仲山ひふみさんの論考「音楽はコンテンツではなくメディアである」

「YouTubeの広告料でアーティストが暮らすには1億9000万回の再生数が要るらしい」との記事を受けた仲山ひふみさんの論考。 「人工知能による音楽の生産が一般化していけば、作曲や演奏を全て人間が行うことは基本的に趣味や遊びの一種と考えられるようになっていくだろう(…)しかしケージが言う通り『音楽の未来を恐れる必要はない。』」
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仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

この問題、究極的には「音楽はコンテンツではなくメディアである」ということに帰着するものだと思われる。"連載第53回 YouTubeの広告料でアーティストが暮らすには1億9000万回の再生数が要るらしい | Musicman-NET musicman-net.com/sp/SPPJ01/67.h…"

2015-07-09 18:05:47
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

もちろんプラットフォーム側と権利団体の交渉によって事態の改善を見る可能性がないわけではないとも思うが、それが本質的な解決をもたらすとも思えない。こういう環境の変化に本気で対応するためには(たとえバカにされても)「音楽とは何か」という存在論的な問いにまで踏み込む必要がある。

2015-07-09 18:12:45
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

私が以前から考えているのは「音(楽)それ自体」というものは存在しない、あるいは少なくとも売買可能なものとしてはそれは存在していないという方法的仮説から出発して、音楽の領域の文化的・社会的な持続可能性について再検討していくという道。具体的には「付随音楽」的なものの復権。

2015-07-09 18:18:36
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

現状のビジネスモデルでは、核となる「音(楽)それ自体」というコンテンツの「付随物(付帯性)」として広告があったりPVがあったりする。この関係を逆転させるべき。たぶんそれは(誤解を呼ぶかもしれないが)存在論的にも正しい。まあそう考えるとアイドル音楽を否定するのが難しくなるけれども。

2015-07-09 18:24:03
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

そもそも「音(楽)それ自体」が「モノobject」として、同一性を有する芸術作品として社会的に取り扱われるようになり、さらに商品としての交換価値を帯びるようになり始めたのは、ようやく近代に入ってから(特に18世紀古典派以降)のことに過ぎない。その枠組みはいつ壊れてもおかしくない。

2015-07-09 18:30:53
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

とまあざっくり語っていますが、この辺りに関して歴史的に正確かつ詳細な議論を期待する方は西洋音楽史の概説書に加えて、ヴァルター・ザルメン『コンサートの文化史』とかジャック・アタリ『ノイズ』とかハワード・グッドールのいくつかの気の利いた本なんかを読むことをお勧めします。

2015-07-09 18:38:29
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

(まあアタリとグッドールは音楽史の専門家ではないのだが。専門家ほど「音楽それ自体」の存在とさらにはその自律的発展とかを自明視しがち、あるいはそうでなければ趣味判断を全てシャットアウトして社会学的・人類学的な記述に徹しがちなのが、この分野での参考図書の挙げづらさの理由。)

2015-07-09 18:43:27
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

芸術家としてのミュージシャンが収入を得るためのモデルが軒並み崩壊しつつあるのは確かだとしても、たぶん音楽に関わる別の業種(関連ソフトウェア開発など)では興隆している分野もあるはずで、そういうところが新しい音楽の文化的・社会的形態の創発を担っていくことになるのではないか。

2015-07-09 18:50:50
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

音楽に関しては人間と人工知能の緊張を孕んだ共同性collaborationが新しい芸術性の基準になる日は結構近いんじゃないかと思う。古くはライヴ・エレクトロニクス(新しいものではラップトップでの即興)、またデジタルな作曲環境での自動/手動の処理の併用・拮抗にその萌芽はあったかも。

2015-07-09 19:01:46
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

人工知能なんて言うとかなり突飛に感じられるかもしれないが、進化論的アルゴリズムを自動作曲に応用したDarwin Tunesの音楽を数年前に聴いたとき直観的に「ああこれでついに自動作曲のアポリアは解決される」と感じ取った。最近ではディープ・ラーニングという包括的な呼び名があるが。

2015-07-09 19:07:57
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

人工知能による音楽の生産が一般化していけば、作曲や演奏を全て人間が行うことは基本的に趣味や遊びの一種と考えられるようになっていくだろう。前にも言ったように音楽は既にスポーツ(気晴らし)と本質的には区別し難くなりつつある。しかしケージが言う通り「音楽の未来を恐れる必要はない。」

2015-07-09 19:14:51
仲山ひふみ Hifumi NAKAYAMA @sensualempire

だいたいあのイアニス・クセナキスが生涯を賭けて取り組んだものだって作曲ソフトウェアの開発、つまるところは自動作曲の問題だったのだ。彼の場合、建築におけるジェネレイテッド・デザインのようなものを目指していたのかもしれないが。

2015-07-09 19:26:40