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Flying Zebra @f_zebra
未だに福島第一原子力発電所の再臨界を心配している人は、それが物理的にあり得ないことをいい加減理解した方がいい。損傷した原子炉の廃炉が困難であることは、別に嘘やデタラメで脅さなくても主張できるだろう。まあ、本気で心配している人はちゃんと勉強するので分かっているとは思うが。
Flying Zebra @f_zebra
軽水炉の炉心というのは燃料棒を最適な間隔で配置し、間を減速材である軽水で満たして反応度を最大にした状態で臨界を維持するよう設計されている。つまり、条件が何か欠けると反応度は必ず小さくなり、臨界を維持できなくなる。
Flying Zebra @f_zebra
なお、臨界というのは核分裂で放出された中性子が別の原子に捕捉されて新たな核分裂を起こし、その連鎖が加速も減速もせず続いている状態だ。ある瞬間に分裂した原子の数より、それで引き起こされた次の世代の分裂数が少ない状態を未臨界、多い状態を超臨界という。
Flying Zebra @f_zebra
細かく見ればもちろん多少の増減はあるのだけど、少し分裂数が増えると水の温度が上がり、体積が増えるため密度が下がって減速される中性子の数が減るため次の世代の分裂数は少なくなる。そうやってバランスすることで臨界状態が維持できるのだ。化学反応で言う平衡状態と少し似ている。
Flying Zebra @f_zebra
減速というのは読んで字のごとくだが、核分裂で放出される中性子は高速中性子で、そのままでは別の原子に当たっても弾かれるだけで捕捉されない。ある程度速度を落として熱中性子にならないと次の核分裂を起こせない。つまり、連鎖反応にならない。
Flying Zebra @f_zebra
原子炉が事故を起こして減速材であると同時に冷却材でもある水が失われると、その時点で臨界条件を満たさなくなるため連鎖反応は止まる。核分裂は止まっても崩壊熱は出続けるのでその状態でも炉心の温度は上がり続け、やがて被覆管が損傷する。
Flying Zebra @f_zebra
BWRの場合、使用材料の融点の関係で燃料の被覆管よりも僅かに先に制御棒の方が溶融する。制御棒が溶け落ちて、燃料被覆管はまだ溶けていないという時間は僅かしかないのだが、まさにちょうどそのタイミングで注水が行われたらどうなるか。
Flying Zebra @f_zebra
燃料被覆管はまだ健全なので、燃料棒は正しい間隔で配置されている。制御棒がなくなった状態で間に減速材となる水が満たされると、再び臨界条件を満たしてしまう。これが再臨界のメカニズムだ。ただし、一気に温度が上がってすぐに水がなくなるため、長くは続かない。
Flying Zebra @f_zebra
ひとたび燃料被覆管が損傷して燃料の形状が崩れてしまうと、後は何をどうやっても臨界条件は満たさなくなる。核分裂というのはメカニズムがはっきり分かっている物理現象なので、条件を満たさない以上は何か想像を絶するような力で起きないはずの現象が起きるようなことはない。
Flying Zebra @f_zebra
事故後に冷却水にホウ酸(中性子を吸収して核分裂連鎖反応を抑える働きがある)を注入したりして再臨界を警戒していたのは、溶け落ちずに原型を保ったままの燃料が残っている可能性を考慮してのことだ。溶け落ちた燃料デブリが臨界する可能性はなく、それを心配しているのではない。
Flying Zebra @f_zebra
以上、ごく簡単に説明したが、順を追って丁寧に考えれば別に高度な物理学の知識がなくても、溶け落ちた燃料デブリが再臨界などできないことは理解できるのではないだろうか。どうせ分からないからと想像力を逞しくする前に、合理的に考えてみるというのは大切だと思う。
Flying Zebra @f_zebra
とは言え、一般の人が考える材料を入手するのは簡単ではない。それなりに権威のありそうな大学のセンセイがマスメディアで「再臨界の危険があります」などと言っている時に、それを疑うのは難しいだろう。メディアの責任は大きいのだが、残念ながら当人たちにはあまり自覚がないようだ。
