気まぐれ俳句鑑賞

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気まぐれ俳句鑑賞はじめました。
作句もだけどまずインプットが足りとらん、読まなきゃ、覚えなきゃという気持ちが高まっていて、勝手にやればいいんだけど公開した方が続く気がするので、鑑賞という形でツイッターに流すことにしました。
周期やルールは決めず不定期・気まぐれに載せます。

Sho SAKAI @shosakai

古都に聞く砧や秋思こまやかに(鈴鹿野風呂) 正直、砧に馴染みがなさすぎて実感がわかない部分が大きいけど、「秋思こまやかに」がすごすぎて惹き付けられてしまう。京都や奈良や鎌倉にも生活の音はする。秋の夕方の、わずかにでも次第にでもない「こまやか」なものさびしさ。 #気ま鑑

2015-09-26 15:50:41
Sho SAKAI @shosakai

秋の朝日指頭に炎えてあたたかき(飛鳥田孋無公) 見得を切るような句。「の」での上6字余り、耳慣れないが意味はわかる指頭という語、下5のかな表記の流れでずいぶん立派に見える。病床から?E.T.ないしクラーク博士的な大袈裟なフォルムでその位置をセットする作中主体を想像する。 #気ま鑑

2015-09-25 10:09:22
Sho SAKAI @shosakai

秋風や書かねば言葉消えやすし(野見山朱鳥) 4音の季語を選んで置いたのでなく、秋風から以下を発想したように思える「動かなさ」の強度。考えは一度口に出すと萎んだりする。言葉が秋の空にとけてゆくのをぼけーと見ていたりもするし、時々はそうならぬよう「刻む」。暢気と感傷と意志。 #気ま鑑

2015-09-20 15:52:37
Sho SAKAI @shosakai

無分別無所得にして爽やかに(寒川鼠骨) 少年を見ている(手を抜け〜気を抜〜くな〜♪)ととるか、自分のこと(キャプテ〜ンクック〜のように俺は今〜♪)ととるか、どっちが面白いだろう。いずれにせよカラッとした秋の心地。この連用形止めは思わせぶりでなく良い余韻に思える。 #気ま鑑

2015-09-19 11:54:22
Sho SAKAI @shosakai

人類を地球はゆるし鰯雲(南十二国) 猛烈な「それでもなお」を言外に背負った重たい人間肯定(自分のライフの肯定でもある)に、鰯雲のなんと寂しく、しかしあたたかく爽やかなことでしょう。こんなにスケールが大きいのに、日々の瑣末なことでの反省や悔恨がむしろ思い起こされる不思議。 #気ま鑑

2015-09-16 10:28:30
Sho SAKAI @shosakai

亡き友肩に手をのするごと秋日ぬくし(中村草田男) こわいよー。ポカポカこわいよー。 #気ま鑑

2015-09-14 14:55:23
Sho SAKAI @shosakai

豆菊や昼の別れは楽しくて(八田木枯) たしかに秋の昼間のじゃーねーは爽やか。昼から(仕事でなく)人に会う用事があると気持ちが軽くなるし、まだ夕方にも夜にも楽しい予定か自由な時間がある心のゆとりからか、あまり寂しくない。豆菊のささやかな明るさ、軽やかさが内容とよく響く。 #気ま鑑

2015-09-11 13:20:49
Sho SAKAI @shosakai

三日降れば世を距つなり秋の雨(水原秋櫻子) 崖が崩れて流通が止まるとか電車が止まるみたいな物理的なことじゃなく、なんとなく家を出るのが億劫になって(実際は出るにせよ)心が「社会」と断絶されていくような気分になることと読んだ。今まさにそんな感じ。そろそろ晴れないかねー。 #気ま鑑

2015-09-10 14:11:25
Sho SAKAI @shosakai

唐黍をつかみてゆるる大鴉(飯田蛇笏) ダイナミック。黒と黄色と躍動感がばーんときて、ほんと絵を見ているみたい。鴉の爪の光沢まで見える。変な俳句ばかり好きだけど、こういうザ・写生の凄い句を見るとやっぱり惚れ惚れするし、すいませんでしたという気持ちになる。 #気ま鑑

2015-09-08 14:03:27
Sho SAKAI @shosakai

かりそめに衣たるモデルの夜食かな(日野草城) セクシーじゃなくて怖いやつ。深夜まで続く撮影は皆殺伐とする。スタイルを変える間ローブを羽織り、不機嫌そうに義務のようにサンドイッチを口に運ぶ白人女性。コーヒーすすめたら目を合わせずに断られそう。…あれ、やっぱりセクシーかも。 #気ま鑑

2015-09-07 10:02:31
Sho SAKAI @shosakai

さわやかにおのが濁りをぬけし鯉(皆吉爽雨) かっくいい。鯉ってバカだ(に見える)から、すーっとスマートな動きをした(ように見える)やつがいたら注視したくなるし、ついつい、あの鯉は爽やかに抜けたぞ、お前=自分はどうだ、的な、仮託的な読みをしたくなっちゃう。 #気ま鑑

2015-09-06 20:52:09
Sho SAKAI @shosakai

鶏頭のチカ<<と虹色に(京極杞陽) ※くの字点です。チカチカチカ。 鶏頭のいやな存在感や異様さはいろんな形の俳句で表現されているけど、くの字点ふたつ重ねは中でも格別にハマる気がする。その上虹色。突き放した言い方でちょっとクスッとしてワンダーもある。いいなあ、コレ。 #気ま鑑

