アルドノアゼロ・再視聴感想まとめ

インクエッジ @02Curry

「クランカインと呼んでくれ」てのは「セラムと呼んでくれ」と同じ、この自分が「いち個人」であることを(いまは/まだ)容赦してほしい、という欲求。本国説得が蹴られ「決意」したアセイラムがそれを破ってみせるのは「申し訳ないが、ここから先はあなたも自分を殺してくれ」というメッセージで…

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「お膳立て」は3人とも「誰かのために自分を殺す」方向で整えに向かってるんだよな。「生来の右の伊奈帆」が滅び、左の伊奈帆が彼の意志を果たすべく「忠実に成り切る」ってルートも含め。誰も幸せにはならないが誰かのための願いは果たせる状態、というのが一期全滅エンドの踏襲に近いと思う。

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和平を夢見て迂闊にも地球にノコノコ行って「嵌められる」ようなことがなければ、１話冒頭のような緊張状態のままであってもこんな戦火は起こり得ず、あたら血を流さずに「火星の女王になって和平にかじ取りする」コトができていた…という。アセイラムの行動も「やらない方がよかった」と纏められる。

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成果主義的な視点では、こいつらの行動はムダだった、やらない方がマシだった、何の「意味」もなかった…となる。しかし、わざわざムダ足を踏むすがたをみせること、ムダ足を踏むことの「意味」は話のスジガキや成果だけにない。負けて死んでも「意味」はあり、世界が地獄と化しても「意味」はある。

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このシーンの３人、スレインと伊奈帆のふたりは鳥影を目で追う芝居なのに、アセイラムの視線は終始微動だにしないんだよな。

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視線の先にあるものはコレだ。鳥を見上げて目で追うふたりに対し、アセイラムは… pic.twitter.com/Ke4BUVHiV4

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むしろその先、「遠ざかる３羽の鳥」から視線をついに外しそらを見上げるのよ。それが最終カット。アセイラムの幼年期の終わり。 pic.twitter.com/JoyiaclpeC

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「いろいろなものって？」 「未来です」 「未来…」 「良い事、悪い事すべて…見えるものはほんの少し先のことだけ」 「何でもわかるつもりでいました。多くの事はそのとおりだった」 「でも、本当に大切なものは何も見えていませんでした」 pic.twitter.com/0VFKjy5ft3

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「何でも見えるんだね、伊奈帆は」 「うん」 「でも、本当に知りたいことは何も見えないんだ」 「韻子ごめん。巻き込みたくなかった」 この芝居は共に同じく「月面で交戦する光」を見てのものだというのが小憎らしい。地球からでなく間際の月面基地からだからレムリナでも見える、という。

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あのときの「無意味な決闘」では「終わった」と呟いて腰を据えた伊奈帆に対し、「このまま終わるわけにはいかない」と呟いて「無意味な決闘」をはじめるスレイン。このタルシスが爆発のなかから飛び出すシーンの換骨奪胎は巧いな。 pic.twitter.com/mhGSSXOYvt

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タルシスvsスレイプニールの戦闘と交錯して置かれる地球軍vs月面残党軍の戦闘。「いつもの」ノリ良いBGMに乗せて描かれるが、このふたつは決して時間軸の順に展開はしてない。それも「いつもの手法」ではあるけれど。 pic.twitter.com/J2vB3aeUJB

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両機が決着の打突を与え合っている間に、あれだけの芝居ができる秒数が経過してるわきゃあないからなｗ同時進行している双方の展開をオーバーラップして見せている。 「敵機編隊が接近」 「全砲門狙え。カタフラクト隊全機一斉射撃」 ハークライト、バルークルスはこのシーンをもって姿を消す。

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彼らはサブタイそのものかつ冒頭１話の対となる「流れ星」と化す。この定番的シチュエーションはオマージュが繰り返されるが、これぞ原典ブラッドベリの「万華鏡」。オーバーラップする双方のシーン、ここでスレインの同志皆が一斉に散華してるんだ。 pic.twitter.com/lPPsbXv0be

