
『八戸浦”くじら事件”と漁民』に見る、漁民から見た捕鯨
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kamekujiraneko
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八戸浦"クジラ事件"と漁民 : 「事件百周年」駒井庄三郎家所蔵「裁判記録」より
岩織政美著 ; 田名部清一サポート
「八戸浦"くじら事件"と漁民」刊行委員会, 2011.1
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB0496926X
八戸浦”くじら事件”と漁民 事件を語る唯一の裁判記録を紐解く 八戸自由大学第14回講座より抜粋
http://soumai.p-kit.com/page189957.html
「八戸浦“くじら事件”と漁民」出版会
http://t-niioka.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-efa4.html

岩織前市議が上梓したのが、『八戸浦“くじら事件”と漁民』。1911年、八戸の漁民1000人が「一揆」に蜂起した出来事を扱っています。なんでも、漁業史の空白を埋める貴重な郷土史にしあがっているのだとか。資本主義勃興期の漁民のたたかいの一つの典型としても面白いかもしれません。
2011-01-30 17:32:33
「八戸浦“くじら事件”と漁民」、警鐘を鳴らして漁民がゲリラの様に集結、捕鯨会社事業所裏手から鯨皮を掲げながら突撃し社員や解剖夫と大格闘始めたという記述で笑っている。
2015-06-20 21:56:23
巡警が抜剣したので、対抗する為高所に昇って鯨骨を投げたり鯨油使って建物に火を付けたりしたので「惨澹を極むる修羅の港」になったらしい。
2015-06-20 22:00:21
漁民さんサイド、「白足袋を履いた二~三十名の決死隊」を作り常に先陣に立って獅子奮迅の働きをし部下を指揮していたとの事なので戦争慣れし過ぎている。
2015-06-20 22:07:26
反対の理由としては「鯨の解体処理場から排水や汚物が海に流れ出ることによって鰯魚をはじめ海草・ウニ・アワビに悪影響がある。鯨の加熱処理にともなって悪臭がでる、鮫港の景観を損なう、というのがおもなもの」であったらしいが、これ普通に公害問題ですよね。
2015-06-20 22:11:38
興味深い記述としては「捕鯨問題の歴史社会学」にも引用されている「伊藤昇太判事予審決定書」の「由来被告等の地方に於ては鯨を恵比須様と称して之を尊崇するの念熱く、鰯魚は鯨の遊泳に関する多しと為し、沖合遥かに鯨鯢の潮吹きを望見するや、合掌三拝して漁獲に幸あらんと祈るの慣習あり」ですかね
2015-06-20 22:32:42
「エビス信仰」は日本各地にあり、北前では鯨を取らなかったり伊豆では寛政六年に捕鯨反対請願が行われていた(くじら取りの系譜 中園茂生)とかは知っていたが、詳細な事例を見ると、おぉっとなるな。
2015-06-20 22:39:39
他には鯨会社焼き討ち事件の中心人物の1人とされている吉田契造氏による回顧録の「この地方では藩政時代から鯨をえみす(恵比須)さまとよび、鯨が鰯をつれてくるといってたいへん有り難っていた。その鯨をとる会社だからその設置に反対なのは当然のことであった」(187p) なども興味深い
2015-06-20 22:45:29
「捕鯨を許可する場合の地元の意見、衛生、水質汚濁等について次の『通牒』を出している。これは捕鯨基地設置について、どの町村でも漁民の反対があり、トラブルになっていることをふまえての措置であった。」 (八戸浦"くじら事件"と漁民 327p) 漁民からNIMBY扱いされていて草生える
2015-06-20 22:49:51
なおその通牒の中身は「根拠地や設置に関する所在地住民の意向」や「附近海水汚濁と同時に棲息来遊する水産動植物との関係」などを調査し、必要と認めらる事項有れば事項すると有るが、八戸においては無視されていた模様。
2015-06-20 22:55:17
「生計の手段を禁じられた漁民が禁漁期にホッキ貝を採ったとして検挙されていた」などの記述をみてうーんとなるなど。 なお期限外に捕鯨している捕鯨会社はお咎め無しだったので漁民がブチギレた模様。
2015-06-20 22:56:13
同じ様な事件がノルウェーでも起こっていたという指摘は興味深い。 フィンマルクのタラ漁民には鮫事業所近海の漁民達のクジラが豊漁をもたらすという「エビス信仰」と似たようなものが有り、漁獲高が落ち込んだ際には抗議したり、捕鯨基地を取り囲んでドアや窓を破壊した事も有ったらしい。
2015-06-20 22:58:26
他に宇出津(4ヶ月で閉鎖された)、銚子、鮎川でも現地漁民から反対されていて近代捕鯨のNIMBY感高い。 ただ海洋汚染に関しては1907年頃より鮎川で「鯨皮から鯨油やゼラチン、余剰肉などから鯨肥」を生産する方法が持ち込まれ、それを他の企業が模倣することで段々解決していったらしいが。
2015-06-20 23:00:10
なおそれまでは「鯨骨や内蔵物はそのまま海に投げ捨てられて」「海藻類や貝類を汚染し」ていたそうな。(同書 351p) 鯨体完全利用神話は何処にいったし。 やはり古式捕鯨と近代捕鯨は相当違うな、となるな(古式捕鯨でも油だけを取り肉を捨てていた時期は有るし、利用目的の主は鯨油だが)
2015-06-20 23:04:27
捕鯨関係ないが、吉田契造氏の「支那の苦力は、一日賃金が一五銭から二十銭で、二銭の栗の粥を食べている。炭鉱で石炭を採掘している連中で三十銭位であるから、一枚一円近い『するめ』を買うと3日も食事にありつけなくなる。」 という発言を見てリアルカイジだとなっている。
2015-06-20 23:13:50
しかし吉田氏、今から50年近く前に「昔から八戸前沖の漁業を見ていると、魚は漁獲が少なりつつある。昔、鯨も群れをなして前沖を泳いでいたが、今は郡泳どころか、姿も見えない。鰹も鮪も同じである。小さな鰯の如きものを除いて次第に消えて行くと考えると」とし
2015-06-20 23:14:50
何故か「日本の文化」というクソでかい主語で語られる事が多い捕鯨ですが、近代捕鯨普及の背景には、捕鯨の文化が無いどころか獲るのがタブーな地域にも捕鯨基地作って現地民の反対を金やらなんやらで押さえ込んでいた事実がある訳で、そういうの見ると「日本の」と言う括りには疑問が出ますね。
2015-06-20 23:21:57※もんもんさんの追記。今度のテキストは
捕鯨Ⅰ 山下捗登|法政大学出版会
https://books.google.co.jp/books?id=K3yTPwAACAAJ&hl=ja
捕鯨Ⅱ 山下捗登|法政大学出版会
https://books.google.co.jp/books/about/捕鯨.html?id=pr0wAQAAIAAJ&hl=ja

唐突ですが鯨を獲る鯨組にも「エビス信仰」は有って、こちらの場合は鯨と共に飛来するライ(アホウドリ)を「エビス」と呼んでいたらしいです(解体中の鯨肉むしゃむしゃ食べていても追い払わなかったとか 『捕鯨Ⅰ 山下捗登 185~186p』)
2015-06-21 20:45:28
古式捕鯨時代の鯨組にとってのエビスだったアホウドリも、結局手っ取り早く換金できる資源としかみなさなかった他の日本人によって乱獲されて、絶滅寸前にまで追いやられちゃったんだよね・・。信仰心を失った点でいえば、同じく乱獲に手を染めた近代捕鯨業者もイコールだけど。
2015-06-22 21:25:01