P4Gの真エンディングからP4U2の「足立編」まで通して見てみると、足立透はユングが錬金術のメルクリウスやヘルメス・トートなどをさして言うのと同じく「トリックスターの典型的ないくつかのモチーフを一人で持ち合わせている例」として挙げることができるのではないかと思われる。
2015-06-29 22:11:37P4U2の「足立編」は、足立視点での彼のこれまでの経験と現状、そしてそれらに基づいて彼が抱いた「信条」と、その彼の行動がその「信条」に忠実に動くものであるということが、彼自身によって強調して綴られている。
2015-06-29 22:12:56ユングによれば、どんな「信条」も一方では元々ヌーメン的なもののの経験に基づいて表されたものであり、他方では事実はっきりと経験されたヌーメン的な作用の経験とそこから起こる意識の変化に対する忠誠に基づいているとされる。
2015-06-29 22:13:49これに基づけば、彼の「信条」やそれに基づいた行動は、彼のヌーメン的なものの経験によって変化した意識に特有の態度であり、それらは内的経験の領域における心的因子の発現について原則的につきとめられる一切のこと、つまり神話と同じく内的経験の精髄の吐露であり、
2015-06-29 22:14:55これは足立が「事件後の自分に残されたのは“確かな経験“とルールであり、それらをぶち壊しにされることは自分の矜持が許さない」と述べていることからもそう言えるのである。
2015-06-29 22:15:38彼がいう「確かな経験」とは、稲葉市における諸々の事件の最大の黒幕であるイザナミ(伊邪那美大神)から与えられた、ある種の、人間の内的世界と言える「テレビの中の世界」に自身や他者を入れ込むことのできる力や、その力をきっかけにして自分の始めた諸々の犯罪行為、
2015-06-29 22:16:33鳴上悠率いる「自称特別捜査隊」のメンバーたちとの対決、そして得体の知れないものがのしかかってくる重圧等、彼にとって名状しがたいがスリルのあるものとして彼を昂揚させた、彼の言う「ゲーム」からのものである。
2015-06-29 22:16:47また、その「ゲーム」において自身のとった態度・行動もまたその「確かな経験」に含まれている。それらの経験こそはまさに足立の自我意識におけるヌーメン的なものの経験、即ち集合的無意識を構成する諸元型と彼の自我意識の間における経時的・共時的相対と相互作用の経験であったといえる。
2015-06-29 22:17:24この「確かな経験」が足立の自我意識に頑なな「信条」を形づくらせたのであり、またその態度・行動も一貫してそれに則ったものとさせた。
2015-06-29 22:17:59そして彼の信条を形づくらせることになった「確かな経験」のうち、彼自身のとった態度・行動を導いていたのが、日本神話における神々の一柱として(つまり諸々の元型の一つとして)登場する「境界を司る神:アメノサギリ」(天之狭霧神)と同じ名前を持つ巨大な眼として表現された「集合的シャドウ」、
2015-06-29 22:19:12(もっと言えばこの否定的な側面を手引したのは、ストーリー内でアメノサギリとクニノサギリを生み出したとされる、太母の否定的な側面が神格化したイザナミである)
2015-06-29 22:20:12稲葉市における事件を起こしていた当時の彼においては、「バカみたいな人間関係、つまらない仕事、腐りきった社会を全てぶっ壊してやれば自分の望む世界がつくれる」という愉しみ本位の無目的な破壊欲からの「秩序転覆」、
2015-06-29 22:22:37そのおどけた調子も含めた半ば面白半分で半ば悪意のある狡猾なトリックによって人々を騙したり言い逃れたりしようとする性癖、しかしその狡猾なトリックは、自分よりも優れた能力を持つ者に対しては通用しない穴を元から見せていてそれを見ぬかれてしまうという愚鈍さを露呈させていたこと、
2015-06-29 22:23:20(愚鈍さという点に関しては、「歩く情報漏洩」ともいい表し得るほどのものであるが、本人は主人公たちに対して自分が犯人であることに気づくかどうかギリギリの線で緊張感とスリルのあるものとして楽しんでいる)
2015-06-29 22:23:58また以上も含めて彼の行動はほぼ全て露骨な欲望本位のものであったという、まさにトリックスターの元型的イメージに見られる大半のモチーフを、否定的な意味で併せ持ったイメージが見られていた。
2015-06-29 22:24:13