映画「ノルウェイの森」の感想。
そして映画「ノルウェイの森」も観てきました! 面白かったですね。村上春樹ファン、観なきゃ損ですよ! 村上隆さんが宣伝RT繰り返しているのにウンザリしちゃってる人、だからといって観ないのは、やはり損ですよ! むしろそれにノッてみましょう!
2010-12-27 22:19:56まず、何がすごかったか? おそらく映像美。色の鮮やかさはおそらく意図的に抑え気味なのでしょうけれど、色の組み合わせの選定がすごく丹念だと感じました。そして場所の選定、バックの音楽の選定、素晴らしかった。
2010-12-27 22:27:20ワタナベ君が直子のあとをついて歩いていくシーンなどにおける、枝や葉の流れ方、綺麗でした。雪の中での、直子が被る帽子、ワタナベ君のしているマフラー、好きです。海のシーン、どこで撮ったのかよく探してきたなぁ、と感心しました。
2010-12-27 22:34:45二時間の映画ですから、カットされたセリフやシーンは多いです。原作を読んでないと理解できない部分も多いし、原作ファンは原作ファンで「なぜ俺のお気に入りシーンが入ってないのだ!」となるでしょうけど。
2010-12-27 22:37:26突撃隊ジョーク、緑のお父さん(きゅうりポリポリ)、レイコさんの過去(ボンッ!)。それらが無いのは、確かに寂しい。しかしながら、前半30分くらいでその辺りの監督の意図したところはわかってくると思います。「この映画では」なにが描かれているのか。
2010-12-27 22:44:03カットされて残念なシーンもあるでしょうが、映画を観て好きになるシーンも多くできるはずです。脚本をいじらずに役者無言で語られる、おそらく監督の想像力から出てきたシーンは、カットされた部分を補いつつ、また別の「ノル森」を完成させていました。
2010-12-27 22:50:09それから距離について。60年代の設定を再現する、というのも、なんというか、ちゃんと凝っていたのですが、それらは60年代の葬送のためにあるのではなく、2010年代を生きる我々にとって「離れた」場所なのだな、という確認のためであるかのようにも思いました。
2010-12-27 22:59:41ここらへん、少し言うのが難しいのですが。原作からカットされたものの多さゆえに、我々は「原作の再現」からある程度距離を開かなくてはならない。しかし原作の記憶がなければストーリーを補完できない。絶妙な距離感が要求されます。
2010-12-27 23:04:19そして、その距離感のギミックとして「60年代」は最適であるように思います。2010年を生きる我々にとって、近すぎず遠すぎず。だからこそ年代の再現だけは、凝る必要があったはず。そしてそれは成功した、少なくとも私にとっては。
2010-12-27 23:07:37それから、もう一度書くようですが、色彩の出し方、場所の選定とカメラワークは素晴らしかった。この映画の中でお気に入りのシーンをいくつか挙げます。おそらく後半に集中しますが。
2010-12-27 23:17:03まず、直子が死の直前、幻聴に誘い出されたのか、ひとり雪の中佇んでいるところ(そしてレイコさんが救出に来るところ)。雪の白さ。あの、木々の倒れ方、ひしぎ方、入り組み方! 症状の進んでしまった直子がいったい「今どこにいるの」かを暗示させます。
2010-12-27 23:22:54それから直子の死のあと、海のシーン。ハートを抉るような音楽と荒れる海。実際に抉られてしまったかのような岩の穴、そこに溜まっている静かな海水、そしてその脇のワタナベ君。彼の悲しみがどれほどか、松山ケンイチが号泣してみせるより、ずっと伝わってくるものがあります。
2010-12-27 23:29:54そして、森の中、ワタナベくんが木の上で立っていて、その下には川が流れ、直子とレイコさんがいる。そんな回想としての美しいシーン。あまりにも綺麗で「記憶とは常に美しいものなのだ」という切なさがあります。
2010-12-27 23:34:40……などなど挙げましたが、他にも良いシーンはたくさんあります。新しいセリフをなるべく追加することなく、あくまで映像で表現すること、補完すること。その点では成功しているのではないかと思います。
2010-12-27 23:38:10あっ。あと「僕の時間を少しあげて、その中で君を眠らせてあげたいくらいだよ」のセリフのあとにちょっと出てくる、木漏れ日の中でワタナベ君が気怠げに本を読み、傍らで緑がすやすやと寝ているシーン! あれ好き。笑った。
2010-12-27 23:45:27引き裂かれた、というか、引き裂かれつつある人たち。ワタナベ君はやはり、直子と緑、森の内側と外側を行ったり来たり。そしてその直子も緑も、何かに引き裂かれつつある。三者三様に。
2010-12-28 00:05:52なにものにも引き裂かれず、なにも重荷と思わないような永沢さんとの対比もあって、やはり彼らの引き裂かれる痛みは、悲愴なものさえある。ちょっと誇張かもしれないけど、そう言わせてもらう。
2010-12-28 00:13:37最終的にはその「引き裂かれ」の状態から、緑、直子、ワタナベ、三人とも一応は脱出する。脱出はするが、そのあと辿り着いた先の場所、その荒涼さ。
2010-12-28 00:27:42直子の死があって、結局はワタナベ君は「森」から帰ってきたわけですが、全然ハッピーエンドではない。脱出の決断をしたのは、最初は緑、次に直子。それがあって、最後にワタナベ君。まるで「無理に押し出され」るかのように。
2010-12-28 00:33:43ワタナベ君は最初に脱出できたわけではない。決断は「遅れ」てしまっている。であるがゆえに、彼はもう、「森」の中と外、境界線だけを見ていればよい、という世界観の中では生きられない。
2010-12-28 00:36:31ワタナベ君がこれから行く場所は、そこが緑鮮やかな草原であっても、その裏側には白の雪原がへばりついている、そういう土地。「こっちとあっち」ではなく、「ここと、もうひとつのここ」。
2010-12-28 00:39:44いつ地面が裏返ってもおかしくない。そういう場所にワタナベ君は流れ着いた。強引な押し出され方で、あるいは強引な押し出され方ゆえに。その荒涼さたるや。なるほど「僕は今どこにいるのだ?」と言うしかない。
2010-12-28 00:46:22