Flying Zebra @f_zebra
再臨界に関連して、事故で損傷した1Fプラントの燃料デブリの位置についても多くの誤解があるようなので付け加えておこう。原子力プラントには「容器」と名の付くものが色々あり、似た名前のものもあって馴染みのない人には区別が付きにくい。
Flying Zebra @f_zebra
一番内側にあって、炉心が直接入っているのが原子炉容器、圧力容器などと呼ばれるものだ。その外側に、原子炉格納容器がある。以下ではそれぞれ原子炉容器、格納容器と呼ぶことにする。損傷して溶け落ちた燃料は、まずは原子炉容器の底に溜まる。
Flying Zebra @f_zebra
崩壊熱で発熱を続けている溶融燃料はやがて原子炉容器の底を溶かし、原子炉容器から外に出る。正式な用語ではないが、メルトスルーというのはこの状態を指している。外、とは言ってもいきなり環境に出るわけではなく、そこはまだ格納容器の中である。ここがよく誤解されている。
Flying Zebra @f_zebra
BWRの格納容器はドライウェル(D/W)とサプレッションチャンバ-(S/C)に分かれていて、蒸気を凝縮するための水を溜めたS/CはD/Wの真下を避けてドーナツ状に配置されている。もし原子炉容器から燃料が溶け出しても、溜めた水の上に落ちることのないようになっている。
Flying Zebra @f_zebra
高温の溶融燃料が大量の水の中に落ちると急激に発生する水蒸気で水蒸気爆発を起こす危険がある。その危険を避けているのだ。原子炉容器から溶け出した溶融燃料は、格納容器の底、具体的にはD/Wの底に落ちて溜まることになる。
Flying Zebra @f_zebra
D/Wは鋼製の耐圧容器だが、底の部分はコンクリートの床になっている。コンクリートは熱に強い材料だが、1500℃以上の高温に曝されると熱分解を起こして溶ける。炉心とコンクリートの反応なのでコア・コンクリート反応などと言う。
Flying Zebra @f_zebra
1号機では一酸化炭素の発生が確認されており、コンクリートの熱分解が発生した可能性が高い。とは言え、溶融燃料の崩壊熱は冷却による除熱がなくても短半減期核種の崩壊で急速に低下する。炉内に存在する燃料の量も有限なので、どこまでも溶け進むわけではない。
Flying Zebra @f_zebra
燃料が100%原子炉容器から溶け落ちたという条件で解析した結果、あらゆる条件を最大限に見積もった浸食深さの最大値は最も大きな1号機で65cmだ。いずれは直接確認できるのだろうが、実際にはこれよりかなり小さな値だろう。
Flying Zebra @f_zebra
D/Wの鋼板の底は丸くなっていて、中央部の一番床が厚いところで2.6mほどの厚みがある。溶融燃料は中央部のサンプ(排水升みたいなもの)に落ちていると考えられ、その深さが1.2mなので、サンプの底から鋼板までのコンクリートの厚みは1.4m程度ということになる。
Flying Zebra @f_zebra
解析結果が多少ぶれたとしても、溶融燃料が格納容器の底まで達した可能性はまずない。そもそも床のコンクリート厚さは燃料溶融を想定して格納容器外に出さないよう設計されているし、1F1号機については発生したCOガスの量からもそこまで反応が進んでいない事が分かっている。
Flying Zebra @f_zebra
燃料デブリが具体的にサンプ底から5cmのところにあるのか10cmのところにあるのか、どんな形をしているのか「分かっていない」というのを拡大解釈して想像を逞しくする自称・専門家も少なくないが、デブリが格納容器の中に留まっていることは「分かって」いるのだ。
Flying Zebra @f_zebra
原子核崩壊による発熱にしろコンクリートの熱分解という化学反応にしろメカニズムははっきりと分かっていて、「量」の制約を超えてどこまでも進んだりはしない。「量の概念」というのは苦手な人はとことん苦手なようだが、世の中の現象を正しく理解するには絶対に必要な概念だ。
Flying Zebra @f_zebra
