専門家ネットワークにアクセスするためのポータルとしての大学

ツィート群は人文系に言及していますが、学問全般にも通じます。
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Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

国立大学、特に地方の小規模国立大学で、人文系や教員養成系を減らせという話があります。その問題について少し論じてみたいと思います。

2015-06-16 20:02:15
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

人文系の学問に現に携わっている人は、大学の人文系縮小政策に反対する人が多い印象です。ただ、こうした人がいくら反対しても、政策を打ち立てた人たちには痛くもかゆくもないというのが実情でしょう。結局のところ、人文系の必要性について共通見解がないので、議論がかみ合わないのです。

2015-06-16 20:04:32
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

人文系の大学教授が人文学の素養が大事だとかすぐに仕事には役立たなくても教養が豊かな人物に育つとか言って、人文系学問のメリットを説明したとしても、人文系縮小政策を提唱する人にとってはそれがメリットに見えないか、大した効果のないメリットにしかすぎないので、説明が功を奏さないのです。

2015-06-16 20:06:43
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

大学で人文系を縮小されないようにるためにはどうすればよいかについて。一つの方法として、縮小しようという政策を実行しようとしている人に考えを変えるように説得することが挙げられます。ですが、これはあまりうまくいかなさそうです。そもそも人文系を擁護しようとする人と考えが違うので。

2015-06-16 20:10:30
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

人文系のメリットを挙げるだけでは、人文系縮小政策を撤回させるには難しそうです。というのも、縮小には縮小なりのメリットがあるわけで、縮小のメリットが人文系を残すメリットを超えているかどうかを示すのが非常に難しいから。そもそも、縮小のメリットと残すメリットは比較しがたいですし。

2015-06-16 20:12:17
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

人文系の大学教授は人文系を守るために「人文系にはこんなメリットがあります!」と言うだけでは足りず、「人文系によってもたらされるメリットは、人文系がなくなることによるメリットより大きいです。費用対効果があります!」と言わないといけないと思うわけです。

2015-06-16 20:13:48
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

人文系をやっている人だと「いや、人文系の必要性をそんな費用対効果で論じちゃだめでしょ」と思う人もいるかもしれませんが、人文系縮小政策を推進しようとしている人たちは費用対効果で論じようとしているので、費用対効果を言わない限り、同じ土俵に立てず、話すら聞いてもらえないことになります。

2015-06-16 20:17:31
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

地方の国立大学で人文系を縮小しようとすることについて。地方の国立大学の先生方は、意外と地元自治体の外部アドバイザーとして働いていることがあります。自治体は自前で高度な専門家を雇用しておくことは非常に難しいので、専門家が要るときに地方国立大が使えるのは自治体にとって大きなメリット。

2015-06-16 20:21:43
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

地方国立大が縮小すると、地元の自治体は高度な専門家が必要になったときに地方国立大の先生に頼めなくなります。そうすると、東京や京都からお願いして先生を呼ばなくてはならないということになって、かなり面倒なことになります。大都市と地方の格差が広がることにもつながります。

2015-06-16 20:25:00
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

「人文系の先生なんて自治体の施策に関係ないでしょ?」と思う人もいるかもしれません。法学や経済学の大学教授ほど関係するわけではないのですが、地域の英語教育改善のために大学の英語教員を呼んだり、自治体の公文書の管理方針を決めるのにアーカイブ学の先生を呼んだりということはありえます。

2015-06-16 20:28:27
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

地方国立大の先生っていわば町医者的なところがあって、地元からアドバイスを求められたら答えられる範囲で答えます。自分で手に負えないようなら、町医者が大病院の専門医に紹介状を書くように、学者のネットワークをたどって大都市部などの大規模大学の先生を紹介することもできます

2015-06-16 20:31:09
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

地方国立大単独で見ると、1つの研究分野に大してスタッフもいるわけではないですし、必ずしも華々しい研究業績を上げているわけではありません。しかし、学者はネットワークを作っているので、地方国立大に小さな研究単位があれば、それがポータルとして広い研究の世界にアクセスできるのです

2015-06-16 20:33:43
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

歴史学でも文学でもよいのですが、地方国立大に小さい研究室でもあれば、そこに学んだ学生がその研究室が持つネットワークを通じて、国内外の有力で大きな大学の大学院でさらに研究を深めることにつなげられるので、ポータルとして地方国立大に小さくても研究室があると学生にとってはうれしいところ。

2015-06-16 20:36:48
Fumiaki Nishihara(西原史暁) @f_nisihara

なので、地方国立大で人文系などを縮小すると、その地域では高度な専門家になかなかアクセスできなくなります。こうなると、高度な専門家にアクセスしやすい大都市部が有利になり、そうでないところは不利になります。ですので、拙速に地方国立大の縮小を行うと、地域間の格差拡大が生じかねません。

2015-06-16 20:38:56