山本七平botまとめ/【十五年周期仮説でみる昭和史/昭和における変動⑤】エネ不足にお家芸「維持のための変革」で対応することしかできない日本

山本七平『1990年代の日本』/十五年周期仮説でみる昭和史/昭和における変動/日本特有の意識の転換/201頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【日本特有の意識の転換】しかし、これはおそらく日本の歴史においては例外的な時代であって、われわれは常にエネルギー不足と、もう一つ外貨不足に苦しんできた。 それで、これからはどうなるか、どういう状態にどう対処すべきかを考えねばならない。<『1990年代の日本』

2015-06-21 16:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

②たとえばオイル・ショックのようなことが起った場合に、これに対応する方法は二つしかない。 国内の体制が硬直している国は、国内体制の変革でこれに対応することができない。

2015-06-21 16:39:02
山本七平bot @yamamoto7hei

③すると外部を変化させる以外に方法がないわけで、そのため何らかの外交的な対策をとるか、あるいは軍事的な対策をとるかして、海外に進出する。 いわば、国内をそのまま維持するために外へ膨張するしか方法がない。

2015-06-21 17:09:01
山本七平bot @yamamoto7hei

④アメリカはその点では相当硬直した社会だが、ソビエトはさらに硬直した社会だから、いや応なく外へ出ていき外交戦を展開し、ときには軍事的な展開をしなければ、方法がなくなる。 ところが、日本はそうではない。 こういう場合、外の変化に対して国内を変化させて対応してしまう。

2015-06-21 17:39:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤こういう方法をとると、日本人は元来その方がうまい。 どちらの方法をとるべきかといえば、日本は日本的方法をとった方が有利である。 いわば国内体制を変えることによって、外の変化を吸収して対応してしまう。

2015-06-21 18:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥前に述べた「保守のための革新」を外に対して行う。 これが「外圧がないと変革がない」といわれる状態の基本だが、日本は個人も国家も、この方がやりやすい。 外国はこうはいかないのでいろいろ対外的方法を講ずる。 彼らはこれが大変にうまい。

2015-06-21 18:39:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦だが”天は二物を与えず”で、日本は前記のことが非常にうまいかわりに、外交がない。 以上のような行き方をすれば必要ないことになるから―― ”必要ない”と言うと語弊があるが、これは鎖国以来の伝統だから、大きな変化は期待できない。

2015-06-21 19:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧そのため、 よその国はこういうことをしている、日本はもっとうまくやれないものか という意見が常に出てくる。 だがこれはおそらくやってもむだである。 第一その具体的発想がないし、準備もない。

2015-06-21 19:38:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨それよりも日本の場合、国内体制を変化させて対応する、すなわち”維持の為の変革”が御家芸だから、それで対応した方がはるかに速くまたうまくいく。 では日本になじまない外交的発想とはどのようなものか。 例えば、イスラエルはどこから石油が来るのか。 アラブは全然売っていない。

2015-06-21 20:09:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩では石油はないのかというと、幾らでもあり自由に買える。 だいたい日本ぐらいの値段かもうちょっと安いぐらいで、車は自由に走っており、いっさい統制はない。 ではどこから来るのか。 ソビエトから来ているのだと言っても、だれも信用しない。

2015-06-21 20:39:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪そんな事はあり得ないと皆思っているが、あり得ない訳ではないので、あの国が本当に崩壊してしまうと困るのはソビエトである。 つまり、イスラエルに対抗するという形で中東に影響力を行使しているのであって、これがもしも本当になくなってしまうと、ソビエトは影響力を行使する方法がなくなる。

2015-06-21 21:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫そうなっては困るから逆に裏から石油を売る訳で、つまり、これが彼らのいう”外交”であり、イスラエルをてこにして逆にアラブに影響力を行使している訳である。これはアメリカもやり、ソビエトもやっており、片方は表向きで、片方は裏向きにやっている。 こういう事は日本人にはとてもできない。

2015-06-21 21:39:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬やれと言っても、おそらくできないであろうと、私は思う。 というのは石油ショックのときも、アラブに行ってひたすらおじぎをするだけが外交で、こういう形の圧力のかけ方をわれわれはしない。