燃料デブリが地盤にまで達しているかのような誤解は、多分に名前が紛らわしい原子炉容器と格納容器の混同によるところが大きいのだと思う。原子炉の構造に馴染みのない一般の人が混同するのは仕方ないが、メディアはもう少し注意して報道してもらいたいものだ。

コメント

大森真 @yard_1957 2015年7月7日
ホントあり得ないと思います
kikumaco(12/14伊丹16難波) @kikumaco 2015年7月7日
再臨界は「ない」で問題ない。「可能性はゼロではない」は正しいけど適切ではない
鴨澤眞夫 @kamosawa 2015年7月7日
"「量の概念」というのは苦手な人はとことん苦手…理解するには絶対に必要"
Flying Zebra @f_zebra 2015年7月7日
「あわせて読みたい」のリンクにある、2011年11月に1Fの2号機格納容器でXe135が検出されて再臨界だ何だとちょっとした騒ぎになっていた時のまとめを見て、そんなこともあったと懐かしく思い出すなど。当時嬉しそうに騒いでいた人たちは、その後ちゃんとフォローして認識のアップデートをしているのだろうか。 http://togetter.com/li/208619
Flying Zebra @f_zebra 2015年7月7日
忘れている人も多いだろうから答えを書いておくと、解析の結果Cm(キュリウム)242などの自発核分裂で生成する量と検出された量がほぼ同オーダーであることが分かり、逆に部分的にでも臨界が起きていたとすれば説明がつかないことから、自発核分裂ということで結論が出ている。
Flying Zebra @f_zebra 2015年7月7日
「臨界」の定義を色々こねくり回した人もいたけど、未臨界、臨界、超臨界というのは核分裂連鎖反応の増減を表す言葉であり、そもそも連鎖反応が起きていない状態はどう頑張っても臨界とは呼べない。なお、連鎖反応が起きていないことはホウ酸注入後もXe135濃度が変わらなかったことからも確認できる。
Flying Zebra @f_zebra 2015年7月7日
なお、臨界という言葉は物質の気相、液相の相転移が起きる範囲の限界点を示す「臨界点」と同じで何らかの境界状態を表す。英語ではcritical point、criticalityだ。核分裂連鎖反応では1原子の核分裂で放出された中性子によって新たに起きる核分裂が1より少なければ未臨界、1より多ければ超臨界、ちょうど1の状態をその境界という意味で臨界と呼ぶ。
Flying Zebra @f_zebra 2015年7月7日
だから、連鎖反応が何段階か起きたというだけの状態(今回はそれすらもないが)を無理やり「部分的な臨界」などと言うのは日本語としてはおかしい。「再臨界」という言葉に物理現象とは別の、政治的な意味を持たせたいがために日本語をねじ曲げるのは感心しない。
ええな@豚バラ🐽ばらまくニャ @WATERMAN1996 2015年7月7日
溶融炉心が基礎コンクリートを破り環境中に出てしまったような事を言う人達は、それがありえないと分かっていながら無知な人を脅すために言っているか、あるいは純粋に何も理解していないかだ。
mnnkanjinnno @mnnkanjinnno 2015年7月7日
「可能性はゼロではない」この宝くじ、100万円で買い取ってくれ。1億円が当たる可能性はゼロではないだろ。
あさくら めひかりこしひかり @arthurclaris 2015年7月7日
実際、東電は「福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画」(公表)に定めている通りに未臨界確認のために1時間毎に格納容器内ゼノン135濃度を確認していて、その値(公表)は非常に低いものね。 原子炉建屋のチャコールフィルタにもヨウ素が全く出てこない(公表)し。
nekosencho @Neko_Sencho 2015年7月8日
ま、宝くじのたとえは確率がわかってるから適切ではないよな。額面の半分前後が期待値じゃなかったっけ宝くじ
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