015-06-09 09:09:19
山本七平bot @yamamoto7hei

③コロンブスはこの二つの特徴からみても、まごうかたなきベンチヤービジネスマンであった。 コロンブスは「これより先に行くな」(non plus ultra)というタブーを打ち破り、未来との遭遇を果たし、一応の成功を収めたからである。コロンブスの時代は、世界史の劇的な転換期であった。

2015-06-09 09:38:50
山本七平bot @yamamoto7hei

④ルネサンスがヨーロッパ人の内面的発展であったのに対し、コロンブスのアメリカ大陸発見(1492年)、ヴァスコ・ダ・ガマの東洋航路発見(1498年)、マゼランの最初の世界一周航海(1519~22年)などの「地理上の発見」は、ヨーロッパ人の外面的拡大と呼ばれることがある。

2015-06-09 10:09:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤この画期的なイベン卜は、最初、コロンブスによってなされたのである。 コロンブスの時代は、歴史的にいえば、株式会社誕生の時代でもあった。 コロンブス自身も、株式会社から派遣された「冒険商人」であり、コロンブスの事蹟は、典型的なベンチャービジネスマンのそれであった。

2015-06-09 10:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥このジェノア生まれのイタリア人は前例を打ち破る事に並々ならぬ関心をもっていた人物であった。また未来を展望する能力(テレオクラート的能力)にも卓越したものがあった。 この前例を破るというベンチャーな精神と未来展望能力とがあい合わさって…コロンブスの名を不朽ならしめたのであった。

2015-06-09 11:09:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦それ以前に、バイキングがアメリカ大陸へ渡航した、という古譚や考古学的な記録が残っているという。 しかし、それらは、スポーツの記録でいえば、非公認記録であり、正式には、アメリカ大陸は、このジェノア生まれの船長とその船団によって「発見」されたのである。

2015-06-09 11:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧この偉業をなしとげたコロンブスの傑出した「産業の将帥(キャプテン・オブ・インダストリー)」ぶりは、現在のベンチャービジネスマンの行動を考えるうえで、はなはだ示唆に富んでいる。 その第一は「地球は丸い」という確信をもっていたことである。

2015-06-09 12:09:17
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨この説は、トスカネリの説であり、当時徐々に知られるようになってはいたが、「実証」されてはいない考えであった。 よく知られているように、コロンブスの時代は、急速に科学や技術が発達した時代で、中世から近世へ大きくシフトし、それまでの科学技術や確信が大いにゆらいだ時代であった。

2015-06-09 12:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩このような時代に生きたコロンブスは、旧き学問や知識に何をも囚われない人であった。 進取の気象に富み、新知識を身に着けていたから、彼は果敢にも、当時の「常識」を打破し、破天荒ともいえたエンタープライズ(企て、企業)に身をゆだねることができたのである。

2015-06-09 13:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪第二に、その確信を具体的な行動計画(アクション・プログラム)に移すための具体的な方法論をもっていたことである。 コロンブスの場合、航海術や天体観測術などに通暁し、航海のノゥハウを自家薬籠中のものにしていたからこそ、「これから先に行くな」のタブーを打破することができた。

2015-06-09 13:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫確信だけのレベルに止まっていたならば、それは単なる「信仰」にしかすぎないが、この確信を具体的な実行にまで移し変えるには具体的な方法論が必要である。 しかしこの場合でも複数の方法論が必要で、幾つかの選択可能(オルタナティブス)な方法論と実現可能な手段をもっていなければならない。

2015-06-09 14:09:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬コロンブスが、単なる「冒険家」でなく、あくまで大きな企図をもっていた「企業家」であったことを示す証拠は、いくつもある。 その一つの現われは、一つの確信を実行するにあたって、複数の方法論をもっていたことである。 一つの方法でうまくゆかなければ、他の方法を試みてみる。

2015-06-09 14:38:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭このような「実験的精神」がなければ、コロンブスの偉業はなしえなかったであろう。 第三には、どのようなすぐれた才能や素質をもっていたにしても、一人のできることはそう大したものではなく、多くの人々の協力を仰いでこそ、初めて大きな事業ができるということである。

2015-06-09 15:09:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮コロンブスの場合、それはサンタ・マリア号(百トン)、ピンター号(50トン)、ニーニャ号(40トン)の三隻120人からなる船隊の船員達である。 今でいえば、月面に到達することよりもリスキーな大きな偉業をなしとげたのであるが、この史上初の壮挙には、はなはだ大きな危険が伴った。

2015-06-09 15:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯コロンブスの場合にも、船員の反乱があったし、マゼランの場合も部下の反抗にあい、最終的には雄図の半ばで命を奪われる結果になっている。 目的を達成するうえでの困難とは別に、チームワークをとっていくことの困難も、新しい大きな企ての場合には必ず存在する。

2015-06-09 16:09:12
山本七平bot @yamamoto7hei

⑰従って、ベンチャービジネスの指導者には「組織をつくる能力」が必要になってくる。

2015-06-09 16:38:51