ロバート・ケーガンの『歴史への回帰、夢の終わり』(2008年)の紹介

ロバート・ケーガンはネオコンの論客と思われているために日本でも余り人気がない可能性があるが、しかし私は彼の著作内容は優れていると思う。特に2008年のThe Return of History, the End of Dreams (2008)は、米国と中ロ等の政治体制を異にする大国がやがては対立に回帰するであろうことを見事に予測している。
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Brookings Foreign Policy @BrookingsFP

Robert Kagan on the U.S. defense budget and the deficit http://brookin.gs/qW9U

2010-12-29 05:47:35
fj197099 @fj197099

ロバート・ケーガンはネオコンの一人と思われているから(著書が『ネオコンの論理』という邦題で出たりした)日本でも人気がないのではと思われるところがあるが、私は彼の思考や議論には極めて優れたものを感じる。国際秩序を楽観的に捉えずその対立的な要素を正面から取り上げる所が特に素晴らしい。

2010-12-29 12:37:32
fj197099 @fj197099

紹介をするに値するケーガンの最近の著作。Robert Kagan, The Return of History and the End of Dreams, NY: Alfred A. Knopf, 2008. その論文版(http://bit.ly/9HvofI)。

2010-12-29 12:39:57
fj197099 @fj197099

冷戦後にフランシス・フクヤマは「歴史の終わり」といって自由・民主主義・市場経済の価値の共有が世界の標準になると主張したが、実際には歴史は終わらずむしろ権威主義国の台頭という「歴史への回帰」が起こっているのではないかと指摘した。今年の米中関係の悪化をこれほど見事に予測した本もない。

2010-12-29 12:42:06
fj197099 @fj197099

同時に米国やNATOとロシアとの関係も今は11月のNATOリスボン首脳会談によって一時的に「リセット」の空気が強くなっているが、やがては再び悪化に転じるだろうとの予測を可能にしてくれる本でもある。政治体制にせよ安全保障の問題にせよ、西側諸国とロシアの間には拭い難い溝がある。

2010-12-29 12:44:14
fj197099 @fj197099

「歴史への回帰」が起こることで、世界は「新冷戦」や19世紀の「大国間政治」に近い状況にならざるをえないだろう。政治体制を異にする大国と大国の国益を巡る耐えざるせめぎ合いが今後も続くだろう。国連安保理は機能不全となり、グローバルおよびリージョナルなガバナンスも停滞するだろう。

2010-12-29 12:47:13
fj197099 @fj197099

秩序の単位はグローバルなレベルで議論することが難しくなり(何が秩序かの共通了解がないから)、リージョナル、あるいは特定国家のブロックのレベルで形成される機会が増えるだろう。貿易の次元では既にはっきりそうした動きが起こっているが、今後は安全保障でもそういう流れになると思われる。

2010-12-29 12:48:53
fj197099 @fj197099

同盟、勢力均衡、抑止といった国際政治の古典的な概念が大国間政治のレベルで次々に「復活」してゆくだろう。今年中国が近隣諸国との間で起こした様々なトラブルが瀕死状態の日米「同盟」を「復活」させたのは正にその一例だ。六者協議は機能せず政治体制を共有する同盟こそ重要な要素となるだろう。

2010-12-29 12:51:55
fj197099 @fj197099

今後の中国との付き合い方において、政治体制の改革のない中国との「共存」はますます困難になると思われる。あるべき国際秩序の姿についての共通了解を形成できないのなら、対決はいずれは避けられない。せめて軍事力という物理的な力によって抑止と封じ込めを図るしかないということになる。

2010-12-29 12:54:10
fj197099 @fj197099

「関与と拡大」や「責任ある利害関係者」、それに「戦略的再保障」など、中国に大国としての責任ある行動を促す様々な努力を米国は行ってきたものの、どうもそうした努力に成功は余り見込めないようだ。2010年はそれがはっきりわかってしまった年だった。これからの米中関係は必然的に「荒れる」。

2010-12-29 12:55:45
fj197099 @fj197099

こういう構図はどうも第一次大戦の前の英国とドイツの関係(海軍大国とそれにキャッチアップする挑戦国)を彷彿とさせて落ち着かないのだが、結局「米中対決はあり得る」という構図から逃げないことが日本の為すべき事であろう。これからの時代、政治体制の共有という要素はますます重要になってゆく。

2010-12-29 12:58:38