山本七平botまとめ/【変換期にみる日本人の柔軟性/ベンチャーの精神③】創業者が備えている三つの才能、シーアー(予言者)、アジテイター(煽動者)、オルガナイザー(組織者)

山本七平『1990年代の日本』/変換期にみる日本人の柔軟性/ベンチャーの精神/確信とパーソナリティ/109頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【確信とパーソナリティ】ベンチャービジネスを率いる様なタイプの経営者にはシーザー型のカリスマ的資質に恵まれた人の方が多い。コロンブスもそうであった。また洋の東西を問わず、創業者にその種のタイプの人が多いのは、創業者は今までなかった事をする人々だからである<『1990年代の日本』

2015-06-09 17:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

②以上のように、ベンチャービジネスには、 (1)ある事業目的達成のための確信があること、 (2)確信を実行に移す方法論(複数の手段)のあること、 (3)目的を遂行するのに当って、その複数の手段を具体化しうる機能的な組織をもっていること、 この三つの条件が必要である。

2015-06-09 17:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

③この側面から考えてみるとベンチャービジネスの様相が明らかになってくる。 例えば(3)の目的を遂行するに機能的な組織をもっている事であるが、これは特に研究開発型の企業の場合に強調してよい事である。 発明王トーマス・エジソンの最大の発明は研究所を作った事であるといわれる事がある。

2015-06-09 18:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

④エジソンは…天才であったが個人のできる限界と可能性をも充分に心得ていた。 (1)の確信がある事に関していえば、近世の企業家達はロックフェラーにしろデュポンにしろ、皆確信の人であり信念の人であった。 ただ確信を具体化するにはその方法論、ノウハウを充分に心得ておく事が必要である。

2015-06-09 18:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤日本の企業の場合にも、この事はいえる。明治時代初頭の三野村利左衛門、岩崎弥太郎などの人も、強い確信をもち、強烈なパーソナリティをもっていた人であった。 あるいは渋沢栄一にしろ古河市兵衛にしろ安田善次郎にしろ、創業者は、みな強い確信と強烈なパーソナリティをもった人々ばかりである。

2015-06-09 19:09:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥当時の日本は、近代国家の創建期であり、国家自体も経済的離陸を遂行しなければならない時期に際会していたから、当然、企業もベンチヤービジネスであった。 そして、驚くべきことは、それまでの日本にはない組織や制度を、目的達成のために、短時日のうちにつくりあげていったことである。

2015-06-09 19:38:50
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦コロンブスの時代から少し下って十七世紀になると、それは「合理主義」の時代に入っていくが、この時代を表徴するのは、時計、簿記、物指しの三種の神器である。 これらはいずれも計量に関する物である事に注意する必要がある。 この計量の思想は既にコロンブスの時代に芽生えていたものである。

2015-06-09 20:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧コロンブスの航海も、思慮と計算に基づいていたからこそ、確信をもてたのである。 コロンブスの時代のすぐ後に哲学者のフランシス・ベーコンが出ているが、ベーコンは、西洋が東洋に優越する三種の神器として、羅針盤、火薬、印刷機をあげた。

2015-06-09 20:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨この二つをみてもわかるように、いずれも、東洋で発明されたものばかりであった。 しかし、それを総合して組織化して合理的に運用して武器に変えたのは、西洋人の大きな力であって、この武器を実用化することによって、海外に植民地を建設したのである。

2015-06-09 21:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩しかし、何といってもコロンブスの偉大な業績は世界史の方向を変えた事にある。 このようなコロンブスの事蹟に関して思い出すのは、明治のジャーナリスト山路愛山の言説である。 愛山は一つの大きな事業(エンタープライズ)を成功裡に遂行するには、三つの才能が必要だという事をいっている。

2015-06-09 21:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪彼のあげている三つの才能というのは、 シーアー(予言者)、 アジテイター(煽動者)、 オルガナイザー(組織者) のことである。

2015-06-09 22:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫先の例でいうと、シーアーの能力というのは、確信あるいは事業目的をはっきりともっていることであり、アジテイターの能力とは、説得力や煽動する能力のことであるが、コロンブスの場合でいえば、イザベラ女王を口説いて、資金を提供させたという類の能力のことをいっている。

2015-06-09 22:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬最後のオルガナイザーの能力というのは、船長として船員を統率する能力に相当する。 ベンチャービジネスを成功させるには、山路愛山のいう三つの才能が必要であろう。 ところで、スペイン人のあこがれは「サンチョ・パンサを連れたドン・キホーテになりたい」ということであるそうである。

2015-06-09 23:09:17
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭ドン・キホーテは理想主義の権化、サンチョ・パンサは現実主義の体現者である。つまりスペイン人の理想は現世を忘れないで久遠の理想を追うという事にある。 これはイザベラ女王をパトロンとしたコロンブスにこそふさわしい言葉であろう。 また、この成句はベンチャービジネスマンのものでもある。

2015-06-09 23:38:52