山本七平botまとめ/【十五年周期仮説でみる昭和史/昭和における変動①】マスコミが騒ぐ話題の予測は当たらない

山本七平『1990年代の日本』/十五年周期仮説でみる昭和史/昭和における変動/80年代を予測する/185頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【80年代を予測する】大正パイロット・プラントは大体、昭和5年で終る。 それから15年間の日本、履歴的にいえば方針を過った時代の日本については、すでに多くのことが記されているので、その時代と戦後は後まわしにして、80年代に目をやってみよう。<『1990年代の日本』

2015-06-19 10:38:53
山本七平bot @yamamoto7hei

②まず「80年代の予測」という課題だが、当初、これがたいへんに予測しにくかったことは否定できない。 では予測しにくいときはどうするか。 まず過去の予測がどれくらい当ったかを調べてみて、それを参考にするのも一方法であろう。

2015-06-19 11:09:12
山本七平bot @yamamoto7hei

③マスコミは、60年代にも、70年代にも、60年代はどうなるか、70年代はどうなるかの予測をやっている。 それは当っている面もあるし、当っていない面もある。

2015-06-19 11:38:55
山本七平bot @yamamoto7hei

④その方法はアンケートをとって、これをこう判断している、あれはこう判断しているというデータを収録しているのだが、それを見ると、ああなるほどこれは当っていると思われるものと、ぜんぜん当らなかったと思われるものがある。

2015-06-19 12:09:18
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤そこで、過去十年間の予測がどれくらい当ったのかを調べてみたいと思う。 それをすれば、いろいろ行われている80年代の予測が、実際にどれくらい当るか。 当るとすれば、どのようなものが当るかわかる筈である。 そこから始めてみたいと思う。 …(予測結果省略)…

2015-06-19 12:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥このように当っている方と、当っていない方と分けて、何が当って何が当らなかったのかと見ていくと、まず、そのときにマスコミが何かの理由で華々しく取り上げた問題に対する判断は狂っていることが明らかになる。

2015-06-19 13:09:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦例えば「自民党の単独政権が崩れるか」というのはどこから出てきたかというと、当時、公害反対運動が盛んであり、公害の激化、大学紛争、過激派の出現、住民運動、これらの激化がかさなり、それが社会不安を醸成して政治不安を招来し、そこで保革逆転が起るという見通しをマスコミが立て、(続

2015-06-19 13:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧続>”保革逆転”という言葉が一時流行語のようになった。いわばマスコミはその方向に世論を誘導しようとした訳で、そうなると皆が何となく逆転するように思う。 その為「自民党の単独政権は70年代に崩れる」という錯覚を抱くようになるが、これはマスコミ誘導の錯覚だから当らなくて当然である。

2015-06-19 14:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨また、70年代に「経口避妊薬が常用されるようになるか」の「なる」は当っていないわけだが、これは、ピル解禁をマスコミが大きく取り上げ、中ピ連などというのが出てきて、それを新聞から週刊誌まで大きく取り上げて、にぎやかな話題を提供した。

2015-06-19 14:38:55
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩こういう報道や一種の騒ぎがあると、70年代にはピルは解禁されるであろうという予測を人はもつ。 だがこれは騒々しい話題にすぎないからこの予測が当らなくて当然なのである。

2015-06-19 15:09:15
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪では非常に高い率で当ったのは何か。 それは伝統的な日本の社会構造、ないしはそれに対応している精神構造に基づいて判断したもので、これがほぼ当っている。 この傾向は80年代にも変化があるとは思えない。

2015-06-19 15:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫そこで80年代にいろいろな予測があっても、その中で当るものは、結局日本の伝統を踏まえての判断、いわば履歴書に基づく予測だと見てよいであろう。 同時に、いまの時点でマスコミが華々しく取り上げているがゆえにそうなりそうな錯覚は、大体当らないと見てよいのであろう。

2015-06-19 16:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬この点では60年代を探ってみてもほぼ同じなので80年代も同じと見てよいと思う。こう考えると80年代は”伝統的発想”に人々が戻っていくのか、逆に離れていくのか、これを見定める事が予測の焦点になってくる。 これを見る為に統計を調べていくと明らかに伝統的な発想に戻っていく傾向が強い。

2015-06-19 16:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭…統計数理研究所の統計をずうっと見ていくと、意識は明らかに保守化・伝統化しており、特に注目すべきは戦後生まれの若い人程この傾向が強い事である。 これは時とともに伝統的価値観が消失して行くのではないことを示している。

2015-06-19 17:09:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮…簡単にいえば、戦後的な価値観は徐々に稀薄になり、伝統的価値観が徐々に濃厚になっている。 その中で、戦前、戦後一貫しているのが「仕事一本やりの課長と人情課長とどっちがいいか」というアンケートで、戦前、戦後、現代全部を通じて「人情課長の方がいい」が圧倒的でそれが一貫している。

2015-06-19 17:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯社会構造と人間の精神構造は相対応して機能しているから、これらが80年代に急激に変化するとは考えられない。 むしろ変化せずにこの方向に進むという形になるであろう。 それが社会全般にどういう影響を及ぼすか。 国内のみに問題を限ると、これが最も大きな問題になってくるであろうと思う。

2015-06-19 18:09:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑰では、いったい80年代に大きな転換があるであろうか。 国内的要因だけを見ると、この傾向で見る限り、ないと見てよい。 大きな騒乱、たとえば安保デモのようなことはマスコミが如何に煽動しても起りにくいであろうし、起っても線香花火で終るであろう。

2015-06-19 18:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑱ということは社会はますます落ちついていくと考えていいわけだが、対外的要因が作用すると、必ずしもそうは言えない、 という面が出てくる。

2015-06-19 19:09:05