2015-09-06 00:25:14
Sho SAKAI @shosakai

石榴割れAKBがいっせいに(宮崎斗士) AKBの俳句ってもういっぱいあるんだなー。小粒でばらばらしてて、しかし甘酸っぱい…とかいうとつまらなくなっちゃうけど、一見雑なようで、対象をしっかり捕まえた表現のように思えます。どこかAKBへの好意的な視点も感じます。 #気ま鑑

2015-09-04 09:43:27
Sho SAKAI @shosakai

大鹿とゆきぜいたくをしていたり(阿部完市) 大鹿と一緒だと豪儀にもなりそう。たぶん他に人間はいなくて鹿と二人連れ。鹿は正しく四足歩行で裸だけど、きっと喋る。高級飲食店やブランド品とかではない、もっとなんだかわからない「ぜいたく」。全部すごいが「ゆき」が特にすごい。 #気ま鑑

2015-09-03 21:53:22
Sho SAKAI @shosakai

仏教国蜻蛉胸より足出づる(大石雄鬼) うわー。蜻蛉の異形を改めて意識する(昆虫はなべてそうなんだけど、蜻蛉だからハッと)。手が多い仏教の神々をややモロすぎるくらい連想するけど、「国」のおかげで「つきすぎ」てなくて、国と人、思想、仏教国であることのあれこれに思いがいく。 #気ま鑑

2015-08-29 14:58:14
Sho SAKAI @shosakai

アイスキャンディー当たりが出ればもう晩夏(長嶋有) 既存フレーズの借用というかパロディなのに、とても「詩」。最後の晩夏でハッとして、切なさに急襲される。実際日課のようにアイスキャンディーを買い食いしていた経験がなくても、否応なくノスタルジックな気持ちにさせられてしまう。 #気ま鑑

2015-08-09 12:54:44
Sho SAKAI @shosakai

熱風や小声で売れる宝くじ(百合山羽公) 真夏にあの手品の箱のような宝くじ売場を見ると、中のおばさん死んじゃうんじゃないかと心配になる。客の方は夏はむしろテンションが上がっていて、気軽に買っていくのかも。売り子の一人称の句に思えて、水飲んでね、売れてよかったね、となった。 #気ま鑑

2015-08-07 13:03:12
Sho SAKAI @shosakai

百合折らむにはあまりに夜の迫りをり(橋本多佳子) ちょうど今のような強烈な西日の中、広野で、百合に手をかけられずにいる。故事や物の道理ではない、自分の中で(もしかしたら咄嗟に)生じた切実な禁忌と、ざわつく気持ち。暑いのに、きっと冷や汗がたれている。川上弘美小説のよう。 #気ま鑑

2015-08-05 17:30:25
Sho SAKAI @shosakai

夕焼の金をまつげにつけてゆく(富澤赤黄男) 映って見えるのでも、目に焼き付けるのでもない、埃塵か何かのようにまつげに付いてしまった夕焼色。赤系でなく金を、観察・発見でなく「ゆく」をとったことで、ファンタジー、しかも夕焼のそれを、安い感傷や過剰な浪漫にさせず成立させてる。 #気ま鑑

2015-08-04 17:45:08
Sho SAKAI @shosakai

山の蚊の縞あきらかや漱(芝不器男) (くちすすぐ、で合ってますよね?)たしかに山で見る蚊は、ただ大きいというだけでなくなんだか「蚊性」(?)が濃くて、縞も、脚の曲がり方や細かい動きも、はっきりと見てとれます。山の静けさ涼しさ、木が多くてやや暗い感じまで伝わってきます。 #気ま鑑

2015-08-01 17:30:18
Sho SAKAI @shosakai

深海に自らひかるものら混む(澤好摩) 意表を突く「混む」(普通は一匹ぽつんの方を言いたくなる)、「自らひかるものら」という言い方とひらがな漢字の混ざり具合、「ものら」で口がもつれる感じ。によって、17音だけで、美しさ、混沌、物悲しさ、可笑しさ、幻想のコンボが伝わる凄さ。 #気ま鑑

2015-07-30 13:39:29
Sho SAKAI @shosakai

浮浪児昼寝す「なんでもいいやい知らねえやい」(中村草田男) 886は俳句四拍子説を採用した場合のほぼ最大音数だけど、最後の2を埋めないことで俳句っぽい韻律が残るんだな。形式も景も重量級のインパクトなのに、気分はあくまで軽やか。他のカギカッコ台詞俳句がかすんで見えちゃう。 #気ま鑑

2015-07-28 14:24:20
Sho SAKAI @shosakai

朝よりの大暑の箸をそろへおく(長谷川素逝) 折り目正しい人だ。こんなふうにピリッと生きられたら、物の見え方や感じ方も違ってくるだろうなー。奇しくも昨日小澤實さんが、「くそあつい」という言葉は実感があるけども暑さへの敬意がない、といったことを書いてらした。ごもっとも。 #気ま鑑

2015-07-22 12:44:48
Sho SAKAI @shosakai

扇風機頭上に融資拒まれぬ(楡井秀孝) 先の冷房句に対し、こっちは、ぬるい風をかき回しているだけ感がすごい。街金って入ったことないけど、「ナニワ金融道」はたしかに暑そう(常に扇子あおいでる人のイメージ?)。子どもの頃の小さい郵便局の照明の暗さや匂いを思い出しながら読んだ。 #気ま鑑

2015-07-21 10:44:48