【病理医ヤンデルの仕事】

病理専門医のヤンデル先生が、自身の仕事内容について、ツイートされています。 医学生にとっては、病理の仕事を具体的にイメージする手助けになると同時に、一般の人にも病理の仕事を知ることができる内容になっています。
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病理医ヤンデル @Dr_yandel

さてと 今日は切り出しの担当ではなかったので(下見はしたけど)この時間すこし空きました。他院の病理医が標本コンサルトにくるのが15時、カンファは16時、研究会は18時半からなので今日はひさしぶりに「市中病院の病理医(というかぼく)がやってる仕事」を書いておきます。

2015-07-01 13:51:07
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事1: 手術検体の病理診断 手術でとってきたもの(胃とか肝臓とか胆嚢とか)は全例病理にやってきます。そこにはなんらかの病気があります。まず肉眼で「見ます」。病変の性状を確認(=マクロ診断)したあとに「切り出し」を行い、プレパラートにするべき箇所を選んで切って取り出します。

2015-07-01 13:53:02
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事2: 手術検体の病理診断(続き) プレパラートになるまでに数日。できてきたガラス標本はHE染色という基本的な染色で「きれいにそめられて」います。この染色だけで診断が終わることも多いですが、さらに特殊染色・免疫染色といった追加の染色をオーダーして診断を深めていきます。

2015-07-01 13:54:10
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事3: 手術検体の仕事(続き・2) 仕事を1,2,3とわけているのは、これらの項目が「数日にわたって行われる」からです。病理医のアタマの中には「今日はあの症例の切り出し、あの症例のHE診断、あの症例の追加染色」というように、複数の行程にわたる診断作業が複数症例積み重なってます

2015-07-01 13:55:39
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事4: 生検診断 手術検体の診断とは別に、病理医は「生検」と呼ばれる検体の診断を行います。生検とは「つまんできた、臓器や病気の一部」。胃カメラでつまんだ、小指の爪の1/8くらいの大きさの検体とか、針で刺した肝臓の一部(肝全体の1/60000に相当)とか……。

2015-07-01 13:56:43
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事5: 生検診断(続き) 生検診断は病変の一部分しかみられない分、「手術検体よりも難しい」ことが多いです。HE染色だけで診断できるケースもありますが、追加染色や深切り切片作成(詳しくはいいませんが大切)などで慎重に診断を進めます。

2015-07-01 13:58:11
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事6: 生検診断(続き) 生検診断の特徴として、「手術検体よりも結果が早く求められる」ことがあります。標本ができあがったらその日のうちに「何らかの対応」を求められると思って診断します。実際には1日くらい猶予がありますが、毎日あがってくるものに対してあまりのんびりはしていません。

2015-07-01 13:59:02
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事7: プレゼン作成 そして病理診断医の一部が熱心に行う業務として、「他の医療者が学会に用いるための顕微鏡写真をとったり、病理の解説を行う」ことがあげられます。病理は専門性が高く、精度が高い診断ですので、学会や研究会などでは「解答」に近いデータとして珍重されます。

2015-07-01 14:00:04
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事8: プレゼン作成 病理が一緒に仕事をする科は非常に多いですが、それぞれの科・部門が断続的に学会や研究会に出席しますので、ほとんど一年中誰かからの写真撮影・病理解説依頼がきます。忙しい病理医ですと写真2,3枚とって渡しておしまい、ということもあります(無理もありません)。

2015-07-01 14:01:03
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事9: プレゼン作成 わたくしの場合は「臨床・病理対比」を熱心にやりたい、というかそれを専門としている(つもり)ですので、学会や研究会に使うと言われたらPowerpointファイルを作成して解説を細かく書き込みます。

2015-07-01 14:01:59
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事10: 自分のプレゼン作成 病理専門医はわりと「学術担当部門」ですので、診断業務のほかに学会や研究会に自分で参加した方が「望ましい」と思います。ただ、「自分の学会」については「自分のため」なので、勤務時間内にはあまり準備しないですね……。