2015-06-21 22:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭イスラエルをてこにして、アラブに影響力を行使して、石油をそこから引っ張り出したらと言っても、日本人にはどうせこれはできないに決まっているし、やれば失敗するであろうから、そんなことは考えない方がいい。

2015-06-21 22:39:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮それよりもむしろ国内体制を、これに対応するように変えた方が、我々はうまくいく。 そこでこういう場合は石油は世界市場に出回るのだから、ある程度の量は金を出せば買える。高い不利な買物になるかも知れないが、無理をしないで、その値段と量に対応できるように国内を変えてしまった方が早い。

2015-06-21 23:09:03
山本七平bot @yamamoto7hei

①国内を変えるとは、簡単にいえば、 今の状態を維持する為の変革を行え という事で、そしてその変革の為に国民が全エネルギーを投入すればそれでよい。 これが最も平和的な方法の筈である。 例をあげれば、全力をあげて石油を原子力に変える。 それをしても社会は何も変わらない。

2015-06-21 23:38:58
山本七平bot @yamamoto7hei

②配電される電気が石油によってできた電気が、原子力によってできた電気かは、使う方にとっては関係がない。 ただいままでと同じ値段で、いままでと同じ量を使えればいい。 これは”維持”である。<『1990年代の日本』

2015-06-22 08:09:03
山本七平bot @yamamoto7hei

③その維持のために、国内の一部を改革しなければならない。 これが日本人のやる伝統的な改革で、これをやらせればうまい。 そしてそのときの意識の転換は、実に速くできるという特技がある。 この転換が現にあり、たとえば「原子力発電反対」はだいたいなくなってきた。

2015-06-22 08:39:00
山本七平bot @yamamoto7hei

④さすがに新聞は「原子力発電を速く進めろ」とは書いていないが、日本語というのはたいへん便利で、そういうときは「エネルギー転換を急げ」と言っていればいい。 「転換を急げ」と言って、何に転換せよとは言わない。 しかし転換するものは原子力しかない。

2015-06-22 09:09:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤そんなことは暗黙の内にわかっていることで、わかっていてそれを言わない。 それで通じてしまうという、大変面白い点があるのである。 前に戦争中の昭和18年頃の投書に、何でもいいから戦争は終ってほしい、戦争はこりごりだととれる投書があると記したが、その表現もこれに似ている。

2015-06-22 09:39:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥これは日本人のもっている独特な表現方法で、すべてに通じる。 外国で日本語を勉強する、普通は辞典と文法書だけで日本語を勉強する。 その人間が日本に来ると、その勉強が役に立たないと言われる。 これは我々は一種独特の表現方法で対立を避けて、うまく事を運んでしまうからである。

2015-06-22 10:09:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦これも一種の「礼楽」的方法であり、我々はそれを子どものときから訓練されており、文化的なパターンになっているが彼らにはそれがない。 日本語はペラペラの親しいユダヤ人がおり、電話をかけてくると、日本人か外国人かわからないぐらいうまい。

2015-06-22 10:39:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧その彼が海外で日本語を学んで、日本にやって来てまごついたのは日本人の会話だというのである。例えば子供が店へ行くと「下さいな」と言って入ってくる。片方は「何を差し上げましょう」と言う。「これ下さい」「はい、どうぞ」と言う。 これは贈与の言葉であって「買う」という言葉が全然ない。

2015-06-22 11:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨言葉通りに受けとれば物をもらいにきたわけである。 「ください」と言うから、「どれ上げましょうか」と言う。 「これください」「はい、どうぞ」と渡した。 なぜここで金を払うことになるのか。

2015-06-22 11:39:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩日本語というのは贈与の言葉で売買を現わすという、実に奇妙な点があるが、私達はそれが当たり前で少しも奇妙とは思わない。 第一、店に入ったら商店の主人が「お前、何を買いに来たのか」と言えば、あんな店へ行ってやるものかという事になる。 イスラエルヘ行くと問答は言葉の意味通りである。

2015-06-22 12:09:05