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本作は知ってのとおり原典とは違う「その先」が付け加えられ、青い薔薇の「不可能」は「奇跡」に変わる。ふたりの背後にある両機の残骸は二期OPで冒頭毎回流れていた「左手を伸ばすスレイプニール、右手を伸ばすタルシス」の図。ここにくる。 pic.twitter.com/8ltRMXu1Aj

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それが本作での「地球に向かい流星になった者」の顛末。では「他の方向に向かった同僚たち」の方は…？　おっとこっちもハークライト＆バルークルスが「左腕」と「右腕」で一対の芝居をしてるじゃないか。「不可能」は手をとりあえば、もしやきっと…。 pic.twitter.com/Cp2cymYxj5

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伊奈帆とアセイラムが恋仲になり、そのアセイラムをスレインが連れ去る…というのが一期最終回の原案で、その原案に忠実に展開されたのがじっさいの一期最終回。撃たれるだのなんだのはその原案どおりのうえの「肉づけ」部分なので、「原案と違う」という言葉はまったく当てはまらない。

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マズゥールカ、最後まで「何もしない」彼のポジションを貫きとおして素晴らしい。何度も言ってるがマズゥールカは何一つ事態の進展に貢献してない。「最初から最後まで何の役にも立たせない」のに「なんとなく役に立ってるように感じさせる」業は凄い。 pic.twitter.com/b4mNbnQZF2

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「それぞれのその後」めいた個々のシーンのあと、彼らはアセイラムによるアルドノア起動式典に一同集まり再会する…する？　ああマズゥールカだけ来てねぇ！　あたかも「一連のシーン」みたく並べとておいて、じつは「あいつだけ」まったく関係がない！ pic.twitter.com/P9mXJtAQNu

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コレ。対アセイラム(見つけ出し救出し謁見させたのはクランカイン、伊奈帆の想いを伝えたのはアナリティカルエンジン)にも対スレインにも…「言葉で託された使命」は何も果たせず、しかし主人公・伊奈帆に対しての「最大の貢献」を果たしてるのね。 pic.twitter.com/UiXcDh8hD8

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「同志」である「マズゥールカが付き添っているから」アセイラムが見たこともないどっかの馬の骨みたいな奴(クランカイン)を引っ張り出して来ても「信用」できる。…ここ、伊奈歩視点で「婚姻の宣言部分でアセイラムの”緊張”がみられる」「でも”安心”できる」ために絶対に必要なロジックなのよ。

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ちなみに「月面から地球上空までカタフラクト単体で移動する」のは、タルシスの方であれば間違いなく可能です。謎技術による謎推進謎航法の機体のキャパシティはとても広い。 pic.twitter.com/SNjV6hGpPG

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「前工程の成果物をもとに、いかに肉をつけるか」の才はまさにアルドノア・ゼロ１～３話の制作ウラ話で語られていることで、一期決戦、さらに最終決戦にまで反復される「付箋」のくだりや、主人公伊奈帆の狂気一歩手前の独特の為人を見事にあらわした「卵」のくだりは脚本段階には存在しなかったもの。

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そのなかでもとくに「卵」を用いた連劇は、おとなしい少年に「いっけんみえる」伊奈帆、無感情に「いっけんみえる」伊奈帆の内にこっそり隠し持ってるドロッドロの「愛憎の激しさ」を絶妙に開示してみせた秀逸なもの。無表情で無口で積極的に行動しないから無感情キャラなのだ、なんてこたあ大間違いで

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「んー…出汁巻卵かなぁ…」 最小限の台詞さりげない所作そして「画」をもって、伊奈帆が内に抱える人一倍の「ヤバさ」を表現したのは見事のひと言。ユキの何気ないひと言に応えるために火星の姫をまるきり無視して卵特売を検索し、避難勧告が出てもひとり出汁巻卵をつくって待っている…という。

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「”ガワ”は無口で無表情で消極的」かつ「”内側”は誰よりもドロドロ」の為人が一期通しての伊奈帆のすがただったのだけど、二期からこの「隠してた内側」がドンドン外に溢れだしていく、というのがうまい構成。トリガーはもちろんアセイラムで、そして義眼として埋め込んだアナリティカルエンジン。