2015-07-01 14:03:38
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事11: 検査室とのかかわり 病理医にもよりますがわたしは臨床検査管理医という資格ももっており、検査室全体の運営や精度管理についてもちょっとだけ首をつっこんでいます。病院によってはこの業務がかなり大きくなる場合があります。

2015-07-01 14:04:19
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事12: 大学との関わり 大学の病理学講座やその他の基礎講座と連携して、臨床の検体を用いた「基礎研究」を行う場合、病理医がその窓口となる場合があります。わたしは北海道を中心にいくつかの大学と連携して当院の基礎研究を手伝ってもらう「橋渡し」を行っております。

2015-07-01 14:05:13
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事13: その他 ・剖検(病理解剖)はだいぶ減りました。病院によってはまだまだいっぱいありますけどね。 ・キャンサーボードなどの会議は増えました。病理はいまや臨床医でもあります。ほかの臨床医といっしょにカンファに出る妖怪です。 ・看護学校や技師学校などの講師もやります。

2015-07-01 14:06:09
病理医ヤンデル @Dr_yandel

だいたいこれくらいの仕事を、大半「デスク」と「カンファレンスルーム」で行い、一部の要点は「切り出し室」で行います。患者さんとお話しする「病理外来」はわたしの病院ではやっておりません。生検と手術検体だけですと9時5時でわりといけます。その他の業務があると9時5時ではまず無理です。

2015-07-01 14:07:12
病理医ヤンデル @Dr_yandel

仕事対象は「患者さんの検体(not 患者さん本人)」と、「医療者」ですので、医療者が出勤している日中に病院にいることは必要ですが、でもやっぱりフレックスです。わたくしは朝6時~6時半に出勤することが多く、夕方は17時くらいで研究会に移動したり22時まで働いたりします。当直なし。

2015-07-01 14:08:45
病理医ヤンデル @Dr_yandel

以上の業務を行うのは「病理専門医」であり、「臨床医と会話ができるようになってから」です。他科と異なり、後期研修医や後期あがりくらいの段階で「管理業務」や「他科との強い連携」を行うのは、病理の場合はおそらく「無理」です。若いうちは診断以外の仕事が少ないのです。すごく勉強ができます。

2015-07-01 14:10:19
病理医ヤンデル @Dr_yandel

若いうち、と書きましたが、「家庭とのバランスを考えなければいけない」ような時にも「自分のペースで勉強できる」病理診断医というのははたらきやすいと思います。ただ、この時期に勉強しておかないと、多くの科と連携して診断や学術を行う病理専門医として独り立ちするのが大変だと思います。

2015-07-01 14:11:24
病理医ヤンデル @Dr_yandel

ぼくは今37歳ですので、病理専門医としては「まだまだぺーぺー」です。がんばって勉強します。おしまい。

2015-07-01 14:11:40
病理医ヤンデル @Dr_yandel

あ、術中診断忘れてた。まあ毎日あるってことで……。

2015-07-01 14:11:59
病理医ヤンデル @Dr_yandel

/) /) ( 'ㅅ') ツイートするヒマは  ないよ

2015-07-01 14:15:47
病理医ヤンデル @Dr_yandel

おまけ。病理診断にはいろいろな「段階」があり、染色をたすとか急いで仕上げるとかバラバラですので、このように棚を用意して、標本を仕分けしておきます。ただ、「放置」はしません。患者さんが待ってますからね…… pic.twitter.com/ZLCOJqOST9

2015-07-01 14:18:43
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病理医ヤンデル @Dr_yandel

剖検の報告書についてはけっこうお時間いただいてることが多いです……すみません、なるべくがんばって仕上げますね……。

2015-07-01 14:19:32
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「じゃじゃ馬グルーミン☆UP」というゆうきまさみ先生のマンガがあるのですが、あの中に出てくる主人公のともだち「蓼沼くん」(秀才で競馬好き)が、「一生勉強してるだけで食っていける仕事ないかなあ」みたいなことを言うシーンがあるのですが、語弊はありますけど病理診断医が一番近いと思います

2015-07-01 14:26:26